134、悪魔神の予言書
サブタイトルがなんか不気味!!
●【No.134】●
―『邪天侯城』―
南方向に飛び去っていった神光聖者エリュニウスが、空高く…はるか上空の雲の上にある、大きなお城の『邪天侯城』に到着していた。
「………」
早速だが、神光聖者エリュニウスは城内に入り、そこから一番奥にある『玉座の間』の大きな扉を開けると、そこは床には紅い絨毯が敷かれていて天井には大型の照明がある広い空間であり、さらに一番奥には石の玉座があるのだが…。
「………」
「おかえり、エリュニウス」
その石の玉座に座るのは、人間男性の平均身長ぐらいの真紅色の髪に橙色の瞳で、純白の翼に褐色のとても透き通った美肌をした男が服を着ていない全裸のままでいる。 この男こそ…『右刎王アレクェート』…人型の化物であり、現在でも悪魔神の部下にあたる。
「おい、お前のお友達のホワイトドラゴンが人間に倒されたようだぞ。」
そう言いながら、神光聖者エリュニウスが『右刎王アレクェート』の目の前まで歩いて近づく。
「お友達…? 冗談言うなよ。 あんな野蛮なヤツ、ボクは知らないよ。 興味もない…。」
そう言いながら、『右刎王アレクェート』が神光聖者エリュニウスの持つ【失望帝の剣】を眺めている。
「遂に……手に入れたのかい? 【失望帝の剣】を……」
「…ああ…」
「へぇ~ 本当に彼らから譲ってもらったのかい? ホント…スゴいモノだな…。」
「ああ、かなりの代償を支払ったがな…。」
「でも……そこまでしても、手に入れたかった…。」
「ああ、その通りだな。」
「ふふふ、このボクから言わせれば、どちらも代償を支払ったように見えるけどね…。」
「だけど……それは仕方ないな。 これも伝説の皇剣を手に入れる為だし、これでふたつ目だからな…。」
「…そうかい…」
「さて、また…あの『瞑想の間』に入るけど、あとの事は頼んだぞ。」
「ああ、わかったよ」
そう言うと、神光聖者エリュニウスが踵を返して振り返り、そのまま歩いて『玉座の間』を出ていった。
―-―・●・―-―
現在…ヴァグドーたち一行は、『エルフの森里』から "幻の森" を抜け出て、再び大型の馬車に乗り込み、そのまま今度の目的地である、デュラルリダス王国に向けて出発していた。
一方では、大魔王のもとから隙をついて抜け出した、上位魔族でAクラスの爵位を持つ、オブリルスとクノシルスの二人も、高速飛行でデュラルリダス王国へ急行していた。
その二人が高速飛行で急行しながら、まるで言い争うように話し合っている。
「……」
「おい、聞いたか? あの話」
「ああ、聞いた。 伝説の皇剣【失望帝の剣】がヴァグドーたち人間から神光聖者エリュニウスに移った…話だろ…?」
「ああ、そうだ。 だけど…どういうことなのだ…? 悪魔神の予言書によれば、本来ならば、伝説の皇剣【失望帝の剣】が装備できるのは、勇者アクナルスだとか言う人間だけだと聞いているけど…。 だがしかし―――」
「ああ、その肝心の勇者アクナルスではなく、天使族の神光聖者エリュニウスだけが装備できることになっているようだが…。 まさか…悪魔神の予言書が間違えているのか…?」
「いや、そんなバカなっ!? あり得ないぞ、そんなことは絶対に…っ!?」
「…くっ…」
―悪魔神の予言書―
かの悪魔神トニトリエクルスが暇潰しに書き記した、とされる入手困難で超貴重な黒い書物であり、オブリルスとクノシルスの二人が偶然に手に入れた。
その内容の全容の詳細な解明はまだできていないようだが、どうやら自分の身に起こる未来を予言したと思われる。
その中でも、非常におかしな一文が書かれていた。
それが―――
『我、四天封皇剣により、四肢を四散され、勇者の龍の皇剣により、頭を貫かれて再び封印されるだろう』……と、
だから本来ならば―――
※伝説の皇剣 『悪魔神四天封皇剣』
◎『大魔王エリュドルス』→【終焉殺の剣】
◎『神光聖者エリュニウス』→【絶望神の剣】
◎『勇者アクナルス』→【失望帝の剣】
◎『ヴァグドー』→【消滅罪の剣】
※伝説の皇剣 (龍の皇剣)
◎『勇者アドーレ』→【磨羯龍の剣】
となる筈なのだが、神光聖者エリュニウスがふたつの伝説の皇剣を手に入れた事により、悪魔神の予言書と現実に相違点が発生していた。
それは確かに微妙で小さな相違点なのだが、今までにヴァグドーたちの存在や、アドーレやアクナルスが勇者になった経緯や、伝説の皇剣との出会いなどが、適当に書き記されていて、ここまで全て当てているのに、ここに来て初めてハズレたのか…?
(※ちなみに、〈地球神アクナディオス〉の事については、一切書かれていない。)
「ま、まさか…これからとんでもなく恐ろしい事が起こるのかも…っ!?」
「…むぅ…」
そう、この二人はまだ知らないのである。
その勇者アクナルスには、〈地球神アクナディオス〉という憑神が憑いていることを―――
悪魔神め!! 暇潰しにこんな不気味な書物を書いていたのか!!




