148、「普通の街」
●【No.148】●
―デュラルリダス王国―
◎「普通の街」◎
また名前が安易な街なのだが、これは一般市民が暮らす「普通の街」だから、と言う理由なのか、それとも他に名前があるのか、詳細は不明である。
そこにヴァグドーたち一行が、勇者アクナルスの案内で次の街に入ると、先程の街とは打って変わって、非常に平和的で穏やかな街であり、沢山の一般市民が静かに暮らしている。
街中は民家や宿屋やお店などの建物が、普通に沢山並んでいて、道路には人々が普通に歩いている。 勿論だが、その一般市民には、ヴァグドーたち一行のことに気がついていない。
当然だが、この街のあちこちにも、沢山の垂れ幕や横断幕などが架かってあって、その文字の内容が、「女王様、お誕生日おめでとうございます!」や「デュラルン様、おめでとう!!」などと書かれていた。
ちなみにだが、女王様のお誕生日パーティーは、まだ開始されていないようだ。
そこでヴァグドーが勇者アクナルスに質問してきた。
「ここの街では、一体どうするつもりなんじゃ!?」
「この街は特に何もないので、そのまま素通りしましょう。」
「…素通り…か…」
「ここでは、あまり問題を起こしたくないし―――」
「………」
「まぁ、ここは住宅密集地だし、別に観光地でもないから、特に何もしようがありませんよ。 それとも、今からでも宿屋に泊まりますか?」
「いや、いい。 通過しよう」
「……了解しました。 では…行きましょう」
そこでヴァグドーたち一行は、勇者アクナルスの案内で先を急いでいた。
そんな、ある日の夕方頃
上空はだんだんと暗くなっていくけど、街中は比較的にまだ明るい。
その街の所々で、黒い帽子に黒いコートを着た人物が、2~3人かたまって辺りを見渡していて、まるで何かを監視しているようなのだが…?
それを見ていて疑問に思ったヴァグドーが勇者アクナルスに質問してきた。
「あの者たちは、一体何者なんじゃ?」
「あぁ、彼らは監視隊です。 我々の言い方だと、『警察官』と同じ意味だそうです。」
「ほーう、あれが『警察官』なのか…?」
「おそらく、あの近くに彼らの詰所もあると思いますよ。」
「じゃあ、パトロール…?」
「はい、そのようですね。」
どうやら夜間のパトロールをしているようだ。
衛兵は街と街の間の関所を守る兵士のこと。
監視隊は街中の人々と治安を守る部隊のこと。
王国軍は内乱や外敵に備えて組織された軍隊で戦争もする。 約50万人はいる。
「ふむ、なるほどのう」
「へぇ~ 監視隊ですか」
「……?」
そこで大魔女シャニルが、神妙な面持ちの難しい顔をしていて、なにやら考え込んでいる。
「どうかされました? マスター・シャニル」
「いいえ、何でもないわ」
「……?」
それに気がついたアルベルスが大魔女シャニルに声をかけると、シャニルが「ハッ!」とした感じで返してきた。
あらら、何だか…とてつもなく、強力で凶悪な気配……みたいのを感じたけど……一体何だったのかしらねぇ~~? まぁ、気のせいかしらね♪
丁度同時に―――
どうやら勇者アドーレも少し考え込んでいた。
「………」
ちっ、なにやら凄く邪悪な気配を感じてきたな。 ここまで嫌な気配は…なかなかないよな…? 一体何だったんだ!?
ほぼ同時に―――
どうやらヴァグドーも少し考え込んでいた。
「………」
…ん? この気配は…? もしや…アヤツの気配なのか…? じゃが何故、アヤツの気配が…こんな所まで……?
ヴァグドーに勇者アドーレに大魔女シャニルといった実力者で転生者の三人が、この「普通の街」をだいぶ通過したあたりで、ほとんど同時に「ある何か」の気配を感じていた。
そして同時に―――
どうやら〈地球神アクナディオス〉も少し考え込んでいる。
『………』
ヒヒヒ、この王国……なにやらキナ臭くなってきたな…。 もしかしたら……何かが…起きるかもしれないかもな…。 ヒッヒッヒ
皆がそんなことを考え込んでいる内に、この「普通の街」と次の街の間にあり、次の街に入る為の関所が見えてきた。
「…ようやく見えてきたか…」
そこでヴァグドーたち一行にも、次の関所が視認できた。 だがしかし、もう夜も遅く…当然だが、関所も既にやっておらず、次の街には入れない。
「残念ながら、今日はここまでのようですね。 先輩」
「ふむ、そうか」
今夜は関所のすぐ近くにあり、あらかじめ勇者アクナルスが予約しておいた「お隠れ森里」と言う名前の普通の宿屋に宿泊することになった。
つまり、次の関所に入るのは、明日以降となる。
「それでは、今夜はここで…行きましょうか。 先輩」
「ふむ、わかったのじゃ」
こうして、ヴァグドーたち一行は勇者アクナルスの案内で、今夜は「お隠れ森里」と言う普通の宿屋に入っていき泊まっていくようだ。
おっと、ここでも足止めなのか……?
一体いつになったら、到着するのやら?




