178、堕神坊と神光聖者:2
何がなんだか意味が解らない!?
●【No.178】●
この『堕神坊ベルシェールトン』と蒼の巨大な龍である《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》と紅の巨大な龍である《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》と "神光聖者エリュニウス" が、さっきからずっと「にらめっこ」しながら無言で対峙している。
まさしく、沈黙の時間が続いており、神光聖者エリュニウスが何故ここまで来たのか、その目的が未だに解っていない。
最早、単なる我慢比べになっている?
この異常な状態に唯一慣れていないのが、奴『右刎王アレクェート』なのであり、とても耐えられる状況ではなかった。
『……いや、いつまで黙ってるつもりなんだ? ……こいつら』
「………」
『………』
『……時間稼ぎのつもりなのか? それとも足止めのつもりなのか?』
「………」
『………』
『きぃーーっ!! お願いだから、誰でもいいから喋ってくれぇーーっ!!』
「黙れ!! アレクェートよ!!」
『ひぃぃぃ、エリュニウス……?』
「ふん、お前には何もわからんようだな、アレクェートよ! 戦いは既に始まっているのだよ! ここでな」
「………」
『……えっ!?』
ここで神光聖者エリュニウスが指を頭にコンコンコンと当てている。 つまり頭脳戦が既に始まっている…と言うことなのか?
頭の中で何かしらの戦いが始まっており、常人には全く理解できないことが起きているようだ。
主に戦っているのが、堕神坊ベルシェールトンと神光聖者エリュニウスの二人だと思われ、なかなかの高等技術を要する頭脳戦が展開されてると思われる。
もっとも、ヴァグドーや勇者アドーレや大魔王エリュドルスたち直接攻撃主体の者には、とても真似できない芸当であろう繊細な技・能力である。
・・・。
………。
またしばらくの間、とても重い沈黙が続くのだが―――
突如として、
ドォーーン!
轟音と共に堕神坊ベルシェールトンと神光聖者エリュニウスの二人が、なにやらぐらつきながら後退していた。
「なるほど、そういうことですか……。 まさか本当に…全ては生贄の為だと言うことなのですか……?」
「………」
『な、なんだっ!? 一体何が起きたのだっ!?』
なんと…あの一瞬で、まるで全てを悟ったかのように、妙に納得する神光聖者エリュニウスと無言で返す堕神坊ベルシェールトン。
そして、まだ何も解らないような素振りを見せてる右刎王アレクェートが戸惑う。
『おい、一体何が起きているんだ…? 頼むから教えてくれよ!』
「ふん、まぁ待て! わからんなら、あとで教えてやる。 今はこっちに集中させてくれ。」
『わ、わかった……』
まだ何かが起こっているようで、右刎王アレクェートの質問を遮って、その何かに集中している神光聖者エリュニウス。
まだまだ沈黙と緊張が続くようであり、まるで見えない何かと戦っているような感じである。
・・・。
………。
また突如として、
ドォーーン!
轟音と共に堕神坊ベルシェールトンと神光聖者エリュニウスの二人が、少しよろめきながらまた後退していた。
「なるほど、そういうことですか……。
まだ生贄が足りないのですか……?」
「………」
『……??』
現在、一体どうなっているのか…と言うと、堕神坊ベルシェールトンと神光聖者エリュニウスとの間に少しだけ空間があって、相変わらずの沈黙と緊張が続くものの、この空間の中心には時々、異様な轟音と衝撃が起こり、その都度…堕神坊ベルシェールトンと神光聖者エリュニウスが、その見えない何かの力で後退しているように見える。
この二人は特に何もしておらず、攻撃する素振りも防御する素振りも見せず、ただ黙って睨みあっているだけである。
それはまるで、頭の中なのか、異次元なのか、何処かで戦っているのか、何かを語っているのか、よく理解できないけど、この二人にしか解らない、何かがあるようだ。
などと説明している間にも、
・・・。
………。
またまた突如として、
ドォーーン!
轟音と共に堕神坊ベルシェールトンと神光聖者エリュニウスの二人が、そこからさらに後退していた。
「なるほど、そういうことですか……。 どうやらまだのようですね……。 これからですか?」
「………」
『……もう…意味がわからん……』
まだ何も解らない右刎王アレクェートはただ困惑するだけである。
それから《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》と《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》の顔からも汗が流し、固唾を呑んで無言で見守っている。
「……ふっ、まぁいいでしょう。 私の知りたいことは、あらかた判りました。」
そこで神光聖者エリュニウスの固い表情が少しだけ柔らかくなった。
「………」
一方の堕神坊ベルシェールトンは相変わらず表情が固いままである。
「では、もう帰りましょうか。」
『……えっ、もういいのか……?』
「はい、このまま戦ってもいいのですけど、本人の希望で、今回はこのまま帰ります。」
『ふーん、そう。 でも詳細はあとで必ず説明してもらうからね!』
「はい、判りました。 アレクェートよ」
「では…また会いましょう。 さらばです。 ベルシェールトンよ」
「…くっ…」
そう言うと―――
最後に神光聖者エリュニウスが、《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》と《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》の方をチラリと見ると、そのまま上空へ上昇して、また何処かへ飛び去っていった。
―――本当に一体何しに来たのだ……!?
やっと終わったのか!?
この意味不明な静かな戦いは……!?
それなら良かったよ。




