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新王宮騎士団  作者: まめ
新しく王宮騎士団
9/19

新王宮騎士団9(越権行為)

帝国騎士団が管理する留置所へ行く。そして、ザキを探す。そこには、ザキとカミューがいた。

どうやら、この間の一件で仲良くなったようだ。ヒジリの顔を見るとザキはものすごく嫌そうな顔をする。

「そんな、嬉しそうな顔されたら、嬉しいな」

「誰がだ」

カミューはそれに対して、本当に嬉しそうな顔をする。

「こんなところに、どうしたんですか?」

「仲良くなったんだね」

「ええ、あの後、5日酔いで苦しんでいた僕を、面倒みて下さり、とても嬉しかったです」

「それは、よかった。こいつの、面倒みは意外といいんだ。でも、カミュー君は酒に弱いから、もう呑むの止めようね」

「はい、僕も止めた方が良いなって思いました」

それを聞き、ヒジリは嬉しそうに笑う。

「うっせえよ。それより今日はどんな用件だ?」

「カーミネの自宅が放火されたってね。その犯人に、ぜひ会いたい」

「じゃあ、手続き踏んで来な。そんな有名人連れてちゃ内緒は無理って言うもんだぜ」

「何で、お前等有名人なんだ? まさか、お前等何かやらかしたんじゃないだろうな」

心配そうに聞けば、ザキは大笑いする。

「ちげえよ。二人とも頭脳明晰で、顔も良いからモテてるんだ」

「何だ、違うのか? つまらん。でも、よかったな。お前らの見てくれに騙されてくれる女が、たくさんいて」

「お前なら、そうなるな」

ザキがおかしそうに、クスクス笑う。

「何だ?」

「二人とも、本当にモテてるんだ?」

「えっ。見てくれに騙されているんじゃなくって?」

「みんな憧れているんだぜ。女だけじゃない男もな。だから、なぜその優秀な二人が、悪の巣窟と言われている第三部隊にいるのか、疑問視されている。今、再有力なのが、実はどちらかが、隊長で何かの実験をしているんじゃないかという説だ?」

その言葉にヒジリは眉根を寄せる。

「悪の巣窟? どちらかが、隊長? しかも、何かの実験中。何のだ? 言って見ろ?」

「だから、勝手な思い込みだろ? そう怒るなよ」

「いや、赦せん。俺の前で言って見ろー」

ヒジリの叫びを、ジェイは当然だとでも言うように笑いながら聞く。

「自業自得ですね。これに懲りて、もう少しご自分で会議ぐらい出たら、いかがですか?」

「イヤ、こうなったら、さらに開き直るしかないだろう」

「なんでそうなるんですか?」

ジェイは呆れる。

「お前等が隊長だと思われていた方が、俺が遊べるから、便利だ」

二へ二へ笑うヒジリに限なりしたようにジェイは言う。

「今までも、存分に遊んでいたように思われましたが、まだ足りませんか?」

「足りねぇな」

カミューは惚けたように二人をみる。

「なぜ、お二人が」

そう言って、ヒジリを見る。

「え~、まさか、もしかして王宮騎士の方のお知り合いとか?」

カミューの言葉にヒジリは肩を落とす。

「なぜそうなる? 今までの話の流れから言って一つしか理由はないだろう。しかも、この構図を見れば、分かりそうなものを?」

「本当に自業自得ですね」

ジェイは本当におかしそうに笑う。

「えっ。まさか?」

カミューはその言葉で気付く。

「第三部隊の隊長さん? いやいや、まさかそんなことあるわけない、ない」

懸命に首を振って否定する。どうやら、信じたくないようだ。

「なんでだ?」

ヒジリはニッコリ笑って聞く。

「だって、あのお二人を、しめてかかれるぐらいの人だから、ものすごく優秀な人か、もしくは、噂通りどちらかが隊長さんのはず」

それを聞き、ヒジリは固まる。それを、見て、カミューは気付き、謝罪する。

「あっ。すいません」

「いいんですよ、元々会議を私にいつも押しつけているから、こんなことになるんです。これに懲りてくれれば、いいんですけどね」

ジェイが苦笑いして言う。

「だって、あれは意味ないんだも~ん。クダらん。会議に出るのは時間の無駄だ。後で決まったことをセイガーに教えてもらえば、十分だろ」

「そう言えてしまえるのも、あなたぐらいです。まるで、子供のお使いのようにセイガー中将を使うんですから。それより放火した人たちに会わせてもらえませんか。今回、我々は手続きを踏めないんです」

