06、第一の街に入る
絶望老人、異世界の街に初めて入る。
●【No.006】●
ワシは異世界に来てから99年間、あの森の中で暮らしていたのじゃ。
その為に自分以外の人間を見た事もないし、ましてや近くに街があった事さえ知らなかったのじゃ。
丁度良い機会だから、少し異世界の街の様子ってヤツを見ておこうかの。
ワシはその街の人間と一緒に街に到着して、所々に家が半壊・全壊しているの見て、あのドラゴンの仕業であると容易に想像できた。
「…酷いモノじゃな…」
早速だが、ハーディスの言っていたギルド冒険商という所に行った。
ギルド冒険商に入ると大勢の人間が居たが、おそらくは冒険者であろう。
ギルド冒険商の主人がギルドを仕切っており、男性で40代と見られる。
その主人に娘もいて、仕事を手伝っているようで名前は「アリナ」 見た目は20代といったところか、黒髪のロングヘアーがよく目立つ。
アリナはこの街について説明していた。
「はい、ここはアーサンティラル王国の第10都市、アーラントの町です。」
「……王国?」
「はい、この街を含むこの地方一帯はアーサンティラル国王が統治しているのです。」
ワシが前に居た世界でも王国はあるが、99年間も特訓に明け暮れていたので、考えもしなかったの。
主人がワシに話しかけてきた。
「あんた、今まで何処に居たんだ?」
「ああ、この街の西に森があるだろう。 あそこに居たのだよ。」
すると、二人の顔色がみるみるうちに変わっていった。
「えぇっ!?」
「お前さん、あの森に住んでいたのか!?」
「ああ、そうだが?」
「嘘? 信じられません!」
「あそこは "地獄の森" と言われていて、昼間の気温は80℃近くあり、夜は-60℃はある気温差の激しい森だよ。 人間なんかがとてもじゃないが住める所じゃないよ。」
「へぇ~ そうなのか? 結構、住みやすかったけどの。」
「ずっと、あの森に住んでいたのですか?」
「ああ、99年間は居たかの。」
「ええぇぇっ!!?」
二人共、大変驚愕していた。
「あんた、俺より歳上なのか? 信じられない!」
「どう見ても、外見が20代にしか見えません。」
「ふふふ、俗に言う不老不死と言うヤツだの。 少なくとも耐久力がゼロにならない限り、死ぬことはないのだよ。」
「………」
二人は最早、言葉が出なかった。
「ほれ、ワシは手続きをしたいのだが?」
「……あっ そうですか、ではこれを」
アリナはワシに透明のカードを手渡した。
「……これは?」
「それは冒険者の身分証であり、通行証でもあります。 それがあれば、アーサンティラル王国内であれば自由に行き来できますよ。」
「……ほう……」
すると、ワシが持っていた透明のカードがキラリと光った。
「はい、今のでそのカードがあなたの存在を認識しました。 これで身分証の完成です。」
「……ほう……」
「ついでにステータスの確認をしますか?」
「ふむ、そうだな」
「では先程のカードをこの装置の上に置いて下さい。」
ワシの目の前に銅色の小型装置が出てきた。
これは《ステータスカード》と呼ばれていて、銅色小型装置で冒険者の身分証のカードが触れると、その者のステータスが表示されるレベル測定装置であり測定値は80まで測定できる。
ワシは自分のカードを《ステータスカード》の上に置いた。
ビリビリビリ……ボン!
《ステータスカード》が故障してしまった。
「ん?」
「あら、おかしいですね? 故障ですかね?」
「…まさか…?」
主人が今度は銀色の小型装置を持ってきた。
これは《スーパーステータスカード》と言い、銀色小型装置のステータス表示レベル測定装置で測定値が250まで測定できる《ステータスカード》のパワーアップバージョン。
「すみません、今度はこれでお願いします。」
ワシは自分のカードを《スーパーステータスカード》の上に置いた。
ビリビリビリ……ボン!
《スーパーステータスカード》が故障してしまった。
「……えぇっ!!?」
「なんだと!!?」
二人共にまたしても、大変驚愕していた。
「おや、また故障かの?」
「………」
主人が今度は金色の小型装置を持ってきた。
「これが、最新の装置なんだが!?」
これは《フルパワーステータスカード》と言い、金色小型装置の最新版のステータス表示レベル測定装置で測定値が500まで測定できる《スーパーステータスカード》のパワーアップバージョンであるが、正直、そこまでレベルを上げた者は今までいない。
「今度はこれの上にカードを置いてくれ。」
「ふむ」
ワシは自分のカードを《フルパワーステータスカード》の上に置いた。
おや、これは一体どうなったのかな?




