186、悪魔神オリンデルス:2
●【No.186】●
悪魔神オリンデルスとは、他の悪魔神トニトリエクルスや悪魔神ヴォグゲロルスとは違い、単独・孤高の悪魔神である。
悪魔神オリンデルスは……謎に包まれた悪魔神であり、部下も下僕も信奉者もいない、誰からも忘れられた存在である。
彼が存在していた当時では、勇者などという人間などは存在せず、彼を封印したのが、選ばれた女神たちと、その女神たちを束ねる『光の神王・女神イフレア』だけである。
そこから数えて、約五千年・・・最古の悪魔神として、いつの間にか、その存在までも忘れ去られていた。
彼自身も生き残った残りの「10分の1の魂」だけで人間の頑丈な身体を作っては、その肉体が朽ち果てれば、新しく頑丈な身体を作り、それを繰り返して、今日に至る。
つまり、最初に登場してきた悪魔神が悪魔神オリンデルスであり、のちに登場してきた悪魔神が、悪魔神ヴォグゲロルスや悪魔神トニトリエクルスなのである。
彼ら悪魔神が一体何の目的で存在し、どういった経緯で誕生したのか、また何故、彼らが「悪魔神」と呼ばれているのか、誰にも解っていない。
ただ昔から悪魔神は「全ての世界」を破壊・破滅させる、恐ろしく忌み嫌われる存在として伝えられていて、そういった意味で「悪魔神」と言われ続けてきたのだろう。
だがしかし、結局は誰にも解らないことなのだろう。
悪魔神オリンデルスが自分の出場する大会のトーナメント表を確認しながら少し考え込んでいた。
「………」
(どうやらボクが出場するBブロックで、ボクの強敵となりえる人間はいないようだな)
(やっぱり一番近いところでは、Aブロックに出てくるヴァグドーか……)
(あとDブロックにいる勇者アドーレも、なかなかの強敵にして難敵か……)
(否、直近の課題はまず "人間を殺さないようにする" ……ことだな。 ルール上、殺人は反則負けらしいからな)
(やれやれ、人間を永く殺しすぎたボクには、少し難しい課題だな)
(せめてヴァグドーと闘えるまで我慢せねばならない)
(ヴァグドー……彼ならば、多少全力で攻撃してもびくともしまい。 仮にヴァグドーを倒せたとしても、決勝戦で勇者アドーレと激突するし、決して楽な闘いではないだろう)
(やれやれ、楽々と楽勝で優勝できると思っていたけど―――これは本当に面白くなりそうだな)
(果たして、どこまでやれるかな……? この肉体で……? ふふふ)
最後に悪魔神オリンデルスが、静かにニヤリと無言で笑い、踵を返して振り返り、そのまま "ギルド冒険商" を出ていった。
一方の勇者見習いのモモネは主人とまだ話していた。
「―――えっ、勇者アドーレさんがこの国に来てるのですか?」
「ああ、来てるよ。 大会にも参加するみたいだね。 ほれ、Dブロックに名前があるだろう?」
「―――あっ、ホントです! ということは、準決勝戦で当たる可能性が……っ!?」
「ははは、それはモモネちゃんが、そこまで行ければ……ね?」
「くぅ~ 私の心の師匠である、あの勇者アドーレさんと闘えるチャンスがあると言うのに……っ!!」
「ははは、まぁ…せいぜい頑張ることだな。 モモネちゃん」
「むぅ~」
「ははは、ところで…伝説の "勇者マイカ" は見つかったのかい? モモネちゃん」
「いやぁ~ さすがに無理があるでしょ? だって…100年以上も前の人でしょ? そもそもまだ生きてるのか、どうかもよく解らないですし…?」
「まぁ…俺の中じゃぁ…もう伝説の勇者になってるし、噂じゃぁ…他の世界に行ったとか、行かないとかで、もう見つからないんじゃないかな?」
「はぁ~ そうですよね。」
などと、まだなにやら話し続けていた。
街中を歩く悪魔神オリンデルス。
街中は人々で溢れ賑わっており、人々の笑い声や話し声が聞こえてくる。
そこを悪魔神オリンデルスが、まるで観光客のように左右を見渡しながら、ゆっくり歩いている。
道路の左右には、お店や宿屋や民家などの建物が建ち並んでいて、それを見て楽しむように歩く悪魔神オリンデルス。
もうすっかり人間の中に溶け込んでいるようだ。
この悪魔神オリンデルスは、ずっと一人だった。 人間の仲間も作らず、ただ一人で色んな場所に行き、様々な事や物や人などを見聞きしてきた。
今回のエネルギー武闘台に出場することも、見聞を広げる為の一環であり、優勝や賞金などには、それほど興味がないようだ。
「―――ん?」
悪魔神オリンデルスがふと上空を見上げると、そこには漆黒の大型の鳥が複数羽グルグル飛び回っている。
「……ちっ、またカラスか。 ここにも悪魔神トニトリエクルスの使い魔が来ているのか? 相変わらず鬱陶しいな」
ここで悪魔神オリンデルスが舌打ちをしながら、また前を向いて歩いていく。
一方でヴァグドーたち一行は、最初の街の郊外の森に近い宿屋に宿泊しており、それぞれ皆が自由に寛いでいる。
いつものように、ヴァグドーが外で特訓していると、いつものようにカグツチがヴァグドーの所までやって来て、
「師匠、今日も稽古をつけてください!」
と言ってきたので、ヴァグドーは仕方なく、またいつものように、カグツチに稽古をつけてる最中。
まさに "秘密の特訓" なのである。
少しだけ悪魔神オリンデルスについて、簡単に説明されてる今回の物語はいかがですか?
彼が今後、ヴァグドーたちとどのように関わっていくのか、非常に楽しみですね。