ジェイの言葉にザキは納得する。

「そういうことか。いいぜこっちだ」

「えっ、どういうことですか?」

カミューがザキに聞く。

「隠密ってことさ」

「あれだけで、良くわかりましたね」

カミューは、尊敬したようにザキを見る。

「それしかねぇだろう。あいつの副官はあいつと違ってきっちりしてる。それが、手続きを踏めないとなれば、一つしかない」

ぶっきらぼうに、ザキは言う。

「ここ、使え。今から連れてくる」

「悪いな。ついでに、ここ凄く臭くしても良いか?」

「別に良いぜ」

「ありがとう」

ザキが容疑者を連れてくる。

「そういうことか」

ザキは臭いをかいで、すぐ気付いたようだ。ザキは顔をしかめる。

「どうしたんだい。変な顔をして、さぁ、遠慮せず、ズズズっと入りたまえ」

「お前等、おかしいんじゃねえか。こんな臭え部屋入れるかよ?」

「入れないかい?」

「えっ?」

彼らの言葉にカミューは驚く。

「どうしたカミュー君?」

「だって、この臭いって、たぶん死体から発せられる臭いですよね」

それを聞き、気まずそうに顔を反らす容疑者たち。

「正解だよ。カミュー君。君達には臭いんだったね。良かったよ、君達が本当にこの臭いを、いい匂いだと感じていたら、困るからね。人の趣味はそれぞれだ、勝手にこっちで判断するわけ行かないし、もしかしたら蓄膿症かも知れないだろう? それをこっちで、勝手に決めつけられないだろう。君達が普通の感覚の持ち主でよかったよ。ザキ、窓を開けてくれ。この匂いは、嗅ぎ馴れているけど私も好きじゃない」

ヒジリは、ザキに窓を開けるように頼む。

ヒジリは、笑いながら言う。

「先ほど、臭いフェチでも蓄膿症って、わけでもないことが、分かりました。カーミネの家に火をつけた理由を、こちらが納得行く説明をいただけませんか?」

ヒジリの言葉に、彼らは気まずそうに黙る。

「急に黙りましたね。こちらで勝手に調書を書いてもよろしいですか?」

「それは、辞めて下さい。後で辻褄が合わないと面倒ですから?」

「今回は、はっきりしてるだろう?」

「放火ですか」

「イヤ、放火に恐喝だ」

それに気まずそうな顔をする。

「恐喝なんて、ありましたっけ?」

キョトントするジェイにヒジリは教えるように言う。

「あったね。お前ら、町で女の子から金取ったな。ここで暮らすためには、金を納めろとかなんとかいって、彼女はあの家の住人だ」

ヒジリの言葉に驚いたような顔をする。

「お前等が彼女から奪い取ったものは金品だけじゃない。くつろぎ、のんびり出来る思い出の場所まで奪ったんだ。そんな権利が、お前らにあるのか?」

初めて知った事実に、どうして良いか分からなくなる少年達。そして、ポツリポツリと話し出す。

「町で、バイトをやらないかって、身なりの良いじいさんに雇われたんだ。あの家に火をつけたいって、破格の金額を提示してきた。金の支払い方は、前金で半分、仕事が終わったらもう半分払うって言ってた。もしつかまっても自分が軍の上に顔が利くから、助けてやるっていわれて」

「ふ~ん。誰に利くんだか。まぁ、良い。お前等その半分ももらえると、軽く考えてないか。絶対、自分に不利なりそうなものは残さねぇよ。確実に消されるな」

ヒジリの言葉に少年達は息を呑む。

「なぁ~、助けてくれよ」

「いつも皆、お前等にそう言わなかったか。それをお前らは、助けたか?」

気まずそうに顔を逸らす。

「それが答えだ。助けてくれって言う子を、お前らは笑って、殴って蹴っていただろう? 金巻き上げていたんじゃないのか? なのに、自分の時は、助けてもらおうなんて、ずいぶん、虫が良すぎるとは思わねぇか?」

少年達は泣き出す。

「ごめんなさい。でも、死にたくねえよ。ただ、外から、俺らは火をつけただけで、中には入ってない」

「やっぱりな。それからおつむが足りてますか?」

「そんな承認握っている人を、残さないですよね?」

「そう、カミュー君冴えてるね。十中八句消すために、残りは後でって言って、呼び出したね」

「残すわけねえわ。確実に」

ザキも言う。

「というわけでもらいに行ってもらいます」

ヒジリはすごい笑顔で言う。

顔面蒼白になり、泣きながら彼らは言う。

「もらいに行ったら、俺達殺されちまうよ」

「お前等は、大事な証拠を燃やした、ただ金欲しさのためにな。もし生きていた人がいたら、お前等は殺してる。問答無用でな。つまり、殺人罪。その代価を支払え。己の命でな」

