114、試練への挑戦:1
さあ、ここからが本当の……見せ場だ!
●【No.114】●
ある日の朝のこと、『ワールドエルフ天蝎』は暗闇のある場所で、腕組みをしながら立っている。
「さあ、今日こそ、見られるかもしれないぞ! その…伝説の真の勇者が……!」
―アンリールノエロン―
この大都市の中央にある『ノエロン城』のお城には、今日も伝説の皇剣【磨羯龍の剣】を手に入れる為に、"試練" に挑戦している冒険者たちが続々と訪れており、それで失敗して残念そうに帰っていく。 それが何度も繰り返されている。
現在…ヴァグドーたち一行は、『ノエロン城』の城内にある客室で、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】入手の為の "試練" の挑戦の順番を待っている。 勿論だが、今回の挑戦者は勇者アドーレである。
客室の室内には、ヴァグドーたち一行が椅子やソファーなどに座って待っている。
「……」
ヴァグドーは無言で両目を閉じて静かに腕組みをしながら座っている。
「うーん、なんだか、とてもドキドキするわね!」
「はい、なんだか、私もとてもドキドキしてきました。」
「んー、なんだかぁー、私もとっても楽しみぃ~♪」
「ええ、ですが挑戦するのは、アドーレ様だけですけどね。」
「皆さん、とても緊張しているようですけど、ボクも所詮は挑戦者の一人ですよ。」
「なあ、その "試練" をクリアすれば、その伝説の皇剣【磨羯龍の剣】が手に入るのか?」
「はい、そのようですね。 それで本当の真の勇者として、認められるらしいですね。」
「その勇者と言うのは、認定されないと駄目なのか?」
「さあ、それはどうですかね? そこら辺はボクにも、よく解りませんね。」
「まあ、勇者なんてのは、悪魔神を打倒できる者だけが、本当の真の勇者で一人だけなんだろ? その "剣" も、そのひとつの手段なんだろ?」
「……そうですよね」
「師匠はどう思いますか?」
「…来たかの…」
「……!?」
「…は!?」
「…え!?」
するとそこに、紫色のメイド服を着ている女性が、ヴァグドーたち一行のいる客室まで、やって来て―――
コンコンコン!
「……失礼します。」
ガチャッ!
部屋のドアを開ける音がして、紫色のメイド服を着ている女性が室内に入ってきた。
「皆さん、お待たせしました。 アドーレ様の順番になりましたので、私のあとについて来てください。」
「ふむ、わかった」
「はーい、了解~♪」
「はい、判りました。」
するとそこで、ヴァグドーたち一行が立ち上がって―――
「こちらです。」
ヴァグドーたち一行が客室から出てきて、案内役のメイド服の女性のあとをついて歩いていると、床に赤い絨毯を敷いた広く長い廊下を歩いていく。
「ほーう、なるほどのう。」
「これはまたなかなか……」
「確かに広い廊下ですね。」
その廊下の突き当たりにある、大きな扉をギギィーッと開けると、薄暗く広い空間に出ていて、その中央には地下に続く階段がある。
「こちらです。」
「ふむ、もしかして、この下へ行くのかの?」
「はい、どうやら…そのようですね。」
「私はここまでです。 それでは皆さん、どうかお気をつけてください。 アドーレ様も頑張ってください。」
どうやら、案内役のメイド服の女性は、ここまでで見送るようだな。
「おう」「ええ」「はい」
ヴァグドーたち一行は、そのまま階段を降りていき、地下の薄暗い廊下を突き当たりまで歩いていき、大きな扉まで辿り着いていて、そこをギギィーッと開けると、また暗闇で凄く広い空間に到着している。
「うわっ、真っ暗だわ!?」
「暗くて何も見えません。」
「へぇー、なるほどねぇー」
「でも…なんだか、とても広そうなところ……」
「……おっ、あれか?」
「……」
その広い空間の中央には、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】が立て掛けて置いてあり、その周囲には、強力な魔法結界が張られて護られている。
「おぉっ、お前さんは…!?」
するとそこで、ヴァグドーがこの広い空間の壁側に、誰か立っているのに気がついた。
「やあ、俺だよ。 今日の "試練" は見学させてもらうよ。 ヴァグドーよ」
「ほーう、そうか」
その人物とは、あの『ワールドエルフ天蝎』であり、今回の勇者アドーレの "試練" の挑戦を見学するつもりらしい。
「それでは、いきますか。」
早速だが、勇者アドーレがこの広い空間の中央にある、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】の方に向かって歩いている。
「……」
それから、勇者アドーレは右手を伸ばして、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】の柄の部分を、普通にガシッと掴んでおり、その途中で発生している紫色の稲妻にも、全く動じることがなかった。 そこから、勇者アドーレは伝説の皇剣【磨羯龍の剣】を、そのまま軽々と普通に持ち上げている。
するとそこで、突如として、巨大な龍『磨羯龍カラミティノエロン』の両目が開いて、瞳がピカッと光った。
おお、ここで最強で無敵のドラゴンが遂に目を覚ます!?




