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思い出
よろで~す。
「ずっと前から好きでした。」
そう伝えたいのに、伝えられない。
私はどこまで臆病なんだろう?
好きな人はまあよくある話で容姿端麗才色兼備というやつでして。
バドミントン部の部長で学級委員というハイパーっぷり。
そんなやつに私みたいに地味で何をとっても良いところがないやつが告白する方がおかしいだろう。
せっかく同じクラスなのに。
というか同じクラスだから
「かっこいいよね~。告っちゃおうかな」
なんて声が聞こえちゃう訳で。
むなしすぎるだろう。
「私なんかはこうやって音楽とずっと生きていれば良いんだ。」
そういえばきっかけ、ってやつは音楽だったっけ?
ある時音楽の授業のテストでどうしてもわからないリズムがあった。
すると、彼は
「こうだよ。」
と、小さく手を叩いて教えてくれた。
おかげで、私は無難にテストをこなすことができたのであった。
彼は、そんなこと、覚えているわけないだろうけど。
そんなところも、またいいのだった。