98、最期の手向け
※2017年12月、今年最後の投稿・連載です。
●【No.098】●
―ギドレファナス王国―
国内の某所にある無人の建物(家屋)の中には、ヴァグドーたち一行やレイドルノとダルラルダの二人がいて、なにやら話し合っている。
どうやらヴァグドーや勇者アドーレたち11人は、そのまま次の国に行くつもりなのだが、レイドルノとダルラルダの二人は、このままこの国に残って立て直すつもりらしいのだ。
ほほーう、なかなか殊勝な心掛けじゃのう。 見事な志と…取り敢えずは言っておこうかのう。 ほっほっほー、まぁー、せいぜい頑張るんじゃな。
その後の数日間は、カグツチやロンギルスやエクリバたちの女性陣は、近くの街まで歩いていき、それぞれの店から食料や飲料水や日用品などの必要最低限の量の物だけを購入してから、ヴァグドーたち一行は再び、国内の中央部にある旧王城廃墟跡地まで戻っていき、ここで数日間の宿泊をするつもりであり、ここでもレイドルノとダルラルダの二人は、付き添いで一緒に来ている。
そんなある日の夜のコト
ワシらは旧王城廃墟跡地から少し外に出て、焚き火をしながら夕食の支度をしておると、そこにロゼッダンと言う羊顔の男が、エウノミアとエイレネの姉妹を引き連れて、ワシらの所までやって来おったのじゃ。
「……!」
(ん…ロゼッダン…か…!)
「……?」
(あら、ロゼッダンなの…?)
レイドルノとダルラルダの二人は、早々にそやつらのコトに気がついておった。
ワシは何気にそやつらに話しかけたのじゃ。
「…お前さんたちは…?」
「はい、私の名前はロゼッダンと申します。 ヴァグドー様」
「はい、私の名前はエウノミアと言います。 ヴァグドー様」
「はい、私の名前はエイレネと言います。 ヴァグドー様」
そう言いながらも、エウノミアとエイレネの姉妹は、ヴァグドーの顔を見た途端、こう思っている。
(スゴいわ! お顔が先代国王様に本当にそっくりだわ!)……と。
「ほーう、それで…ワシらに何か用事かのう?」
「はい、ヴァグドー様たちがまもなくこの国を発つと聞いて、彼女たちがぜひご挨拶したく、馳せ参じました。」
「そいつはご苦労様、ここで数日間…しばらく過ごしてから、新たに旅立つ予定じゃよ。」
「ところで…ヴァグドー様たちは何故、こんな色んな破片や瓦礫などで散らかっている、この廃墟を拠点・根城にしているのですか…?」
「ここは以前から…先代国王が居城としていた王城跡地なんじゃよ。 ここは森林が多くて木材や薪などには困らんし、しかも近くには川も流れておってな…水浴び場もあるし、なんとその近場に温泉もあって最適じゃよ。」
既にカグツチ、ロンギルス、エクリバ、ニーグルン姫、テミラルス、大魔女シャニル、ダルラルダの七人の巨乳美女と、ヴァグドーが一緒に…しかも全員全裸で水浴びをしていて、あとは温泉にも一緒に入って囲まれており、ヴァグドーはまさに "巨乳ハーレム" 状態だった。
一方の男性陣である、勇者アドーレやレイドルノたちは、当然なのだが…ヴァグドーや女性陣とは一緒に入っておらず、しかもいつ入ったのかも解らない程の隠密行動ぶりである。
「へ…へぇー、そうなのですか? ここには…温泉があるのですか?」
「……温泉…ねぇ……」
「それに…ここには、あの先代国王の墓があるので、最後にもう一度、墓参りするつもりなんじゃよ。」
「……っ!!?」
ロゼッダンとエウノミアとエイレネの三人が、ヴァグドーのこの発言に凄く驚愕している。
「おお、先代国王様のお墓が…!?」
「なに…!? 先代国王様のお墓ですか!? ここにあるのですか!?」
「まさか…本当にあるのですか!? ここにお墓が…!?」
「ああ、そうじゃよ。 確かにここには古い墓があるがのう。 なんなら…行くか? 今からでも案内するぞ!」
「えっ!? 本当ですか!?」
「それでは早速…行ってみましょうか? エウノミア!」
「はい! 姉さん!」
普通の者では、まず辿り着くことが出来ない拒む森林の迷い道、だが…選ばれし者のヴァグドーだけが…その大きな古い墓石のある場所がわかるのだ。 まるで導かれるようにして、やがて…そこに辿り着く。
先代国王の墓場に到着した。
最早…ヴァグドゥルスの魂は天に昇っていったのか、幽霊さえも現れない。
だけど…ロゼッダン、エウノミア、エイレネ、ダルラルダ、レイルドノたち…この国に住む者たちが、この墓場を目の前にした途端、誰もが無言で涙を流し…土下座をして、泣き崩れてしまい…黙祷している。
なるほど…どれだけ、先代国王と言う王の威厳・信頼・人徳・資質などの高いことがわかるようで、彼がまだ存命中だったなら…この国はもっと良くなっただろう。
すると…何処からともなく、ヴァグドーだけに男性の声が聞こえている。
『ふふふ、今回は残念だったな。 ヴァグドー殿』
(否、これからが本当の戦いなんじゃよ! ヴァグドゥルスよ)
『ふふふ、そうかい。 ならば…せめて天からそなたの健闘を祈ろうか。 ヴァグドー殿』
(おう、見ておけ! では…さらばじゃ! ヴァグドゥルスよ)
そして…そこで声が消えてしまい、聞こえなくなっていた。
※ダルラルダがヴァグドーたちと一緒に水浴びや温泉に入る時には、工夫して「真紅な瞳」の能力を遮断して、発動・使用できないようにしている。




