102、挑戦者たち:1
突然だが、別の場面に変わり、主人公たちは登場しない。
●【No.102】●
暗黒で何もない空間の某所
ここは一体何処にあるのか…まだ不明なのだが、この暗黒で広大な空間の中央部には、巨大で全身が深紫色の硬い鱗に覆われて、頭の額には純白の一本角と瞳が橙色に輝いた龍が身体を丸くして、うずくまり…眼を閉じて…まるで眠っているような状態でいる。
その龍の名前は、『磨羯龍カラミティノエロン』と言う。
その『磨羯龍カラミティノエロン』の眠る前方には、四方を強力な魔法結界で護られている、刀身が橙色で柄の部分が深紫色になった、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】が立て掛けて置かれている。
さらに『磨羯龍カラミティノエロン』と言う名前の龍は、レベルや攻撃力や守備力がとても高く、攻撃方法も凄く強力なモノばかりであり、まず普通の人間では、とても勝ち目がない…世界最強級の龍である。
だけど…現在では、この暗黒で広大な空間全体に、不思議な力が立ち込めていて、静寂でおとなしくしている。
そこに何処からか、冒険者の男女四人組が、この暗黒で広大な空間に侵入してきている。 四人組が恐る恐る忍び足で歩いていて、不安そうに小声で話し合っている。
「ねぇ、この部屋はかなり暗いわねぇ? ここで本当に大丈夫なの?」
「ああ、ここには…伝説の皇剣が置いてある。 その剣を手に入れたら、世界最強になれるはずなんだよ。」
「だけど…大きなドラゴンがその剣を守護していると聞いているけど…?」
「ああ、わかっている。 だが…そのドラゴンは普段から眠っていて、物音さえ立てなければ起きないらしい。」
「そ、そうなの…?」
さらに四人組が伝説の皇剣【磨羯龍の剣】が置いてある場所まで、忍び足で静かに近づいていき、無事にそこに到着した。
「おお! これか!」
「こ、これが…伝説の皇剣なのか…? スゲエなぁ!」
伝説の皇剣を目の前にして、四人組が思わず生ツバをゴクリと飲み込んでいる。
「いよいよだな。 苦労してやっと見つけた伝説の皇剣が目の前にある。」
「ああ、これで俺たちは最強の勇者になれるのだな?」
「ええ、私たちが勇者になるのね。 本当に苦労したわね。」
「さぁー、さっさと伝説の皇剣を手に入れてしまおう!」
そう言うと、四人組の内の一人が、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】を手に入れようと、手を伸ばしていた……のだが―――
バチバチバチ…!
「っっ!!?」
突如として、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】から紫色の稲妻が発生してきて、まるで人間の入手から守護するかの様に、人間の手を拒絶した。
それを見ていた、冒険者の男女四人組が凄く動揺している。
「くっ! 突然…電撃を喰らったみたいだ!」
「おい、大丈夫なのか!?」
「ああ、なんとかな。」
「でもこれが伝承や文献にあった "試練" なのかしらねぇ?」
「くっ、確か…伝承や文献では、"封印を解く" とあったけど…これの事なのか?」
「おい、どうする?」
「確か…この電撃を無効にする魔法があったよな?」
「ええ、攻撃・付与する魔法の無効・排除できる魔法なら、もう習得済みよ。」
「よし、頼むぞ!」
そう言うと、四人組の内の一人が、何かの呪文を唱えていて、魔法を発動している……のだが―――
バチバチバチ…!
「きゃぁっ!」
またしても、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】から紫色の稲妻が発生してきて、やっぱり人間の魔法から守護するかの様に、人間の力を拒絶した。
それを見ていた、冒険者の男女四人組が凄く驚愕している。
「だ、駄目だわ…この電撃は私の実力では…無くすことが出来ないの…!?」
「ちっ! なんと言うことなのか! ここまで来て…おきながら…!?」
「俺たちには…手に入らない…とでも言うのか!?」
「うおおぉ! このままでは…俺たちは勇者になれないのか!? まだ諦める訳には―――」
すると突如として、何処からともなく、不思議な声が聞こえてきた。
『 "試練" を受けにきた人間たちよ。 その剣を手に入れたければ、せめて…レベル50を超えてからこい。 現在の人間のレベルは、まだ45程度なので、その資格がない。』
「……えぇっ!? 何っ!?」
「なんだと…!? レベル50以上だと…!?」
ここまでよく辿り着いた、冒険者の男女四人組なのだが、伝説の皇剣【磨羯龍の剣】を入手する為の "試練" を受けられる資格の最低条件として、"レベル50以上の者" …だと言う事までは知らなかったようだ。
※冒険者の男女四人組が、あの暗黒で広大な空間を、何らかの方法で、自分たちの周囲にだけ明るくしている。




