187、秘密の特訓:1
●【No.187】●
ヴァグドーとカグツチが秘密の特訓をしている。
カグツチが剣でヴァグドーに少しだけでもダメージを与えることが特訓である。
まずヴァグドーが認めるダメージをカグツチが与えれば特訓成功でクリアである。
その間に、ヴァグドーは回避のみで、攻撃も反撃も防御もせず、カグツチの背後に回って彼女の大きな胸を揉む。
そこでカグツチがヴァグドーに、30回胸を揉まれると特訓失敗のゲームオーバーである。
実はこの特訓、カグツチはまだ一度も成功していない。
今まで常にカグツチは、ヴァグドーに自分の大きな胸を揉まれ続けて、あっという間に、あっさりと30回揉まれてしまう。
かつては、ロンギルスやエクリバやニーグルン姫らも挑戦してみたけど、やっぱりヴァグドーに背後を取られてしまって、自分の大きな胸を揉まれてしまい、途中からとても気持ち良くなって、まるで集中できなくなる為に、既に秘密の特訓の挑戦と成功を断念している。
もう現在ではカグツチだけしか秘密の特訓を挑戦していない。
だがしかし、まだカグツチだけは秘密の特訓を諦めずに続けている。
何故、まだ続けているのか、よく解らないけど、とにかく続けているようだ。
今は既に29回胸を揉まれている。
「でやぁあぁあぁーーーぁっ!!」
「ほっ…ほっ」
ブンブンブン!
カグツチが剣を振り回し、なんとかヴァグドーに当てようとするけど、相変わらずヴァグドーが巧みに避けて、いっこうに当たる気配がない。
だがしかし、カグツチもただ闇雲に剣を振り回しているわけではなく、そのヴァグドーの隙を見ながら、あるチャンスとタイミングを見計らっていた。
「でぇぇーーーいっ!!」
「ほっ…ほっ」
ブンブンブン!
すると突然―――
フッ!
ヴァグドーがカグツチの目の前で、一瞬だけ姿が消えた瞬間―――
ここだぁーーっ!!
ビュウン!
すぐカグツチが自分の背後に、次にヴァグドーが現れるであろう場所を予測して、まっすぐに鋭く速く剣を突き立てる。
―――やったかっ!?
特訓の性質上、ヴァグドーは必ずカグツチの背後に回る。 その為、タイミングを見計らって自分の背後に剣で攻撃した。
し~~~ん
だがしかし、カグツチの背後にヴァグドーはいなかった。
「―――えっ!!?」
カグツチが慌てて、剣を突き立てた背後の方に振り返ってみると、やっぱり誰もいない?
次の瞬間―――
ムニュウ!
「ひゃああぁ!?」
突然ヴァグドーがカグツチの背後に現れて、後ろからカグツチの大きな胸を揉んでいる。
カグツチは驚き、頬を紅くしている。
やっぱり結局カグツチは、今回もヴァグドーの姿・動きを、最後まで捉えることは出来なかった。
これで今回もカグツチは、ヴァグドーに背後から大きな胸を30回揉まれているので、残念ながら秘密の特訓失敗である。
「ふむ、今回も特訓失敗じゃな」
「ふにゃ、そ…そうですか……ざ…残念ですけど……仕方ないです…ね……」
なんだか本当に残念そうにガッカリしているカグツチ。
「ふむ、もう飽きたので、今回もこの特訓は終了じゃな。 これからも精進せいカグツチよ」
「……は…はい、判りました……」
この特訓は一度失敗すると、最低でも半日は出来なくなり、この時間帯だと、次の特訓は翌日以降になる。
ちなみにこの特訓に成功すると、冒険者ランキングのエネルギーポイントが、さらに「330」加算される、かなり魅力的な特訓である。
一方で最初の街の中にある別の森では、勇者見習いのモモネが一人で特訓をしている。
眼前の木に向かって、一心不乱に剣を振り回しているモモネ。
「えいっ、えいっ、えいっ」
ブンブンブン!
ちなみになるべく刃を木に当てないようにしている。
彼女の祖母は昔、勇者マイカの仲間で戦士だった。 その名は「ラグレテス」と言う。
よく口癖で「私はね昔、勇者マイカたちと一緒に冒険して、あの悪魔神を封印したのよ」と言ってた。
これは祖母の武勇伝を聞いてるうちに、勇者マイカや勇者そのものに憧れを抱くようになったモモネ。
そこでモモネは両親の許可を得て、単身この大陸へ渡ってきた。 伝説の勇者マイカについての存在確認と、その調査と探索の為に。
そして、自身が一人前の勇者になる為に、モモネは再び旅立ち、現在はこの国に立ち寄ってる最中である。
「………」
そのモモネの背後の木に寄りかかるように、なんと悪魔神オリンデルスが静かに立っていて、モモネの背後の姿をじぃーと無言で見守ってる。
「えいっ、えいっ、えいっ」
ブンブンブン!
だけどモモネは、そのことに気づいているのか、いないのか、まだ一心不乱に木に向かって剣を振り回している。
そこで悪魔神オリンデルスが―――
「相変わらず精が出るな。 モモネ」
そうポツリと一人言を言うように呟くと、今度は上空を見上げて、
「いよいよ始まるようだな。 エネルギー武闘台と言う大会が……」
そうポツリと呟いていた。
※モモネの祖母「戦士ラグレテス」は『絶望老人が異世界転生をしたら、もう既に最強無双になっている?』にも登場するキャラクターである。




