97、閑話休題
●【No.097】●
―『邪天侯城』―
そのお城の『玉座の間』の中では、石の玉座に座る全裸の『右刎王アレクェート』と、その目の前に立つ『神光聖者エリュニウス』の二人がいる。
一方の『神光聖者エリュニウス』の手には、あの伝説の皇剣【絶望神の剣】を持っている。
もう一方の『右刎王アレクェート』が『神光聖者エリュニウス』に話しかけてきた。
「遂に手に入れたのか? これでキミも伝説の皇剣の使い手の仲間入りだね。 まぁ取り敢えずは良かったね。」
「ふん、お前に言われてもいまいちピンとこないよな。 余計なお世話だよ。」
「ふふふ、そうかい。 それでこれから一体どうするつもりなんだい? エリュニウスよ」
「ああ、この姿になって、まだ日も浅い。 しばらくの間は、この城の『瞑想の間』にて、心身と体力の回復と調整をするつもりだよ。 この【絶望神の剣】も…しばらくの間は使用せずに、私の能力で剣の力の分析・解析をするつもりだよ。」
「やれやれ…相変わらず真面目だね。 まぁここは邪悪なる天空城…通常の移動手段では、勿論…来れないし、何重にも邪悪なる力の結界が張っている。 そう簡単には、誰も来れないだろうけどね。」
「ふん、だけど…もし万が一にも来る者がいたら、まずはお前がそいつの相手をしろよ!」
「ふふふ、勿論…判っているよ。 このアレクェートが最大限の "おもてなし" をして、そいつを出迎えてやるよ。」
「ああ、そうか。 では任せたぞ!」
そう言うと『神光聖者エリュニウス』は踵を返して振り返り、そのまま歩いて『玉座の間』を出ていった。
―-―・●・―-―
―ギドレファナス王国―
国内の北側にある王都にして、要塞山脈都市である『ギヤンマウンテン』の下の麓にある某所の無人の建物(家屋)には、ヴァグドーたち一行が数日間の予定で宿泊している。 さらにレイドルノとダルラルダの二人も様子を見に来ている。
ある日の夜
ヴァグドーたち全員が、一室に集合して話し合っている。
「それにしても残念だったな、ヴァグドー公よ。 ギドレアスを倒すことが出来なくてな。」
「はっはっはっ、構わん構わん、気にするな。 どうせ誰が倒しても "倒されれば" それでよいのじゃよ。」
「それにしても『左刎王ギドアロス』に『神光聖者エリュニウス』ですか。 どうやら悪魔神の関係者が、この世界に続々と登場しているようですね。」
「ロゼッダンの話しだと、その後…『左刎王ギドアロス』が『神光聖者エリュニウス』に倒されて、伝説の皇剣【絶望神の剣】に変貌して、それを『神光聖者エリュニウス』が手に入れて飛び去った…と言うことのようね。」
「…と言うことは、その『神光聖者エリュニウス』の目的が、どうやら…その【絶望神の剣】の入手のようですね。」
「なるほどのう、皆が目的を持って、様々な行動をしているようじゃな。 ワシもうかうかしていられんのう。」
「ですが、ヴァグドーさん。 ボクたちはそんなに慌てて急ぐ必要はありませんよね? ここは気楽に行きましょうか?」
「ふむ、そうじゃのう。」
「ですけど、勇者アドーレ。 多くの悪魔神の関係者が、この世界にこれだけ暗躍しているのであれば、あまり悠長なことは言っていられませんよね?」
皆の話しを聞きながら、テミラルスが考え込んでいる。
「………」
(むーう、そういえば…大魔王様はこれから…どう考えて…どう動くつもりなんだろうか?)
「はっはっはっ、ニーグルン姫は相変わらず心配性じゃのう。 そんなに慌てんでもよかろうて。 その内…なんとかなるじゃろうて。 ふむ、悪魔神め! 来るなら来いじゃ!」
「はぁー…そうですか。 ヴァグドー殿も相変わらずですよね。 でも…ヴァグドー殿がそう言うのであれば…。」
皆の話しを聞きながら、ルドルス将軍が考え込んでいる。
「………」
(むーう、これからの旅での…姫様の負担をなるべく軽くせねばならないのか?)
「ところで…ヴァグドー公は何故…王城に入城しなかったのか? そもそも…その為に来たのではないのか?」
「お前さんは少し勘違いしておるようじゃな。 ワシはそもそも国盗りに来た訳ではなく、強い奴と戦う為じゃよ。 そのお陰でギドレアスよりも "より強い奴" が現れたようだし、伝説の皇剣も手に入れたし、もう既に目的は達成しておる。 王城にはもう用はないわ!」
「ふーん、そお?」
「なるほどな、そういうことなのか。 結構…考えているんだな。 それならば…仕方ないな。 ぜひ皆に会わせたかったがな。」
「おいおい、ヴァグドーを見せ物にするんじゃねぇよ!」
「あらあら~~♪♪ レイドルノちゃんも面白いコトを考えているわねぇ~~♪♪」
皆の話しを聞きながら、エクリバが考え込んでいる。
「………」
(うふふ♪♪ ダーリンってば、スゴくステキ♪♪)
「それで…これから一体どうするつもりなのだ? ヴァグドー公よ」
「そうじゃのう、もうこの国には、用はないかのう。」
「それでは、そろそろ…次の国に行かれますか? ヴァグドーさん」
「……ふむう……」
皆の話しを聞きながら、アルラトスが考え込んでいる。
「………」
(まぁ確かに、もう国での目的はないわよね。 でも…次の国とは一体…?)
さてヴァグドーたちの次なる目的の場所は……!?




