173、『アロトリス』:3
●【No.173】●
ーデュラルリダス王国ー
◎「王族の街」◎
この街の中にある、大きなお城の『アロトリス』では、城内の某所に『王室の間』という場所があって、ここは王族の中でも限られた一部の者しか、入室することが出来ない場所である。
この室内では、デュラルン女王陛下が部屋の奥の方に立っていて、その左側には、『アロトリス』が並んで立っていた。 デュラルン女王陛下は純白の豪華正装ドレスを、アロトリスは真紅の豪華正装ドレスを、それぞれ着ている。 これから何かの式典があるのか?
ちなみに今回の式典は、"宴会" ではないようなので、この王国の上空を飛び回っている漆黒の大きな謎の鳥が、デュラルン女王陛下に襲いかかることはないようだ。
部屋の中には、デュラルン女王陛下とアロトリスやお付きのメイドたちの他に、ヴァグドーと勇者アドーレと大魔女シャニルたちヴァグドーたち一行の11人や、レイドルノとダルラルダやメルルスクリム姫と『ワールドエルフ天蝎』と勇者アクナルスなどといった、"ヴァグドー" の仲間・知り合い・関係者のみが入室が許されており、あとの他の王族や貴族が入ることが許されていない。
いずれもそれぞれの正装に着飾っている。
ちなみに大魔王エリュドルスとお供のデイラルスとギロリルスの二人は、先にさっさと帰ってしまったので、また呼び戻そうかどうか検討していたが、ヴァグドーの「ほっとけ」の一言で、今回は見送ったようだ。
これはまさに、"ヴァグドー" の為の完全非公式式典なのである。
これから叙勲式が始まって、一般的に与える側が与えられる側の目の前に立ち、与えられる側が与える側の目の前で跪く、あの方式で行う。
まず最初に勇者アドーレの爵位が一段階上がって "勇者子爵" の地位となり、さらに "青銅騎士" の称号を与えられることになった。
「サアー、アドーレ!」
「はい、ありがとうございます。」
勇者アドーレはデュラルン女王陛下から勲章を授与された。
次に大魔女シャニルにも爵位が与えられ "魔法子爵" の地位となり、さらに "禁廷魔術師" の資格が与えられた。 (もっとも、これからもヴァグドーたちについていくつもりだけど……)
「サアー、シャニル!」
「は~~い、ありがとねぇ~~♪」
大魔女シャニルはデュラルン女王陛下から勲章を授与された。
続いてレイドルノも一気に爵位が与えられ "戦士子爵" の地位となり、さらに "公認暗殺死" の資格が与えられた。 (もっとも、自国に帰国するつもりだけど……)
「サアー、レイドルノ!」
「おう、どうもだ!」
レイドルノはデュラルン女王陛下から勲章を授与された。
続けて大魔王エリュドルスの番なのだが―――本人不在の為、次回に見送った。 そもそも人間の女王が魔族の大魔王に爵位・階級・称号などを授与するのも、甚だ疑問なのだが―――
そして、今度はヴァグドーの番なのだが―――
「う~~ん、困りましたわねぇ~~」
「………」
ここでヴァグドーに与えるモノが何もない―――と言うよりも、もともとヴァグドーに爵位も階級も似合わない―――そもそもデュラルンは自分の目の前で、ヴァグドーを跪かせることを嫌っているようだ。 だがしかし、だからと言って、一番の功労者でもあるヴァグドーに何も与えないわけにもいかないのだ。
さて、困ったぞ。
「………」
この部屋の中で、しばらく沈黙が続くが―――
「ワシゃ、別に何もいらんが……」
「そういうわけにはいけませんわ。 少しは私の顔も立ててくださいな。」
「ふむ、そうかい」
するとそこで勇者アクナルスが―――
「それなら、世界中の国々の軍隊を統括・統率できる権利・資格を与えたらどうかな?」
「……??」
「……えっ!?」
「その男は一見して、孤独・孤高に見えるけど、その男には優れた策略と並外れた統率力を有しており、将来的に全ての軍隊を統率する時には、その男の力がきっと必要になる。 いや、その男しか先頭に立って全軍を統率できないだろうな。」
「ヴァグドー様にそのような力があるのですか?」
「俺の見立てではね」
「………」
「なるほど、まさに "大元帥" ですね。 これは検討する価値がありますわね。」
「お母様、よろしいのですか? これは他の国々を巻き込んでの事柄ですよ?」
「もちろん、話し合いの場を設けますわ。 あと "コネ" も惜しみなく使っていきますわよ。」
「…そ、そうですか。 …お母様」
ここでさらに勇者アクナルスが―――
「その名も "拳轟" と言う称号にして、全軍に号令をかける。 つまり、ヴァグドーに "拳轟" の称号を与えるのです。」
「…… "拳轟" ……ヴァグドー様だけの称号ですね?」
「うんうん、それ、いただきました。 ぜひ使わせていただきます。」
「それにしてもお前さん、そんなことをよく思いつくのう。 アクナルスよ」
「…どうも…」
「でも、それだけではまだまだ不十分ですわね。 あと何か欲しいですわね。」
「まだ何かありますか? アクナルスさん」
「…むむっ…」
「………」
そこで勇者アクナルスが黙ってしまい、少し考え込んでしまった。
次回にそのまま続きます。




