175、旅立つあなたの為に
●【No.175】●
デュラルリダス王国から次の目的地でもある『ロートアンリルス連合国』の方に向かうヴァグドーたち一行。
大型の馬車には御者台にルドルス将軍が座り、屋根のある後方部に勇者アドーレや大魔女シャニルたちが乗り込み、その屋根の上にはテミラルスがプカプカ浮かびながらついていき、ヴァグドーだけが歩いて馬を引っ張っていく、いつもの方式である。
これまでヴァグドーは御者台にも後方部にも乗らず、ただただひたすら馬を引っ張って歩いてるようで、馬たちもヴァグドーがすぐ近くにいるので、すっかり安心して進んでいけるようだ。
しかも今回は道案内役もやってるので、このヴァグドーはなかなか役に立ってる?
また馬車の後方部の中では、勇者アドーレや大魔女シャニルたちが、なにやら話し合っている。
「次の目的地はロートアンリルス連合国ですか。 まだ大国があったのは意外ですが、まさか "連合国" とは……」
「たしか、ロートアンリルス連合国とは複数の国々が合体した強力な大国だったわね。 あら、聞いたことあったかしら?」
「しかし、こんな南側にも大国があったとは、私も知りませんでした。 いつ頃できたのでしょうか?」
「さぁ、それはどうでしょうか?」
「……ロートアンリルス連合国かぁ……」
「なんだエクリバ、その連合国がどうかしたのか? ……何かわかるのか?」
「あら、エクリバさん。 ロートアンリルス連合国のこと、何か知っているのですか?」
「……ええ、ちょっとね……」
「「……??」」
などと馬車の中では皆の会話も弾んでいるが、一方で馬車の外ではルドルス将軍が、御者台から道案内しているヴァグドーに話しかけてきた。
「それでヴァグドー殿、道はこちらであっておりますか?」
「ふむ、問題ない。 そのまままっすぐ進むのじゃ。」
「はい、判りました。 ところで次のロートアンリルス連合国とは、一体どんなところでしょうな?」
「正直、ワシもよく知らん。 じゃが、その国がこの大陸の一番南側にあって、その先には、もう国も街も森も何もないそうじゃ。」
「では、その国の先の南は、もう海……ということですか?」
「ふむ、そのようじゃな。 これでこの大陸の地形も国々も徐々に見えてきたのう。」
「はい、そのようですな。 ヴァグドー殿」
この大陸には、アーサンティラル王国(中央)→臨王国(西北)→ギドレファナス王国 [現共和国] (東北)→アンリールノエロン(東南)→デュラルリダス王国(西南)とあり、次に向かうロートアンリルス連合国は南端にある。
そして、北端には『魔族の国』がある。
これがこの大陸にある、大国・巨大都市の全てであり、この大陸以外の他に大陸や島などがなく、なおかつ国も街もなければ、この大陸だけで世界となる。
だがしかし、もし…それ以外にも他にも大陸・島・国・街などがあったなら―――
そこでヴァグドーたち一行は、そのまままっすぐに、次の目的地である『ロートアンリルス連合国』の方に向かっていった。
ー-ー・●・ー-ー
一方でデュラルリダス王国では、今回のデュラルン女王陛下のお誕生日パーティーが中止となった。 この大陸の国々に一斉にこの事が知れ渡った。 その知らせに残念がる者もいれば、興味がなく何とも思わない者など、様々な反応を見せている。
実際にデュラルン女王陛下が何者かに誘拐されてしまい、その真犯人も未だに見つかっていない。
しかもヴァグドーが指摘した通りに、あれ以来、漆黒の大きな謎の鳥がデュラルン女王陛下に襲いかかるような真似はしてこない。 やっぱり "宴会" のみに反応するようだ。 これで真犯人が捕まるまでのしばらくの間、"宴会" が封じられてしまった。
これも敵の狙いなのか……?
それと同時に『アロトリス』がここで動き始めた。
将来的に考えて、この大陸の全ての国々や巨大都市などにある全軍・大軍・大部隊をまとめ指揮する者、それは "ヴァグドーしか" おらず、その彼に大元帥相当の称号 "拳轟" を与えたことへの、各国の国王や代表者たちに理解を求めた。
「お母様、これでよろしいのですか?」
「ええ、やれることは全てやるつもりですよ。 何て言ったって悪魔神は待ってくれませんから。」
「はい、そうですね。 お母様」
「……あなた……勇者マイカ……」
果たして、これからどう動くのか?
ちなみにだが、最近の冒険者ランキングでは、遂にヴァグドーがトップになっていた。
ー-ー・●・ー-ー
ー『邪天侯城』ー
南側のはるか上空の雲の上にある、大きな建物の『邪天侯城』という存在感あるお城があった。
その城内の奥の方にある『玉座の間』の中の奥の方にある、石の玉座には『右刎王アレクェート』が全裸の姿で座っている。
その『右刎王アレクェート』が物思いにふけって、突然独り言を言い出した。
「遂にここまで来たか? まさか、本当にここまで来るとは正直思わなかったけど、やっぱり来たようだね。」
ここで俯いて、少し間を置いたあと、再び顔を上げて―――
「だけど、果たして、ここまで辿り着けるかな? ヴァグドーよ!」
また新たな物語が始まるのか……?
旅立つあなたの為に、『アロトリス』と『右刎王アレクェート』が、それぞれ動き始めます。




