160、前夜祭:5
●【No.160】●
―デュラルリダス王国―
◎「王族の街」◎
その大きなお城の『アロトリス』のある広大な某フロアを、前夜祭のパーティー会場に使用して、ここで連夜にわかって行われていた。
だがしかし、突如として、デュラルン女王様が何者かに誘拐されてしまい、ヴァグドーと大魔王エリュドルスが、その誘拐犯のあとを追い、さらには勇者アドーレや大魔女シャニルやレイドルノも、そのあとを追っていった。
一方の前夜祭のパーティー会場では、アロトリスがグラードゥン侯爵という名前の貴族を問い詰めていた。
まずはアロトリスが、謎の白い手紙の方を取り出して、静かに話してきた。
「まずこの白い手紙は、グラードゥン…あなたが書いた手紙ですね。 いいえ、正確には本物のグラードゥンが書いた手紙と言いましょうか。」
「……何ぃっ!?」
「ここには…自分が何者かに殺されている…かもしれないことが書かれていますね。」
「……ちっ!」
「…残念ですが、本物のグラードゥンは既に殺されているのでしょうね。 この手紙には、彼の必死の思いが綴られていますね。」
「そ、そんなバカなぁ!!?」
「…筆跡鑑定は既に終了していますよ。 本物の彼の手紙で間違いありません。 そして、次にこの本ですね。」
次にアロトリスが、謎の黒く分厚い古い本の方を取り出して、また静かに話してきた。
「これが何か判りますか?」
「そ、それは…まさか…バカなぁ!!?」
「…見覚えありますか?」
「……くっ……」
「もちろん、本物ですよ。 ある王国の国王から拝借しているものですが、実際に本物を見るのは、初めてですね。 本当に色々書いてありますよ。」
「………」
「もちろん、あなたのことも書いてありましたよ。 あなたが本物を殺したこともね。」
「……うっ……」
「それにしても、この『悪魔神の予言書』は…本当に悪魔神が書いたものなのですか? ここに書かれている "三大悪魔神" と言うモノも、少し気になりますけど…。」
「………」
するとここで、グラードゥン侯爵の身体が、小刻みにぶるぶる震え始めていた。
「…ん? どうかされましたか…? グラードゥン」
「「!!?」」
何か危険を察知した、勇者アクナルスと上位魔族のギロリルスがとっさに身構えて、素早く飛び出した。
「うがぁあああぁあああぁーーーっ!!!」
突如として、グラードゥン侯爵の表情が急激に変化して、凄い大声で発狂して、素早くアロトリスに襲いかかってきた。
「……っ!?」
「…がぁっ!?」
するとグラードゥンがアロトリスに攻撃する寸前で、なんと勇者アクナルスの灰がグラードゥンの身体にまとわりつき動きを止めた。
「……かぅっ!?」
ドカッ! ドサッ!
続けてすぐさま、上位魔族のギロリルスが背後から、グラードゥンの背中上部を手刀で強打させて、そのまま前のめりに倒して気絶させた。
この一連の動作は、まさに一瞬の出来事であった。
そして、グラードゥンは気絶しているが、このまま衛兵たちに全身を鎖で捕縛され、そのまま何処かへ連れていかれ、その様子をアロトリスが驚きながら見ていた。
「お二人共、どうもありがとうございました。 それにしても、まさか…本当にいきなり襲ってくるなんて……」
「やっぱり襲ってきましたね。 こいつらは手段を選ばない…と言うよりも、最早問答無用ですしね。」
「礼には及ばぬ。 我は大魔王様のご命令通りに動いたにすぎぬ。 だが、これで終わりではないはず。」
「ええ、これはもう信じるしかありませんね。 この誘拐事変も…まさに悪魔神復活の為の "生贄" なのだったということですね。」
そこでアロトリスが前夜祭が行われているパーティー会場の中央まで来て、
「本日は誠に申し訳ありません。 緊急事態が発生した為、今夜のパーティーはこれにて終了します。 またのご来場を心よりお待ちしております。」
そう言うと、アロトリスが深々とお辞儀をしていた。
こうして、今夜のパーティーはこれで終了して、貴族や王族たち参加者が、続々とパーティー会場をあとにして帰宅していき、残ったヴァグドーたち一行も、城内にある自分たちの宿泊部屋へ戻っていった。
一方のヴァグドーは大きなお城の『アロトリス』から北西の方向へ家の屋根を飛び跳ねながら、もの凄い速度で誘拐犯のあとを追っていて、そこに勇者アドーレや大魔女シャニルやレイドルノが、ようやく追いついてきた。
「おう、お前さんたちか」
「はい、お待たせしました。」
「ハロー、オ・マ・タ・セ♪」
「ようやく、追いついたな」
「既に大魔王がワシより先まで行ってしまっとるの。」
「はい、判りました。」
「へぇ~ なんか…張り切ってるわねぇ~♪」
「………」
ここで大魔王エリュドルスがヴァグドーたちよりも、さらに先まで行っており、その誘拐犯のあとを追っていた。
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