135、三つ巴戦:1
●【No.135】●
―デュラルリダス王国―
この王国の街中に、物々しい姿の一団が歩いている。 その先頭を妄唇将軍と言う、武装した臨王国の高将軍が歩いており、その後ろを数人の武装した臨軍の兵士が、高将軍の後をついていくように道路を歩いていく。
その妄唇将軍が歩きながら、部下の臨軍の兵士と話し合っている。
「ふーむ、では勇者アドーレ様たちは、まだこの王国に到着していないのだな…?」
「はい、斥候からの報告では、『エルフの森里』と言う "幻の森" で、勇者様たちの姿を見かけたそうですが…。」
「ふーむ、ならば…もう少し時間がかかるようだな…。 それでも、女王様のお誕生日パーティーの会場には、まだ間に合うのか…?」
「はい、おそらく大丈夫だと思いますよ。 まだ日数がありますから、まだ間に合うと思いますけど…。」
「ふーむ、そうか。 まぁ…いい。 とにかく勇者アドーレ様たちが、この王国に近づいてきたら、すぐに報告しろ。」
「はい、判りました。」
「ここからすぐに急いで、我々がお出迎えしなければならないんだからな。 これも非常に重要な任務だからな。」
「はい、判りました。」
などと話しながら、その物々しい姿の一団が、先を急いで歩いていく。
一方では、勇者アクナルスがデュラルリダス王国の大きな街の外にある、大きな岩石の頂上に立っていて、視界に見える周囲を警戒している。
「どうやら何者かが、急接近で近づいて来ている。」
そこに〈地球神アクナディオス〉が勇者アクナルスに話しかけてきた。
『…何者かが…? ほう、わかるのか? キミにそんな能力があったのか…?』
「ふふふ、勇者の特権で邪悪な気配を感じることができるんだよ。 なかなか便利な能力なんだけどね…。」
『おお、そうか。 キミは勇者なのだったな。 すっかり忘れていたよ。』
「そう、俺は一応…勇者なんだよ。 だがそんなことは、今はどうでもいいことだよ。」
『ああ、確かに何者かが、物凄い速度で接近している。 二人ほどだが……』
「…魔族か…?」
『ああ、その通りだ。 しかも爵位持ちの上位の魔族だな。 それと…あともうひとつ…気になることがある。』
「…気になること…?」
『ああ、この気配は……まさか……アイツ…なのか……?』
「…アイツ…?」
『…まぁ…いい。 取り敢えずは、その魔族の二人は要警戒だな。』
「ああ、その通りだな。 勇者である限り、魔族だけは見過ごせないからな。」
『…あぁ…そうだな…』
「………」
この勇者アクナルスが両目を閉じて、腕組みをして、大きな岩石の頂上で仁王立ちをしながら、待ち構えている。
もう一方では、上位魔族でAクラスの爵位を持つ、オブリルスとクノシルスの二人が高速飛行で、デュラルリダス王国へ急行している。
その魔族の二人が高速飛行で急行しながら、まるで言い争うように話し合っている。
「もうすぐデュラルリダス王国に到着するはずなんだが…。」
「ああ、そのようだが…? 何か問題でもあるのか…?」
「何か…感じないか? この異様な気配を感じるんだが…。」
「えっ、まさか大魔王様がこちらに来ているのか…?」
「いや、どうやら違うようだが、もしかしたら大魔王様に匹敵する者かもしれない。」
「ちっ、ならば気を引き締めて行かなければいけないよな?」
「ああ、そうだな」
「よーし、行くぞ!」
そう言いながら、この魔族の二人がデュラルリダス王国に急接近していて、もう既に近くまで来ていた。
そこに単身の勇者アクナルスが、王国の街の付近にある、大きな岩石の頂上で仁王立ちをして、その魔族の二人が来るのを待っていたのだが―――
「ふふふ、もう近いな。 もうすぐそこまで来ている。」
『もう一方の気配も、こちらに向かって接近している。』
「それならば、三つ巴戦になるかもな。」
『では、こちらも行こうか』
「ああ、行くぞ!」
そう言うと、勇者アクナルスが突然…宙に浮かび上がり、そのままオブリルスとクノシルスの魔族の二人が飛んでいる方向へ飛び出していった。
さらにもう一方では、とある場所に謎の白い人物たちが上空を飛んでいて、とある目的地に向かって急いでいた。
「……ん?」
その者が何かに気がついた。
「……動いたのか? それならば、女王様のお誕生日パーティーに向けて、こちら側も動くとするかな…。」
「ああ、我々もパーティーの会場に出遅れる訳にはいかないからな…。」
「よーし、行くぞ!」
その謎の白い人物たちも、そのままとある目的地へ急行していたのだが―――
この謎の白い人物たちが〈地球神アクナディオス〉の言っていた "気になる気配" なのかは、まだ不明なのだが、以前『エルフの森里』の村に現れた、あの連中に少し似ているようだが…。
それぞれ三者には、思考・意志・目的などが違うので、これから一体どうなっていくのか、非常に気になる。




