96、右刎王と神光聖者
ギドレアス国王が遂に敗北する……?
●【No.096】●
―ギドレファナス王国―
国内の北側にある王都にして、要塞山脈都市である『ギヤンマウンテン』の頂上にある王城『ギヤンヴァレルダ』にて。
現在の廃墟の『玉座の間』の跡地で……夜。
その『玉座の間』があったとされる場所では、天井も壁も無く床には様々な瓦礫が散乱しており、辺りは次第に暗闇になりつつあって、光の魔法を使用して照明のかわりにして、明るくしている。
王家親衛騎士団隊の七人は、負傷者の傷の手当てをしていて、その彼らのすぐ背後には、地下の牢獄に閉じ込められている筈の "牡牛のバーデハルドン" が立っていて、その姿を見ていた六人(ロゼッダンを除く)が一斉に、かなり動揺していて驚愕している。
「なっ!? なんだと!?」
「ば、バカな…そんなバカなコトがっ!?」
「貴様、どうしてここにいる!? 貴様は確かに地下の牢獄に入れられている筈だぞ!?」
「ああ、確かにそのはずだが…これは一体……?」
「……っ!?」
「そんな…これは…どういうことなの!?」
「ああ、確かにその通りなのだが…それは彼らが助けてくれたからだ!」
バーデハルドンがそう答えると、バーデハンドンの背後にいた者たちが前に出てきた。
なんと! そこに現れたのが、同僚のレイドルノとダルラルダであった!
(※ヴァグドーたち一行は別の場所で待機している)
「レイドルノ、ダルラルダ!」
「よう、どうやら全員無事のようだな。 少し安心したぞ。」
「ヤッホー! 皆、元気!?」
「お前たち、一体どういうつもりなのだ!? 来るのが遅いではないか!?」
「そうだぞ! そのせいでギドレアス様がヤられてしまったではないか!?」
「それに何故…っ!?」
「だけど…そのお陰でようやくわかった筈だぞ! ギドレアスが化物で、しかも悪魔神の元幹部だったのだとな!」
「ふふふ、まだ信じていないようね。 まぁ…あなたたちはあれほどギドレアスに心酔…いや…洗脳されていたのだから、仕方ないけどね。」
「……どうやらまだ洗脳がとけていないのか……?」
「ふん、愚か者共めが!!」
どうやらレイドルノとダルラルダとロゼッダンとバーデハルドンの四人は、国王ギドレアスが『左刎王ギドアロス』と言う化物だと、以前から知っていたようだぞ。
「嘘だっ!! 畜生っ!!」
「まさか……そんなことが……本当に……?」
「……信じられない……」
「では何故、本当の事を我々に言わないのだ!?」
「どうせ…何を言っても信じまい。 真実を知った今でもまだ信じていないようだからな。」
「……ぐっ……」
「それじゃあ、この国はこれから一体どうなってしまうの?」
「それを俺たちが心配する必要はない。 "国とは国民あってのモノ…あとは国民が決めればいい" からな。」
「……っ!!?」
「ああ、そうだったな。 国民あっての国だったな。」
「確かにそうだな。 その事にいつの間にか忘れてしまっていたのかもしれないな。」
「ええ、そうね」
「では…降伏するのか?」
「………」
「…わかった、降伏しよう…」
こうして、遂に国王軍側が降伏して敗北を認めた。 これにより、長年にわたり続けられていた国王軍と国民軍との戦争も、ようやくここに終結した。
―-―・●・―-―
一方の南方向に飛び去っていった『神光聖者エリュニウス』は、空高く…はるか上空の雲の上にある、お城の『邪天侯城』に到着していた。
「………」
早速だが『神光聖者エリュニウス』は城内に入り、そこから一番奥にある『玉座の間』の大きな扉を開けると、そこは床には紅い絨毯が敷かれていて天井には大型の照明がある広い空間であり、さらに一番奥には石の玉座があるのだが…。
「っ!!?」
「やぁ…『神光聖者エリュニウス』よ…」
「お前はここにいたのか? …『右刎王アレクェート』よ…」
その玉座に座るのは、人間男性の平均身長ぐらいの真紅色の髪に橙色の瞳で、純白の翼に褐色のとても透き通った美肌をした男が服を着ていない全裸のままでいる。 この男こそ…『右刎王アレクェート』…人型の化物であり、現在は悪魔神の部下にあたる。
「…おかえり…エリュニウス」
「………」
すると『神光聖者エリュニウス』が『右刎王アレクェート』の目の前まで歩いて近づく。
一方の『右刎王アレクェート』は『神光聖者エリュニウス』が持つ【絶望神の剣】を眺めている。
「ふーん、そうかい…あの『左刎王ギドアロス』を倒したのかな? その剣はもしかして…」
「ああ、そうだ! この剣を手に入れるのに、私は "狩侯聖者" の姿を捨てて…真の姿に…本当の姿になったのだ!」
「ふふふ、それはどうも…お疲れ様でしたな。 ふふふ」
「……ちっ!」
なにやら『右刎王アレクェート』は面白そうに笑っており、『神光聖者エリュニウス』は不機嫌そうな顔をしている。
この二人は一体……!?
今度は『右刎王』の登場でまた新たな局面へ……?




