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はじまり

作者: ビリケン

いつから居るのか定かではないが、気づくとここに居た。

目が見えず、意識も朦朧としている。

右も左もわからない。ただハッキリしていることはこの激しい焦燥感。早く、外に出なければ。


数十週間がたった。

なおもわからない事だらけだが、少しずつわかることも増えてきた。

まず一つ、ここはとても暖かいと言うことだ。

この空間に満たされている謎の液体がそうさせるのだろう。

そして二つ、空腹を感じないと言うことだ。

いつからなのか分からないが、体にチューブがついていた。そこから栄養が供給されているのだろう。


さらに数十週間がたったであろうある日。

ふと身をよじると体が当たった。

おかしい、前は当たらなかったはずだ。

この空間が徐々に狭くなっているのだろうか?

そう思っているとふと声が聞こえた。

くぐもっていてよくわからなかったが、ひどく好奇心を掻き立てられた。

早く出たい。外へ。まだ知らぬ世界へ。


もう気がついてどれくらい経ったのだろうか。

いよいよ空間は手足を伸ばせないほどに狭くなった。

しかし、壁がかなり柔らかかったのが幸いした。

不思議と居心地は悪くない。

くぐもって聞こえていた声も、少しハッキリしてきた。なんと言っているのかはまだ分からない。

しかし、何故だか心地よい声だ。

そしてこの声を聞くたび焦燥感は強くなっていく。



時が来た、今こそ外に出る時。

そう思った。何故だが分からない。

しかし、本能的部分でそう思わせるのだ。

ふと頭の方に違和感を感じた。

壁がなくなっている。出ることができる。

私はもがき、そして光を感じた。

瞼を透けて、届く光。その時、今まで閉じていた目を、初めて開けた。

瞬間、目に入ってくる光と色。

目を奪われていると、巨大な手によって引き上げられた。

耳が捉える、クリアな音を。

肌が感じる、温もり以外の感覚を。

鼻で、舌で、その五感でもって感じる。

圧倒的情報量に呑まれながら、感動し、泣いた、これが外なのか。

その時、声が聞こえた。


「おめでとうございます!元気な…」


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