106、超絶★驚愕の対峙!?
※なんと!? 遂にあり得ない事が主人公の身に起きる!?
●【No.106】●
現在、ギドレファナス共和国と大都市アンリールノエロンの丁度、中間地点で周囲に森がある平地に、ヴァグドーたち一行がいて、複数個の小屋を木で造っており、そこでしばらくの間は宿泊・滞在をしている。
そんな、ある日の夜のこと
一人…夜遅くまで、外で焚き火をしていたヴァグドーだが、周囲を警戒して奇妙な気配に気がついた。 その奇妙な気配はふたつ…いや…みっつはあるかな? その中のひとつが、とても強力な実力を持つ気配であり、なかなか良い気配でもあるけど…。
ヴァグドーがその気配がする者たちに気づかれない様にして、物音を立てずに自分の気配を消しており、静かに森の中に入っていき、その気配がする者たちの背後に回っている。
そこでヴァグドーは、二人の後ろ姿が目に入り、片方が女性の姿でもう片方が男性の姿であり、どちらも人間ではない事がすぐにわかった。 さらに彼らのすぐ背後に、先程感じた凄く強力な実力でなかなか良い気配が、容姿こそは暗闇でよく見えないけど、確かにそこに居るようだが…。
"そいつは後回しだな"
ほーう、魔族なのか!? 以前に出会った事がある…ベドゼルスやバロガルスによく似ておるのう。 男の方は褐色の肌…オブリルスとか言う上位魔族なのか!? 女の方はテミラルスの姉のデイラルスなのか!? なるほどのう、よく似ておるのう、さすがは姉妹じゃな。
なんとヴァグドーたちは、既にレイドルノやテミラルスたちから、ある程度の魔族についての情報を得ている。
そこでヴァグドーは、オブリルスとデイラルスの二人の様子をしばらく見ていると、最初にデイラルスの方が、ヴァグドーの存在に気づき始めている。
「ねぇ、そんなあなたに警告するわ。 それはやめなさい。 あなた…すぐに殺されるわよ?」
「…なんだと…!?」
「あら~? まだ気がつかないのかしらね? 私たちの背後には、既に "彼" がいることに…! 本当に情けないわね!」
「……っ!?」
するとそこでヴァグドーがニヤリと笑った。
「…何…なんだと…それは一体どういう事なのだっ!?」
「はぁ!? あなた…ホントにまだ気づかないの!? 本気なの…いや…正気なの!?」
「…??」
なんとイラつくデイラルスが、マヌケなオブリルスのあまりにも鈍感さに、思わず大声で荒立ててしまっている。
するとそこでヴァグドーが小声で言った。
「ふふふ、仕方あるまい。 ワシの "隠気" を、そう容易くは見破れる訳がないからのう。」
(※ "隠気" とは、その存在の気配を "隠蔽" させる事で、ヴァグドーの十八番である)
「……っ!!?」
そして、遂にオブリルスとデイラルスの二人の目の前に、ヴァグドーが姿を見せて現れている。 (※先程までは背後にいたのに、いつの間にか…敵の前方に回っており、さすがの神出鬼没ぶりである)
「…??」
「う、そ、さっきまで後ろにいたはずなのに、いつの間にか、前の方に…っ!?」
オブリルスの方は、まだ状況を理解しておらず、デイラルスの方は、ヴァグドーの行動に物凄く驚愕している。
「ふふふ、さすがのデイラルスも少しは驚いているようじゃが、驚くのはまだ早いのう。」
するとなんと、そこで突如として―――
「おう、その通りだな。」
…と、背後から…この聞き覚えのある声に、オブリルスとデイラルスの二人が、思わず恐怖と驚愕で、身体をぶるぶると震わせており、そぉっとゆっくり後ろを振り向いて見ると―――
「…大魔王様…っ!!?」
漆黒のフードとローブとマントで身体を覆い隠し、伝説の皇剣【終焉殺の剣】を帯刀している人間姿の男で、魔族の国の王にして、魔族・魔物を束ねる王である、『大魔王エリュドルス』が、遂にその姿を現して立っている。
顔は漆黒のフードに隠れていてよく見えず、伝説の皇剣【終焉殺の剣】は、刀身も鍔も柄の部分も全部漆黒で、妖しく光り輝いている。
ここで遂に、ヴァグドーと大魔王エリュドルスが、お互いに顔を合わせていて、初めて対峙している。
「どうも、お初にお目にかかるヴァグドーよ。 余が大魔王エリュドルスだ。」
「ふふふ、どうも…はじめましてじゃな。」
お互いに少し会話を交わしているのだが、その一言一言に緊張が走る。 そこで今度は、大魔王エリュドルスがオブリルスに話しかけてきた。
「ところでオブリルスよ。 貴様はなんでこんな所にいるのだっ!?」
「えぇ…いや…あの…その…」
「貴様は本来ならば、悪魔神の侵攻に備える為に、監視をしている筈ではないのかっ!?」
「…うぅっ…」
明らかに動揺しているオブリルスに、大魔王エリュドルスがさらに厳しく問い詰める。
「やれやれ…ただ監視するだけの仕事も満足にできないとは…貴様は本当に余に忠誠を誓っておるのかっ!?」
「は、はい…勿論です…!」
「では、なんでここにいるのか、質問に答えよ。」
「は、はい…それは…その…」
「ふーん、どうせ仇討ちにでもきているのだろう? オブリルスよ、貴様はベドゼルスやバロガルス共とは、とても仲が良かったからな。」
「……」
「だがな、余には全く関係のない話しだな。 そもそも魔族の世界は "弱肉強食の世界" …強い者…勝利した者だけが生き残る世界なのだよ。」
「…ぐぅ…」
「そして、余に逆らう愚かな部下が、一体どういう末路を辿るかも、当然判っておるなぁ?」
「…ひぃ…」
「さぁて、余に逆らう愚か者に、罰を与えてやろう! お仕置きタイムだぁっ!!」
強襲!!
怒涛の大魔王エリュドルスが、困惑する部下の上位魔族オブリルスに、襲い掛かろうとしている。
※本来ならば、最後の敵である大魔王が早々に、主人公の目の前に登場するのか!? (まぁ…勇者ではないけど)




