179、堕神坊と神光聖者:3
前回からの続きです。
●【No.179】●
ー『邪天侯城』ー
飛んできた神光聖者エリュニウスが『邪天侯城』に到着すると、そのまままっすぐ『玉座の間』の方まで小走りで向かっていった。
そこで『玉座の間』の扉を開けると、部屋の一番奥にある石の玉座に座る『右刎王アレクェート』の所まで歩いて近づく。
「やぁ…おかえり…エリュニウス」
勿論、最初に声をかけたのが、右刎王アレクェートの方であり、そこから話し合いが始まった。
「ああ、戻ってきたぞ。 アレクェートよ」
「ん~ なんだか色々と大変だったみたいだね。 エリュニウスよ」
「ああ、そうだな。 では早速、説明してやろう。 アレクェートよ」
「おお、それでは宜しくよろしく」
ここで神光聖者エリュニウスが右刎王アレクェートに、堕神坊ベルシェールトンとの出合いや出来事を詳細に説明した。
「―――と言うわけだな。」
「―――えっ、それだと、あのバカドラゴンの二人も生贄なのか?」
「ああ、そもそも自ら進んで希望したそうだぞ。 それも悪魔神復活を確実なものにするために……な。」
「いや、本当にバカだな。 あのバカドラゴン共は……」
「しかも、あれでもまだ生贄が足りないそうだぞ。」
「…呆れたな…」
「ああ、そうだな」
「でも…まだ足りないって……? 一体どういう意味なんだ…?」
「奴は最終的に黄金の巨大な龍を悪魔神復活の生贄に捧げるつもりらしいな。」
「……黄金の巨大な龍……」
「悪魔神の早期の復活には、龍の力が必要らしい。 それで出来るだけ多くの龍の力を集めているそうだぞ。」
「……ドラゴンの力……」
「そう、世界中のドラゴンの力。なかなかの脅威だと思うけど。」
「ちょっと待った。 もしかして "磨羯龍" も狙っているのか?」
「さぁ、そこまではわからんが、もしかしたら狙っているかもな。」
「………」
「その悪魔神復活の儀式を阻止する方法はただひとつ!」
「なるほど、その堕神坊ベルシェールトンを倒せばいいわけか?」
「ああ、その通りだな。 だが、その攻略方法とは……?」
「……勝算はあるのかい……?」
「既に大魔王エリュドルスとの情報共有と共闘協力は約束されている。 今回の出来事も既に大魔王エリュドルスに知らせてある。」
「ふ~ん、そうなんだぁ~」
「……お前はどうなんだ? 私たちに協力できるのか? それとも、まだ悪魔神トニトリエクルスに忠誠を誓っているのか?」
「……はっ、冗談だろ! いくら忠誠を誓ったって、奴の言いなりに動いたって、結局は無惨に無慈悲に殺される。 ボクは……ボクの同胞たちは、そうやって死んでいった。 ボクだって例外ではない。」
「……そうか……」
「でもまぁ…考えておくよ。 エリュニウス」
「……そうか……」
一瞬だけ、右刎王アレクェートが唇を噛んで悔しそうな顔をしたけど、またすぐに無表情の平常心に戻っていた。
彼もまた悪魔神トニトリエクルスと何かあったのか?
それを見ていた神光聖者エリュニウスが―――
「だがしかし、今回は悪魔神が二人も復活する可能性があるぞ。」
「……何っ!?」
「また悪魔神を復活させようとしている者が、堕神坊ベルシェールトンだけではないかもしれない。」
「……他にもいると言うことか?」
「あくまで可能性の話だがな。」
「………」
「ふん、どうやら、あまり長く考えている余裕も時間もないかもしれないな。」
その後も二人でなにやら話していた。
ー-ー・●・ー-ー
ここは大陸のはるか南側にある小さな森の小島。
その小島の森の中心に円形の小さな空間ができており、そこに小さな祠がある。
その祠の中の某所には、正座で床に座る堕神坊ベルシェールトンと、その両脇には《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》と《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》が普通の人型になって、白いローブ・マントを着て立っていた。
ここで三人が静かに話し始めた。
「さて、これからどうしたらよいものか……?」
『……順調ではないのか?』
『堕神坊よ。 このまま続ければよいではないか。』
『そうだ! その通りだ! 何も臆することはないぞ!』
『ああ、そうだな。 このままで行こう。』
「……確かに今までは…な……だが…これからはそうもいくまい。」
『……神光聖者エリュニウスのことか……』
『まさか…あんた…今更怖じ気づいたのか?』
『あんたの力をもってすれば、あんな奴…造作もないはずだぞ。』
『そうだ! その通りだ! あんなが負けるはずがない!』
「ふふふ、随分と好き勝手言ってくれるな。 そう簡単に事が上手くいけば、誰も苦労はしない。」
『『………』』
「ふふふ、ここからが本当に大変なのだよ。」
血気盛んなドラゴン二人に冷静沈着な堕神坊ベルシェールトン。
この後も三人は静かに話していた。
この堕神坊ベルシェールトンと神光聖者エリュニウス。 敵同士であることは、まず間違いない。
果たして、この先この二人が対決して、ぶつかり合うことがあるのか?
この問題はこれからも続き、この物語の中核を担う……かもしれない……?




