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序章 鈴木インプレッション

突然だが、一つ質問がある。


手垢のついた単語で申し訳ないが

「魔法少女」

という語感から、一体何を連想するだろう。

悪い人をファンシーな魔法のちからで懲らしめたり、困ってる人をミラクルなパワーで助けてあげたり。

あとなんか猫とか草花とか妖精とか、そういうのと話すことが出来たり。

フリルが付いたふりふりな感じ。


フワッとしたイメージで申し訳ないが、大体そういったものを想像するのではないだろうか。

事実オレも、そういう文化には疎いが「そういうもの」だと思っていた。

空が青い、とか地球が丸い、とかそういうレベルのものだと思っていたんだ。


見上げた視界の先に居る、その存在を知るまでは。



夜の空。ひときわ長く見える電柱の先に、それはいた。

ひらひらしたフリル付きのミニスカート。

その周りには蒼く輝く粒子が舞い、風が吹く度にリボンで束ねたポニーテールが揺れる。

よく見ると周囲には戦闘の痕跡らしきものがみられた。闇の中で、人ならざるものとでも戦っていたのだろうか。

月を背に浴びて立つその姿は、まるで絵画のように見えた。


魔法少女。


そんな幻想的な言葉がよく似合う光景。


・・なんだけど、前述のイメージとは違う点が少しだけあったんだ。

それは



その魔法少女は想像より遥かにデカく


想像より遙かに雄々しく


想像より遙かに不細工さんだった。



「うわぁ」

自分の口から変な感嘆詞が出た。

だってしょうがないじゃんよ。

レスラーも真っ青なほどのバッキバキの筋肉。ビクンビクンと躍動する音が聞こえてきそうだ。

身長は2メートル近くはあるだろうか。遠目から見たら確実にクマと間違える自信がある。

ギュッと上を向いた鼻孔に、黒豆のようなつぶらな瞳。

ぼってりした唇・・アレ唇だよな?たらこじゃないよな?


とまぁそのように、各パーツの特徴を上げていったらキリがないので割愛する。

とにかく超新星爆発のような個性がそこに佇んでいたわけだ。


なぜオレがそのスーパーノヴァを魔法少女と認識するに至ったか。

答えは簡単だ。

ソレが炸裂音のような咆哮で


「魔法少女!リラメル鈴木!!世に仇為す不貞の輩は!私の拳が見敵必殺!!!!」


なんて口上を宣っていたからだ。

「そっかぁ魔法少女かぁ」

なんて呆けた目をしながら、オレは鈴木さんが飛び去るのを見送っていた。

帰りつくまでの間、魔法少女の定義についてわりかし真剣に考えたのは言うまでもない。




今思えばオレの人生は、ここで大きく変わっていたんだな。


知っている世界と知らない世界。

それらがほんの少し交わった、オレの魔法少女とのファーストインプレッションは、何だかちょっぴりショッキングだった。

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