ヒジリはバッサリ切り捨てる。真っ青になって震える。

「俺らは知らなかったんだ」

「知らなかったが理由になるのは、子供の時だけだ。もう、それが通用する年齢じゃない。やれ。やらないなら、私がこの場で、お前らを切る」

ヒジリが一人の男の喉元にピタリと剣を突きつける。余りに鞘から剣を抜くのが早く、そこにいた誰の目にも止まらなかった。カミューは惚けたようにそれを見る。剣を突きつけられた男はごくりと唾を飲み込む。

「私は気が立っている。お前等に返事など求めてはいない。お前らに決める権利があると思うな。行け。行かぬなら、この場で死ね。俺はどちらでも良いぞ」

「辞めて下さい。彼らにも更正するチャンスを与えてあげて下さい。確かに、彼らは取り返しのつかない犯罪を犯してしまった。でも、そんなことで、彼らを殺し王宮騎士の名を汚さなくっても、良いじゃないですか?」

剣と男の間に手を広げてカミューが入る。

「カミュー君、そこをどきなさい」

ヒジリは抑揚のない声で言う。

「イヤです」

カミューは涙を流しながら言う。

「ここで彼らを殺したら、彼らと同じになってしまう。僕は子供の時から、王宮騎士に憧れを持っていました。お願いですから、それを汚さないで下さい」

ザキが、いざというとき、自分が間に入れるようにと姿勢をとっていた。どうやら、ザキにとってもカミューが最近では自分のテリトリーに入った人間だから、特別なのだろう。

「分かったよ」

ヒジリは苦笑いしながら、剣を鞘に戻した。

「分かった、行くよ。行きます」

少年達も、だいぶ反省したようだ。

「世の中には、ごめんなさいじゃすまないことがあると知れ。たった五歳になったばかりの子から住む家を奪ったんだ」

冷たい瞳でジェイは言う。

「はい」

彼らも反省する。

ヒジリに彼らの命乞いをしながら、その実、一番怒っていたのもジェイだ。かわいい奴だなとヒジリは思う。長くいすぎたせいでここから、離れたくないと言う思いが生まれてしまった。でも、たぶんその時間ももうすぐ終わりだろう? どうかその時には、泣かないで。彼らと笑ってさようならをしたいから。どうかお願い。それが、ヒジリのただ一つの願い。

「カミュー君、彼らの保釈申請がでてないか確認してきて下さい。それから、彼らを一度、牢屋に入れておいて下さい」

「はい」

そう言って、彼らを連れて出ていく。

「計ったな」

ザキは怒り気味に言う。

「計ったって、酷いな。ただ、カミュー君ならきっと助けるだろうとは思ったけどね。彼らも心入れかえるきっかけには、なったと思うし、うちの副官と彼らは、私が助けると、約束したからね」

「あんたが動くのか?」

ザキは、驚く。

ヒジリはそれに、苦笑いをする。

「だって仕方ないだろ? カーミネさんを手に懸けた者は分かるよ。でも、本当の黒幕事態は分からない以上、相手の力も分からないんだから、自分で動くしかない」

「誰だ?」

「サラだよ」

「脅されたか?」

「たぶんね。それでなきゃ、サラは動かないだろう」

「あんたにサラからは何も、言われなかったのか?」

そう言われ、ヒジリは考える。

そして、ハッとする。

「俺のせいだ。あいつは何度も、助けてと言ってたのに。あいつなら、尚更俺が行かないと」

「そうだな」

ザキも納得する。

「出てます」

「どこから?」

「それが、この間飲みに行った。御主人のサラさんです、何かの間違いですかね?」

それを聞き、ヒジリは笑う。

「いや、良いんだ。だと思ったからね。彼女は町の住人を人質に取られ泣く泣くやったんだ。そんな風に、彼女を追いつめるなんて、赦せないよな」

ヒジリはニッコリ笑う。

「じゃあ、チャッチャと行ってくるか」

そう言って、ヒジリは彼らを連れて行く。

「どうして、サラさんなんですかね?」

「彼女は、裏に精通しているし、今回の黒幕は彼女を使ってきた。たぶん、町の住人を人質に取られて彼女は自分の意思で動けないんだ」

「そんな、じゃあサラさん脅されてやったんですか?」

「長い年月、彼女はヒジリさんにSOSを出していたはずだ。それに、気付かなかったのはヒジリさんのミスだよ。だから、ヒジリさんは自分が赦せないんだ」

「そんな、ヒジリさんのせいじゃないのに」

「でも、それに気付かなきゃいけない。それが王宮騎士だ」

ヒジリが言う。

「そんな……」

「そうですね」

クロウドも頷く。

「王宮騎士団である以上、国が危険に曝されることには、常にアンテナを張ってなきゃ。国が傾きます」

今度は、ジェイが言う。

「それだけ手厚い賃金を頂いていますからね」

「だよな。俺が気付かなきゃ、ダメだろ」

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