182、悪魔たちとの戦い?:1
●【No.182】●
ヴァグドーたち一行が『ロートアンリルス連合国』の最初の街の "ギルド冒険商" に立ち寄っていた。
そこでヴァグドーたちが「エネルギー武闘台」という大会・イベントを見つけて、面白そうに思ったヴァグドーが早速参加しようとしていた。
だが現在は、エントリーしようにも、カウンターの中にいるはずの主人が不在のようだぞ。 一体何処に行ったのか?
おい、なんだ…? これは職場放棄なのか…?
ヴァグドーたちが誰もいないカウンターの前まで近づいた。
「なんだよ、誰もいないじゃん?」
「師匠、ここの "ギルド冒険商" の主人がいませんね。」
「ふむ、これは困ったのう。 さて、どうしたものかの…?」
「ヴァグドーさん、これを見てください。」
そこで勇者アドーレの指差す方のカウンターの上には、"白い置き手紙" と "黒く平らな装置" が置いてあった。
その手紙の内容とは―――
━ 急用につき、本日は休業する。 なお、エネルギー武闘台に参加・エントリーしたい者は、冒険者カードや身分証明カードなどを、そこの黒い装置の上にかざせば、エントリー完了となる。 ご協力お願いしたい ━
―――と書いてあった。
どうやら今日は主人が急用でいないらしい。
「なんだよ、マジかよ?」
「なんじゃ? セルフサービスじゃな?」
「あら~? 急用ってなんだろうねぇ~?」
「……とにかく急用なんじゃないんですか? シャニル様」
「…ふーん…」
「ですが、エネルギー武闘台の受付はまだやっているようですので、それだけでも済ませてしまいましょうか?」
「ふむ、そうだの。 この大会に出たい者はエントリーを済ませた方がよいのう。」
「はい、そうですね」
まずヴァグドーは当然参加するのだが、そこで勇者アドーレも参加することにした。
さらにカグツチとルドルス将軍も参加することにした。
つまりヴァグドーたち一行からは四人、この大会に出場するみたいなのだが―――
「ほーう、やはりお前さんも出るのか? アドーレよ」
「はい、ヴァグドーさんの一人勝ち優勝では、あまり盛り上がらないでしょうから、及ばずながらボクも参加しますよ。」
「師匠、私も参加することにしました。」
「ほーう、そうかい。 まぁ…せいぜい頑張るんじゃな。」
「はい、師匠!」
「はい、判りました。」
「えっ、将軍も出るのですか?」
「はい、自分の力がどこまで通用するのか、ぜひ確かめておきたいのです。 勿論、ヴァグドー殿や勇者アドーレ殿には敵わないでしょうけど、武人としては確認しておきたいのです。」
「そ、そうですか。では…気をつけてくださいね。 将軍」
「はい、姫様。我が力、とくとご覧下さい!」
「………」
ここでヴァグドーと勇者アドーレとカグツチとルドルス将軍の四人が、エネルギー武闘台出場の受付エントリーの手続きを済ませて、無事参加可能となった。
そこに彼ら四人の共通点としては、どちらかと言えば、接近戦が得意な方である。
中でも最も接近戦において、このヴァグドーに敵う者が、この世界にいるのか、どうかは甚だ疑問である。 まず普通に戦って勝てるとは思えない。
他に "ギルド冒険商" の中を見渡してみたけど、特に何もないようなので、ヴァグドーたち一行は外に出ようとしていた。
結局、ヴァグドーたち一行のことを誰も気づかなかった。
その時―――
「きゃぁっ!!?」
「きゃぁあああああああああああああぁーーーーっ!!!」
突如として、外の方で女性の悲鳴が、この "ギルド冒険商" の中まで鳴り響いていた。
外では、街の上空に "異形の悪魔の使者" が三体、人間の若い女性と少女を、それぞれ一人ずつ抱き抱えて浮いていた。
「やめろ! 俺の妻子を返してくれ! 頼む!」
「この化物! 降りてきて戦え!」
その下では、中年の男性が何やら大声で騒いでいて、その男性の周囲には、槍や剣を持った複数の兵士たちが上空を見上げて、この "異形の悪魔の使者" のことを睨み付けている。
「おぉっ!?」
「むむむっ!」
外に出た勇者アドーレやヴァグドーが高速で高くジャンプして、そのまま "異形の悪魔の使者" たちがいる方へ飛んでいった。
一瞬にして、ヴァグドーが "異形の悪魔の使者" の所まで近づき、若い女性を抱き抱えてる "異形の悪魔の使者" の頭の左側に向かって、強烈で鋭い右足の蹴りを喰らわせる。
ガァギィーーン!
なんと… "異形の悪魔の使者" が左腕で、ヴァグドーの右足の蹴りを防御した。 ほんの少しだけ信じられないことだけど、この "異形の悪魔の使者" がヴァグドーの凄い蹴りを受け止めたのだ。
「ほほーう、なかなかやるのう。」
『なんだ…お前は…??』
なんと… "異形の悪魔の使者" が "謎の声" を出して、ヴァグドーに話しかけてきた。
「ほーう、お前さん、話せるのか?」
『………』
「ワシの名はヴァグドー、ただの冒険者じゃよ。」
『……ただの冒険者だと……お前がか……??』
よく見ると、若い女性を抱き抱えてる、この "異形の悪魔の使者" が、確かにヴァグドーの攻撃を受けきったけど、その左腕が痺れて動けないようだ。
『……お前……本当に人間なのか……??』
「ほっほっほっ、一応はの……」
『………』
上空に浮かんでいるヴァグドーと "異形の悪魔の使者" たちが、お互いに目の前で睨み合っている。
一体何者なんだっ!!? コイツらはっ!!?




