103、挑戦者たち:2
●【No.103】●
暗黒で何もない空間の某所
そこが一体何処にあるのか、まだ不明なのだが、その暗黒で広大な空間に、またしても誰かが侵入してきているようだ。
今回の挑戦者は、冒険者の男女五人組であり、彼らの目的も中央部にいる世界最強級の龍である『磨羯龍カラミティノエロン』が眠る前方にある、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】の入手である。 その『磨羯龍カラミティノエロン』が、相変わらず気持ち良さそうに眠っている。
新たにやって来ていた、その五人組がこの暗闇の中で、遂に伝説の皇剣【磨羯龍の剣】を見つけると、不安そうに小声で話し合っている。
「あれが…伝説の皇剣なのか? 確かに面白い形の剣だな?」
「あれを手にした者が、世界最強の勇者になれると言う事は、本当なのか?」
「ああ、噂ではな。」
「だけど、あれを手に入れるのに、どれだけの "試練" をクリアしなければいけないのか……全く解らないけどな?」
「それにしても、上にいた…あのメイドさんたちは、一体何だったのかしらねぇ?」
「さぁ…一体何だったのかしらねぇ? 私にも全く理解できないわねぇ?」
「まぁ…そんなことはどうでもいいから、さっさと伝説の皇剣を手に入れようぜ!」
「ああ、そうだな。 よし行こうぜ!」
そう言うと、冒険者の男女五人組がそぉーっと忍び足で歩いて、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】がある場所まで近づいてきたけど、強力な魔法結界に護られている為に、これ以上は手出しできない。
「ちっ! まったく強力な魔法結界だな! これは電撃系の魔法結界なのだな!」
「なんとかなるかしらねぇ?」
「これは挑戦者の目標レベルが、確かに50以上だけど、俺たちはしっかりとギルド冒険商で、確認しているから大丈夫なはずだぞ。」
「それじゃあ早速だけど、この魔法結界をすぐに解除しないとね。 この電撃系の魔法は無効には出来ないからね。」
「それなら一体どうすればいいのだ? これだと剣に触ることさえ出来ないぞ?」
「魔法結界の中に手を入れる時に、その電撃を一時的に遮断することができるから、その隙に剣を取り出せれば、入手できるはずよ。」
「よし、それでいこう。 早速だけど、準備をしてくれ。 頼んだぞ。」
「ええ、わかったわ。」
「うん、任せてよ。」
すると五人組の内の女性二人が、なにやら不思議な方法で、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】を護る魔法結界から、電撃系の魔法を遮断していて、一時的に伝説の皇剣【磨羯龍の剣】から発生している、紫色の稲妻が消失している。
その事により、一時的ではあるけど、強力な魔法結界が機能せずに、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】が、誰にでも触れられる状態になっている。
「よし、これでようやく俺たちが、伝説の皇剣を手に入れられるぞ!」
「ああ、そのようだな。」
「いいから早くしてよ!」
そう言うと、五人組の内の一人が、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】の柄の部分を掴んで、持とうとするのだが―――
「な、なんだこれは…!? お、重くて動かない…!?」
「…なに…?」
「な、なんだと…!? バカな、俺が持つぞ!! おい、貸せよ!!」
そう言うと、五人組の内のもう一人が、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】の柄の部分を掴んで、持とうとするのだが―――
「くっ、なんだこの剣は…スゴく重いぞ! まったく動かないぞ…コレ!」
「ああ、まったくどうなっているのだ!? 剣なのに尋常ではない重さだぞ!?」
「え…? 嘘でしょぉ?」
「ちっ、やっぱり駄目だったのか…この剣を持ち上げるには、レベル70以上が必要だと言う噂は本当だったのか…?」
「そ、そんなバカな…? この電撃系の魔法結界を止めるのに、レベル50以上…剣を持ち上げるのに、レベル70以上が必要だと言うのか…?」
「ああ、その通りだよ。」
すると突如として、何処からともなく、不思議な声が聞こえてきた。
『おお、挑戦者たちよ。 伝説の皇剣【磨羯龍の剣】を所有したければ、最低でもレベル70以上がなければ、その剣の重さは消えないぞ。 その剣が欲しければ、もう少し頑張ることだな。』
「くそっ、やっぱりそうキタのかぁ!?」
「ちくしょうーっ! この剣を手に入れるのに、どれだけのレベルが必要なのだぁ!?」
「いや、マジかよ…?」
なんと今度は、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】自体が、非常に重くなった状態になっており、それを持ち上げる為には、"レベル70以上の者" が必要だと要求してきたのである。
今回も『磨羯龍カラミティノエロン』の出番はなく、気持ち良さそうに眠り続けている。
果たして、一体誰が伝説の皇剣を手に入れるのか?




