120、エルフの災厄:1
●【No.120】●
この世界の北側にある魔族の国の大魔王城にて
その大魔王城の城内にある『玉座の間』の一番奥にある玉座に座る大魔王エリュドルス。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ」
その大魔王が体力低下と疲労困憊で、身体は既にボロボロになり息を切らしている。
「はぁー、くっ、余が…この余が…何故勝てない…? やはりあの悪魔神に勝利するには、勇者の力が必要なのか…?」
大魔王がゆっくりと深呼吸しながら、冷静になっていく。
「マズイな! 勇者たちやこちらの準備は、まだ出来ていないのに…くっ、アヤツの復活が先か、こちらの方が先か…!」
大魔王エリュドルスが沈黙しており、そのまま…少し考え込んでしまった…。
それとほぼ同時刻では―――
―『邪天侯城』―
この世界の南側の上空にある、その『邪天侯城』の城内にある『瞑想の間』では、神光聖者エリュニウスが体力低下や疲労困憊で、身体は既にボロボロになり息を切らしている。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ」
その神光聖者が四つん這いの状態で、ゆっくりと深呼吸しながら、冷静になっていく。
「くそ、なんと言うことなのか! この私が相手でも勝てないのか…? だが…なんとかしなければならない! もう神々が創り出す世界が滅亡されるのを、ただ黙って見ている、無力な私ではない!」
神光聖者エリュニウスが沈黙しており、そのまま…少し考え込んでしまった…。
それとほぼ同時刻では―――
さらに『邪天侯城』の城内にある『玉座の間』の一番奥にある石の玉座に座る、全裸の『右刎王アレクェート』が両目を閉じて、少し考え込みながら、他には誰もいない『玉座の間』の中で、声を出して独り言を言っている。
「…ちっ、どうやら悪魔神……いや……あのバケモノの力が戻りつつあるようだな…。 あの滅亡した世界とこの世界は、意外と近いから……アヤツが復活したら、このまま真っ先に侵攻しそうだな…。」
それから右刎王アレクェートが急に無言になり、少しの間を置いてから、再び独り言を言い始めている。
「……ふーう、このアレクェートも、もしかしたら…覚悟を決めねばいけない…かな…?」
右刎王アレクェートが沈黙しており、そのまま…少し考え込んでしまった…。
それとほぼ同時刻では―――
この世界の南西方面にあるとされている、幻の森…『エルフの森里』では、今…非常に危険な出来事が起きている。
『エルフの森里』とは、
非常に謎に包まれた、エルフたちが住むとされる幻の森であり、詳細はまだ不明。 また平和主義者のエルフたちは、基本的には争いを好まず、人間や魔族・魔物など、他の種族に敬意や好意などを持っておらず、ある程度は距離を置いている。
また…その幻の森とは、エルフと動植物が仲良く暮らしており、一般の人間や普通の魔族・ザコ魔物などが、簡単に出入りする事が出来ない…特殊な森であり、不用意・無防備に侵入したりすると迷ってしまい、まず無事に帰ってこれないところである。
その幻の森…『エルフの森里』では、現在…異常事態が起きていて、なんと大ピンチである。 平穏で平和に暮らしているエルフたちの『エルフの森里』に、突如として、謎のモンスター「白狼人鎧」が多数侵攻してきた。
「うわあーーーっ!!」
「きゃあーーーっ!!」
「ぐぅっ!!」
恐怖と動揺で、エルフたちが騒ぎ立てて逃げ惑う。
「はっはっはっ、まったく! たいしたことがないなぁー!」
「…ふん…弱いな…」
「まぁ…エルフなど、所詮はこんなものなのさ。」
戦うすべがないエルフたちに対して、多数の白狼人鎧があっという間に、あっさりと『エルフの森里』を制圧・占拠してしまった。
「…そんな…」
「ち、ちくしょう!!」
「白狼人鎧」とは、
人型の狼モンスターで毛の色は白色、瞳の色は橙色。
基本的に群れで行動して、人間が使用している白色で鉄製の鎧・盾・剣・槍を装備しており、近距離戦闘がメインの強力なモンスターであり、レベルはだいたい60前後はある。
「うわあーーーっ!! もう駄目だぁーーーっ!!」
「うっ、うっ、うぅっ……」
それから絶望しているエルフたちの手足を縛り、一ヶ所に集めて自由を奪い監視をしている、多数の白狼人鎧の中から一人だけ、「紅狼公鎧」と呼ばれる凶悪な狼モンスターがいて話している。
「ふふふ、なかなか良いエルフどもが揃っているな。 これなら高く売れそうだな。」
「紅狼公鎧」とは、
人型の狼モンスターで毛の色は紅色、瞳の色は黄色。
白狼人鎧たちを束ねるリーダー格で、人間が使用している紅色で鋼鉄製の鎧・盾・剣・槍を装備しており、近距離戦闘がメインの凶悪なモンスターであり、レベルはだいたい80前後はある。
その紅狼公鎧が部下の白狼人鎧たちに話しかけている。
「親分、どうですか?」
「ふふふ、やっぱり…ここのエルフは質がいいな。 特に女は美人揃いじゃないか。」
「はい、やっと見つけましたからね。」
「ふふふ、では男は労働者として、女は欲しがる商売人に高値で売る。 美少女は……ワシのところに連れてこい。」
「はい、判りました。」
「……ん!?」
すると背後に違和感を感じて、不審に思った紅狼公鎧が、後ろを振り向いて見ると―――
「なんだ…? キサマは…?」
そこには、不気味で不思議な漆黒の人型の謎の物体が、宙に浮いていて話しかけてきた。
『…コ…ロ…ス…』
「っ!!?」
それを聞いた、白狼人鎧たちの背筋がゾォーッと凍る。
ヤバいぞ!! エルフが襲われる!?
―――って、何か変なのが出てきたぞ!?




