188、アテナ代表
●【No.188】●
ロートアンリルス連合国
一日目の早朝から昼前にかけて―――
ここはこの大国の中心都市にある某所の総合百宮殿の中で、国の最高権力者でもある連合国統括代表閣下 (別称:アテナ) と呼ばれる女性が、今日も朝早くから自分の執務室で仕事をしている。
連合国統括代表閣下は窓を背にした自分の席、椅子に座って、机の上に山のように積まれている資料・書類に目を通している。
一時期、何者かによって、拉致・誘拐された為、その分だけ仕事量が増えていて、今でも対応に追われている。
それだけに増えた分の仕事を急ピッチでこなしており、今は休むヒマがない。 もしかして、あまりの忙しさにヴァグドーたちを出迎えることも、もう忘れてしまったかもしれない。
「あ~あ、忙しいですわね。 あまりに忙しすぎて、このままだと過労死してしまいますよ。」
つい愚痴をこぼすアテナ。
「このくらいでは過労死しません。」
「アテナ、もう少しだけ頑張って下さい。 まもなく昼食のご用意も出来ますから、そこで休憩しましょう。」
「あともう少しですので、一緒に頑張りましょう!」
「はいはい、判りましたよ。」
アテナが秘書や側近たちに促されて、彼女も渋々仕事をこなしている。
するとここで秘書が別の資料・書類を持って、アテナの座る席まで歩いて近づく。
「アテナ、この資料にも目を通して下さい。」
「……? 何の資料ですか?」
「はい、今度開催されるエネルギー武闘台の参加者一覧表とトーナメント表でございます。」
「あっ、そうですか。 では机の上に置いておいて下さい。 あとで見ますので」
「はい、では宜しくお願いします。」
その秘書が手持ちの資料・書類をアテナの席の机の上に置いて立ち去っていった。
だがしかし、アテナの仕事量はハンパなく、とても見ている余裕もなく、結局はエネルギー武闘台に関する資料・書類などの確認は後回しになってしまった。
なのでヴァグドーたちがエネルギー武闘台の大会に出場することも、この時はまだ知られていない。
「はぁ~ 忙しいですわねぇ~」
そのあともアテナは仕事に追われる日々を送っている。
二日目の夕方頃―――
この日も相変わらず、アテナは自分の執務室の自分の席で、椅子に座り、机の上にある資料・書類に目を通している。
彼女の周囲には、彼女の秘書や側近たちが、アテナの多い仕事の手伝いをしている。
「はぁ~ 相変わらず仕事が多いですわねぇ~」
また愚痴をこぼすアテナ。
「また愚痴ですか? アテナ……口だけでなく、手も動かして下さいね。」
「アテナ、今日もあともう少しで終わりですから、一緒に頑張りましょう。」
「アテナ、晩御飯から就寝まで自由時間ですから、その時に愚痴を言って下さい。」
「はいはい、判りましたよ。」
そう言いつつも、素早く仕事をこなしていくアテナ。 アテナは大変有能で知能も高い。 さすが連合国統括代表閣下に選ばれただけのことがある。
ふと思うのだけど、この秘書や側近たちは、アテナに辛く厳しく当たる辛辣な場面が結構ある。
一体何でなんだろう?
そして、最後にエネルギー武闘台に関する資料・書類を手に取り、じっくり目を通していく。
その内容とは、開催日時・場所や試合ルールや優勝賞金・賞品などを記載したものや、その参加者の一覧表やトーナメント表を記載したものなどがある。
主催者でもあるアテナは、この大会の見学・観戦が義務づけられている。
「あら、エネルギー武闘台ですか? もうそんな季節なのですね?」
「はい、今回も『王護聖騎士』の何人かと『皇守親衛騎士隊』の何人かが、それぞれ出場する予定です。」
「はい、この時期は『王護聖騎士』にとっても『皇守親衛騎士隊』にとっても見せ場ですからね。」
「はい、アテナに自分の実力を見せつける絶好の機会になるわけですからね。」
「では、やっぱり今回も優勝者は『王護聖騎士』の人か、『皇守親衛騎士隊』の人か、のどちらかですかね?」
「まあ、他にも強い人がいれば別ですけど、実際はあまりいないでしょう。 この大会も半ば『王護聖騎士』と『皇守親衛騎士隊』の覇権争いみたいなものですからね。」
「はぁ~ そうですよね。 もういっそのこと、物凄く強い人が現れて、みんな倒してくれれば、また面白いのですけどね。」
「ははは、そうですよね。」
「ふふふ、ですよねぇ~」
アテナたちが談笑しながら、素早く仕事をしている。
この期に及んでまだ、アテナたちはこのエネルギー武闘台の大会にヴァグドーや勇者アドーレ、勇者見習いのモモネや悪魔神オリンデルスらが出場することを知らない? いや、もしかして気づいていないのか?
よく解らない。
※『王護聖騎士』
王家・王族を護る聖なる騎士のこと。
普段から単独行動が多く、また隊長・隊員などの区別もなく、みんなが独自・公平に動く。
階級はランクが「S・A・B・C・D」とあり、「D」が一番低く、「S」が一番高い。
戦闘では、純白の鎧兜を身につけ、剣や槍を使用した戦い方の他に、光の魔法も使用できる。
※『皇守親衛騎士隊』
皇帝を守護する親衛騎士の部隊のこと。
部隊で敵に攻撃することと、敵が皇帝に攻撃するのを部隊で防ぐこと。
階級は将軍・隊長・部隊長・隊員・雑兵とに区別してる。
戦闘では、白銀の鎧兜を身につけ、剣や盾を使用しての団体行動攻撃が主流とされている。
何気にアテナ、再び登場。
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