169、悪魔神の生贄謀略?:2
今回は戦闘場面がありません。
●【No.169】●
遂に謎の巨大な古代遺跡が爆発・崩落した。
まずは勇者アドーレと大魔女シャニルの二人が、それぞれ二人の高貴の女性を抱き抱えて、どうにか謎の巨大な古代遺跡から脱出した。
その二人が外に出ると、そこにレイドルノと大魔王エリュドルスの二人も、既に謎の巨大な古代遺跡から脱出していて、外に出ていた。
そこで勇者アドーレや大魔王エリュドルスたち四人が早速合流して、それぞれの状況を確認する。
「あ~あ、古代遺跡が爆発してるよ~」
「ちっ、なんということか!!」
「これは一体どういうことですか!? なんでいきなり爆発したのですか!?」
「……」
「ああ、俺たちが最後にいた部屋の奥の方にあった、石の玉座に座る女性の死体に爆弾が仕込んであって、それが突然爆発したんだよ。」
「…えっ!? …死体……爆弾……っ!?」
「すると、ボクたちをこの古代遺跡に誘い込んで、その爆弾でボクたちを皆殺しにするつもりでしたか?」
「どうやら、そのようだな」
「くっ、なんと言うことだ!!」
「そっちの方はなんとか救出できたようだな。」
「はい、二人いたので二人共救出しました。」
「…そうか…」
「あれ? ヴァグドーちゃんは?」
「彼ならあそこにいるぞ」
そこで大魔王エリュドルスがある上空の方を指差していて、その先を見上げると、上空を浮遊しているヴァグドーの姿が確認できた。
そのヴァグドーの目の前には、黄金の巨大な龍である『ゴールデンデッドリバーカラスドラゴン』が同じく浮遊している。
それを見ていた勇者アドーレや大魔女シャニルたちが凄く驚いていた。
「な、なんだ……あれは……っ!?」
「お、黄金の…ドラゴン……っ!?」
「ちょっ、ちょっと、なんなの、こいつぅ!?」
「ま、まさか……!?」
「……」
すると瞳を閉じていた『ゴールデンデッドリバーカラスドラゴン』が真紅の瞳を見開いて、静かにゆっくりと話しかけてきた。
『我が名はゴールデンデッドリバーカラスドラゴンだ。 我が主、三大悪魔神ヴォグゲロルスが下僕だ。』
「な、何ぃっ!? ヴォグゲロルスだとっ!?」
「さ、三大…悪魔神だと…っ!?」
「……ヴォグゲロルス……」
「……ちっ!!」
そこで勇者アドーレや大魔女シャニルたち四人も空中に浮遊して、ヴァグドーの横に並んで合流してきて、目の前の黄金の巨大な龍に反論してきた。
「貴様が今回の女王様誘拐を計画した真犯人なのか!?」
「えっ、あのドラゴンが真犯人なの!?」
「…一体何のために……!?」
『違う、我がそのような姑息な手段を使用するなど、絶対にあり得ない。 今回の事柄と我は関係ない。』
「…ほう…」
「な、何ぃっ!? 関係ない!?」
「では一体誰がやったんだ!?」
『……』
すると血気盛んな勇者アドーレやレイドルノたちが武器を構えて臨戦態勢になったが、ここでも『ゴールデンデッドリバーカラスドラゴン』が―――
『無駄だ。 残念だが我に攻撃できない。 我はここにいて、ここにいない。 我の実体は既にここにはおらず封印されている。 したがって我には攻撃できない。』
「な、なにぃーっ!?」
「な、なんだとっ!?」
「そ、それは一体どういう意味なんだっ!?」
『我の今の姿はただの映像であり、ただ見えるだけで触ることができない。 ただの見える思念体だ。』
「……」
「……ちっ、なんだそれは…っ!?」
「…なんだと、え…映像だとぉ!?」
「そ、そんなことが…できるのかぁ…っ!?」
『我は今回の女王様誘拐とやらの事柄とは、一切関係がない。 我の思念を映像にして、ここに留まっている理由は、かつてここで我が人間に敗北した地だったから……だが、我はここで待っていた。』
「……待っていた……だとっ!?」
「そ、それって一体どういう意味なの……!?」
「……っ!?」
『汝ら人間よ。 もう…まもなく…三大悪魔神が完全に復活するかもしれない。 悪魔神の封印された実力が少しずつだが戻りつつある。』
「な、なんと……言うことなのか!?」
「……封印が解ける……!?」
「ちょっと、ヤバくない!?」
「なるほど、悪魔神トニトリエクルスに悪魔神ヴォグゲロルス……あとひとつは一体なんじゃ!?」
「残念だが、不明だ。 いや、存在自体が不明だ。」
「…そうか…」
ワシの質問に大魔王エリュドルスが答えてくれた。
『汝ら人間よ。 復活する前に再度封印するならば、悪魔神が封印された地で直接封印せねば、効果はない。 だが、封印された地は封印した人間以外は誰も知らない。』
「……」
『三大悪魔神が封印された地はこの世界にはない。 既に滅亡した別の世界に封印されている。 果たして、汝ら人間に別の世界まで移動して再度封印できるかな?』
「…ほう…」
「…別の世界だと…まさか…」
「何故、我々にそんなことを言うのだ!?」
「まさか、それを言うために、わざわざ自分の思念体を映像化して、ずっとここで待ってたの!?」
『その通りだ。 これが我が任務……まもなく、我は消える。』
(これで任務終了ってところか)
「……」
『だがしかし、ヴァグドーよ。 そなたらに悪魔神は絶対に倒すことはできない。』
「…っ!!?」
今の『ゴールデンデッドリバーカラスドラゴン』の意外な発言にヴァグドーたち五人が無言で驚愕している。
「何故、ワシのことを知っとるんじゃ!?」
だがしかし、『ゴールデンデッドリバーカラスドラゴン』は何も答えずにニコリと笑いながら、その姿が静かにゆっくりと消えていった。
なにやら意味深長な台詞があって、果たして伏線になるのか、少し心配です。




