159、前夜祭:4
※当然だが、女王様が何者かに誘拐(行方不明)された為、前夜祭のパーティーは一時中止して、現在捜索が行われている。
●【No.159】●
―デュラルリダス王国―
◎「王族の街」◎
その大きなお城の『アロトリス』のある広大な某フロアを、前夜祭のパーティー会場に使用して、連夜にわたって行われている。
だがしかし、突如として、その会場全体から大量の "黒い煙" がモクモクと発生していて、その場にいた全員が次々と倒れて、気絶していった。
しばらくしてから、ギロリルスがデイラルスを起こし、一体何があったのか、事情を説明していた。 それがデュラルン女王様が何者かに誘拐されて、ヴァグドーと大魔王エリュドルスが、その誘拐犯のあとを追っていった事である。
「…えぇっ!? 女王様を誘拐ぃ…っ!?」
「ああ、そうだ。 これはオブリルスが見つけたという『悪魔神の予言者』のとおりになってきたな。」
「…えぇっ!? まさか…悪魔神に心酔して洗脳された人間や魔族の信者が、まだ生き残っていたの!?」
「確かに…話では大魔王様が悪魔神の信者を全て排除した…と言うことなのだが、残念ながら…全ては排除できなかったようだな。」
「まさか…本当に…あの悪魔神を完全復活させようとしているのか!?」
「もし…本当に悪魔神が完全復活したら、少なくともこの世界はもう終わりだな。」
「…じょ…冗談じゃないよ…! そんなこと…狂ってる…!」
「現在、大魔王様とヴァグドーという人間が、女王様を連れ去った誘拐犯のあとを追っている最中だそうだ。」
「さすがは大魔王様にヴァグドーだね。 あの二人にかかれば誘拐犯など、もはや壊滅したも同じだね。」
「ああ、だが…これが普通の誘拐犯だった場合なんだが、相手は悪魔神の信者…何をしでかすか…よく解らん。」
「………」
「アイツらは異常者なんだからな。」
ここで次第に徐々に気絶していた人々が起き上がる中で、デイラルスが妹のテミラルスの方まで近づき起こしにきた。
「おい、生きているか?」
「ハッ!! 姉貴っ!?」
「どうやら大丈夫のようだね」
そこでテミラルスをはじめ、カグツチやニーグルン姫や勇者アドーレや大魔女シャニルやレイドルノやメルルスクリム姫や勇者アクナルスたちも、続々と起き始めてきた。
それとほぼ同時に『アロトリス』も起きてきた。
「だ、大丈夫ですか? アロトリス様」
「ええ、私は大丈夫よ。 それよりもグラードゥンを至急、私の所まで連れてきなさい。」
「はっ、了解しました。」
その『アロトリス』が黒服を着たボディーガードたちの手を借りて立ち上がる。
ほどなくして、グラードゥンと言う名前の男が、衛兵たちに捕縛され引き連れられ、『アロトリス』の前で正座させられていた。
[個人情報]
名前:グラードゥン
年齢:33歳
種族:人間
性別:男性
爵位:侯爵
階級:貴族
職業:政務大臣
特徴:黒髪リーゼント
そのグラードゥンがとても憤慨した表情で、なんとアロトリスのことを睨み付けている。
「………」
「これは一体どういうことですかな? アロトリス様」
怒りに満ちながらも静かに話すグラードゥン。 そこに衛兵が―――
「アロトリス様、非常に危ないところでした。 こやつ…このまま国外へ逃亡しようとしていました。」
「…そうでしたか…」
「はっ、あともう少しで逃げられるところでした。」
「ち、違う! な、何を言ってるんだっ!? 何故、この私が国外逃亡などと…っ!?」
「では…一体何処に行くつもりでしたか…? 冒険者や観光客ならいざ知らず、あなたは貴族であり、この国の大臣なのですよ…?」
「そ、それは……急用ができて……」
「…急用…? それは女王陛下のお誕生日パーティーの前夜祭よりも大切で急を要する用なのですか…?」
「…くっ…」
「…今は女王陛下が行方不明なのに、まさか…それ以上の急用とは、一体何ですか…?」
「…うっ…」
「おそらく、あなたは国外にいる仲間と落ち合うつもりなのですね。 一緒に手引きをした、あなたのお仲間と」
「…っ!?」
「どうやら…図星のようですね。 まさか…この私が何も知らない…とでも思っていたのですか…?」
「………」
このグラードゥンが不機嫌そうな表情をして黙秘していると、『アロトリス』が白い手紙と黒く分厚い古い本を取り出した。
「そ、それはぁ……っ!?」
それを見たグラードゥンが激しく動揺している。
「これらのお陰で、私はあなたの…いや…あなたたちの諸悪の所業を看破できたのです。」
「く、くそっ! しまった!」
このアロトリスの "動かぬ証拠" を見たグラードゥンが、ますます困惑して狼狽えている。
一方のヴァグドーたち一行側では、最強の主力メンバーである勇者アドーレやレイドルノたちが、既にヴァグドーのあとを追って進発していた。
「ヴァグドー公は一体どうやって、あの "黒い煙" から逃れることができたのか?」
「おそらく、あの人の鋼鉄の肉体には、様々な効果や攻撃などを無効にする、特殊な能力があるのでしょうね。」
「へぇ~ いいなぁ~」
「なるほど、あの人らしい能力だな。」
そして、そのヴァグドーは遥か先まで誘拐犯を、もの凄い速度で追っていた。
※さしずめ、某RPGの主人公のパーティで言うところの―――
1.勇者 :アドーレ
2.戦士 :ヴァグドー
3.僧侶 :レイドルノ
4.魔法使い:シャニル
―――かな?




