155、下準備
一体何の事なんだろう…?
●【No.155】●
―デュラルリダス王国―
◎「王族の街」◎
その大きなお城の『アロトリス』では、ヴァグドーたち一行が城内にある宿泊部屋へ、それぞれが入室しており、しばらくはゆっくり寛いでいた。 お客様でもあるヴァグドーたち一行の11人に対して、一人一部屋ずつの宿泊部屋が与えられており、しかも室内がなかなか広くて豪華・綺麗であり、洗面所・トイレ・シャワー・テーブル・イス・鏡台・クローゼット・ベッドなどが新品同然にある。
さすがである。
さて、デュラルン女王様のお誕生日パーティーも、いよいよ数日後に迫ってきていた。
まずは前夜祭を行う予定になっていて、着ていく服装も城の方で出してくれる。 あらかじめ、デュラルン女王様が用意してくれた男女別の控え室の中には、男性陣には白色のタキシードが全員に、女性陣にはそれぞれ色違いのパーティードレスが全員に用意されている。
そんなある時のこと
ヴァグドーが自分の宿泊部屋の中でイスに座って、ゆっくり寛いでいる最中で、すると突然だが―――
「……?」
それは遠くの方で…いや…近くの方で…いや…? 何か不気味で異様で嫌な気配をヴァグドーが感じていた。
「この気配は…? 確か…この王国に来た時にも感じておったが、あれとはまた、別の嫌な気配を感じるようじゃが…? これは一体何なんじゃ…?」
どうやら、こいつは用心する必要があるようじゃな。
そこでヴァグドーが、またしばらく考え込んでしまった。
そんなある時のこと
ヴァグドーが男性用の控え室にある試着室の中で、パーティー用の白色のタキシードを試着している最中で、すると突然だが―――
「……?」
またしても、何か不気味で異様で嫌な気配をヴァグドーが感じていた。
「またしても、嫌な気配を感じるぞ…? やっぱり…何かおるのかの…?」
不思議に思いつつも、パーティー用の白色のタキシードを試着して、試着室から出てくると、真面目な勇者アドーレが神妙な面持ちで、ヴァグドーの方に近づき話しかけてきた。
「ヴァグドーさん、今の感じましたか? またしても、奇妙で嫌な気配を感じましたけど…? これは一体何ですかね?」
「いや、ワシにもよく解らん」
「これは要警戒ですかね?」
「ふむ、そうじゃな。 その様にした方がよいかもな。」
それはヴァグドーだけでなく、勇者アドーレにも「何か」を感じ取っていた。
確かに気をつけた方がいいだろう。
その後で勇者アドーレやルドルス将軍やアルベルスの三人も、続けて試着室の中に入り、同様にパーティー用の白色のタキシードを試着していた。
一方で女性用の控え室にある試着室の中では、カグツチやニーグルン姫たち女性陣が、自分用のパーティードレスを試着していて、カグツチが赤色、ロンギルスが緑色、エクリバが橙色、ニーグルン姫が水色、テミラルスがピンク色、アルラトスが黄色、大魔女シャニルが紫色と、それぞれパーティードレスが用意されていた。
「ま、まさか……この私がパーティードレスなんか着ることになるなんて……」
「よくお似合いですよ。 カグツチさん」
「へぇ~ なかなかいい趣味のパーティードレスだねぇ~♪」
「なるほど、この王国のパーティードレスとは、こうなっているのですか。」
「ま、まさか……魔族である、この私にもパーティードレスを着せられるとは……」
「これが王国のパーティードレスなのですか? なかなか凄いですよね。」
そこでは、カグツチやニーグルン姫たちが和気あいあいとお喋りしている最中で、何故か大魔女シャニルだけが神妙な面持ちで、一人無言で考え込むように試着していた。
「……?」
するとそこに―――
「…ん? どうかされましたか? シャニル様」
不審と疑問に思ったアルラトスがシャニルに質問してきたのだけど―――
「いいえ、何でもないわ♪」
さりげなくはぐらかして、あんまり取り合わなかった。
「……?」
アルラトスの頭の中では、まだ "?" が残っていた。
その後も女性陣全員が楽しそうに試着を続けていた。
そんなある時のこと
ヴァグドーたち男性陣がいる男性用の控え室に、デュラルン女王様が訪ねに来ていた。
そのデュラルンがヴァグドーの方に近づき、白色のタキシード姿を見ながら―――
「ヴァグドー様、よくお似合いですよ。 とても素敵です!」
「ふむ、そうかの」
「それと…私の誕生日パーティーでは、ぜひ私と一緒に踊ってくださいな。」
「ふむ、そうじゃな」
「ありがとうございます!」
などとデュラルンが笑顔でヴァグドーに話しかけてきた。
一方でカグツチやニーグルン姫たち女性陣がいる女性用の控え室では、『アロトリス』が訪ねに来ていた。
その『アロトリス』が大魔女シャニルの方に近づき、紫色のパーティードレス姿を見ながら―――
「久しぶりね、シャニル」
「そうね、アロトリス…久しぶりね…」
「何年ぶりかしらね?」
「さあ、もう忘れたわ♪」
「ふふふ、相変わらずね」
などと二人でなにやら意味深長な会話をしていた。
……えぇっ!? ヴァグドーって、踊れたのぉ!?




