147、『銀の招待状』:2
はじめに前もって言っておきますが、決してコントではありません。
●【No.147】●
―デュラルリダス王国―
◎「最初の街」◎
ヴァグドーが〈地球神アクナディオス〉の恐ろしい実力を知ったところで、ヴァグドーたち一行が勇者アクナルスの案内で、主に冒険者や観光客などが居る「最初の街」の郊外・この街の外れまで来ていた。
この街では、特に取り締まりを強化する機関がなく、衛兵たちもいないため、治安に関しては勇者アクナルスに一任されており、治安悪化を目論む連中を消してきたこと数知れず。
そこでヴァグドーたちが、ある疑問を勇者アクナルスに質問してきた。
「どうして、この街が「最初の街」と呼ばれておるんじゃ?」
「…「最初の街」…? あぁ、この王国の入口から最初にある街…だから…?」
「えー、安易ねぇ~♪ 他に何か言い方ないのぉ~♪」
「…言い方…? さぁ、別に…俺が考えたわけじゃないから…ただの観光地だし…」
「それでは、この街の正式名称は何ですか?」
「…正式名称…? さぁ、別に…デュラルリダス王国の観光地の街としか…」
「ほーう、そうなんじゃな」
「街に名前がないんですか?」
「へぇ~ そうなのねぇ~♪」
などと勇者アクナルスとヴァグドーたち一行が、歩きながら雑談していると、次の街に入る為の関所が見えてきた。
「…遂に到着したか…」
この関所を越えると、いよいよ、このデュラルリダス王国出身の一般市民が暮らす街に入れるわけだが、関所には衛兵たちが待機している。
その衛兵たちがヴァグドーたち一行の姿を見つけると、早速だが、通行止めにして規制してきた。
「そこで止まってください。」
「……あなたたちは?」
「おお、これは勇者アクナルス様、一体どうされましたか?」
この衛兵たちが勇者アクナルスの姿を見つけると、近づいてきて声をかけてきた。
「この方たちを『アロトリス』まで案内している。 前の街の "ギルド冒険商" で、既に手続きが完了している。」
「…えっ、この方たちが…?」
「あぁ、そうだ。 女王様のお誕生日パーティーに招待されているはずだ。」
「…えっと、失礼ですが、この方たちのお名前は…?」
「ヴァグドー御一行様だ」
「…ヴァ…!?」
「すぐに確認しなさい!」
「は…はい、判りました! すぐに確認を……!」
「…ん…」
するとそこでヴァグドーが、懐から『ワールドエルフ天蝎』から受け取った、例の『銀の招待状』を取り出して、それを衛兵たちに見せつけた。
「……あぁっ!?」
「……そ…それは……ま…まさか……っ!?」
「………」
例の『銀の招待状』を見せつけられた衛兵たちが、物凄く驚愕している中で、何故か、勇者アクナルスだけは無表情で冷静に見つめていた。
その『銀の招待状』は大変貴重なアイテムであり、選ばれた者にしか入手できない。 つまり、ヴァグドーは選ばれし者なのだ。 ちなみに招待状の内容には、勇者アドーレや大魔女シャニルだけでなく、カグツチやニーグルン姫たち一行の名前も書かれてあり、同伴者も選ばれし者である。 (※一体どうやって同伴者の名前を調べたのかは不明である)
ここで勇者アクナルスが、さらに衛兵たちに畳み掛ける。
「この通り、彼らは女王様に招待された立派なお客様である。 呼んでおいて出迎えにも来ないとは、女王様の沽券にかかわる―――いや、面子にかかわる問題ではないのか?」
「………」
この衛兵たちが下を向いて黙り込んでしまった。
ふふふ、勇者アクナルスが内心で優越感に浸っており、ヴァグドーたち一行の方は、ただただ唖然としていた。
「一体どうしたと言うのだ?」
そこに関所の責任者で衛兵たちの上司にあたる者が現れた。
「……そ、それが……」
衛兵たちが上司に事情を説明すると、その責任者が―――
「あの…大変失礼ですが、その『銀の招待状』をこちらの方で確認させてもらって、よろしいでしょうか?」
「…ん…」
何の躊躇もなく、ヴァグドーが、その『銀の招待状』を関所の責任者に手渡した。
「では…少々お待ちください」
そう言うと、その関所の責任者が、ヴァグドーから受け取った『銀の招待状』を持って、関所の建物の中に入っていった。
「ふふふ、どうやら自分が今…大変な事態になっているのに、全く気がついていないようだな。」
勇者アクナルスが笑いながら、意味深長なことを言っている。
数分後、関所の責任者が慌てた様子で関所の建物から飛び出してきて、素早く滑り込むようにして、土下座をしてきた。
「まことに申し訳ありません! ヴァグドー様! こちらの手違いがありまして、確認を怠りましたぁーーっ!」
「……見事じゃ……」
それはあまりに、美しくも素晴らしい "スライディング土下座" であり、ヴァグドーは思わず、そちらの方に目がいってしまい、彼の謝罪の言葉を全く聞いていない。
「本当に申し訳ありませんでしたぁーーっ!」
「それで…彼らは一体どうすればいいのかねぇー?」
ここで勇者アクナルスが、遂にとどめをさしにきた。
「…も、も…勿論、お…お通り…くださにぃ…」
とても緊張していて、最後の方で少し噛んだ。
そこで勇者アクナルスが内心で「勝った!」とドヤ顔で勝ち誇っていた。
「それでは…行きましょうか。 ヴァグドー先輩」
「……ふむ……」
この勇者アクナルスと衛兵たちのやり取りに、ヴァグドーたち一行が若干ひき気味で見ていたけど、その後はすぐ無事に関所を通過して、次の街に入ることができた。
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