146、地球神の実力?
ヴァグドー、初体験!?
●【No.146】●
―デュラルリダス王国―
◎「最初の街」◎
勇者アクナルスの案内でヴァグドーたち一行が、街中にある道路を歩いていると、
「…なんじゃ? アレは…?」
そこにヴァグドーたち一行が歩く道路の先に、なにやら人だかりができていて騒いでいる。
「……ちぃっ!」
思わず勇者アクナルスが、一瞬…不機嫌になって舌打ちした。
「一体どうしたんじゃ…?」
「あぁ、あいつらはおそらく、ガラの悪い連中なんだよ。 この街には、ああいうのがよくいるんだよ。」
「……この街にも?」
『ヒッヒッヒッ、ああやって道路の真ん中を陣取って、道行く人に通行料をぶんどっていく、凄くセコイ連中なんだよ。』
こういうヤツらは何処の国や街などにもいるものである。 あそこの道路を通ろうとしている他の人たちが、とても迷惑そうな不機嫌な顔をして、立ち止まっている。
ちなみにこの王国には、通行料や有料道路などのシステムは一切ない。
「ふむ、ならばアヤツらをブッ倒すかの?」
「いいえ、あいつらはこちらの方で処理しますんで…」
『ヒッヒッヒッ、ご心配なく、アイツらも自分が吸収してやるぜ!』
そこにヴァグドーが腕まくりをして、やる気になっているのを勇者アクナルスが制止した。
「…も…?」
勇者アドーレが疑問に思っているけど、読者の皆さんには、もうおわかりだろうか。 この〈地球神アクナディオス〉には、あの無敵の特殊能力の吸収攻撃があることに。
既に何度も使用しているので、〈地球神アクナディオス〉=特殊能力の吸収攻撃が定着している。
この無敵の特殊能力の吸収攻撃に弱点はない。 基本的になんでも吸収してしまい、〈地球神アクナディオス〉のエネルギーに変換されてしまう。 人間がご飯を食べてエネルギーをつけていくのと同じ要領だ。
「では…失礼しますよ」
早速だが、勇者アクナルスが先行して、道路の先の人だかりがある所まで一足先に歩いていき、
「ちょっと邪魔するよ」
着くと勇者アクナルスが、その人たがりをかき分けて、目的地まで到着した。
「おぉ、勇者アクナルス様!」
「あっ、勇者様だ!」
「勇者様が来てくれたぞ!」
その人だかりの人々が、勇者アクナルスの姿を見ると、意外にも歓声が沸き上がっていて、かなり人気があるようだ。
「……ちぃっ!」
勇者アクナルスが目の前を見ると、大方の予想通りに、ガラの悪そうな格好の男たちが剣や槍などを持って、道路の真ん中に立ち塞がっていた。
「あぁ? なんだぁ?」
「…なんだテメエはぁ…?」
そのガラの悪そうな格好の男たちが一斉に、勇者アクナルスの方を睨み付けて言った。
「おや、この俺のことを知らない? なんだ…よそ者なのか…お前ら…」
勇者アクナルスが少し呆れた顔になって、この男たちの質問に答えていた。
「この俺が勇者アクナルスだ。 この街を仕切ってる者だが、お前らからの挨拶がまだなかったな?」
「…っ!?」
「…な、何ぃ…っ!?」
「…ゆ、勇者だとっ!?」
「あの勇者アクナルスだと、もしかして―――」
「ちなみに、この街に通行料や有料道路はないぜ。」
そのガラの悪そうな格好の男たちが、勇者アクナルスの "質問の答え" に、凄く驚愕していて動揺していた。
「あれぇ、お前ら…もしかして、アイツらの仲間なのか…? それなら話しが早いな。」
このガラの悪そうな格好の男たちの反応に、勇者アクナルスが「何か」を感じていた。
「…っ!?」
「ひぃいぃいぃーー……」
「うわあああぁーー……」
「た、助けてぇーー……」
驚いたガラの悪そうな格好の男たちが、慌てて踵を返し後ろを振り向いて走り出した。
どうやら…このまま逃げるつもりらしい…。
『いただきまーす』
すると突然、勇者アクナルスの目の前に、大きな黒い人影が複数体出現していて、その黒い身体で、逃げようとしているガラの悪そうな格好の男たちを全員吸収していった。 (※勿論、普通の人間には見えない)
「「!!?」」
その様子を見ていたヴァグドーと勇者アドーレの二人が、今度は凄く驚愕していた。
「…本当に吸収しおったわ…」
「ヴァグドーさん、これは…」
ススゥゥ~~~~…
やがて、ガラの悪そうな格好の男たちの姿が、全員消失してしまった。
周りにいた人だかりの人々が、また凄い歓声が沸き上がる中で、ヴァグドーにはかなり不安と恐怖を感じていた。
こいつは驚いたわい! まさか本当に吸収してしまうとは…。 あのような攻撃方法では、対抗手段がよく解らん…。 全く弱点が見当たらないわい!
すると勇者アドーレが、ヴァグドーにそっと近寄り、小声で話しかけてきた。
「ヴァグドーさん、あれは…」
「ふむ、これは恐ろしい能力じゃな」
「はい、あれではとても……」
「…危険じゃな、あれが神の力か…」
改めてヴァグドーが、あの〈地球神アクナディオス〉を相手に、畏怖と脅威を覚えることになった。
地球神の真の実力はまだまだこれからなのである。
だからせめて敵にならないことを祈るのみ。




