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新王宮騎士団  作者: まめ
新しく王宮騎士団
8/19

新王宮騎士団8(カーミネの家燃やされる)

そして、やはりと言うか、調査にとは、すぐにいかなった。

と言うのも、極秘のため、通常の仕事は当然あるわけで、さらには、ヒジリがためた仕事も山済みなわけで、結局、調査に乗り出せたのは、セイガーから言われてから実に2日後だった。調査はまずは現場100回と言うことで、カーミネの自宅へと向かったが、そこで待ってた光景に、ヒジリは愕然とする。

「なんだこりゃ」

「火事で焼けたみたいですね」

「何で、誰も住んでいない家から火が出るんだ?」

「なんでも、2日前、空き家を見つけた、若者たちが酒盛りをしていて、火を出してしまったそうですよ。今、その者達は帝国騎士に捕まっています」

「なるほどなって、何で、お前がそんなこと知ってるんだ?」

ヒジリが不思議そうに問えば、ジェイは呆れたように言う。

「捜査に当たる前に予備知識なく出来ますか? 基本でしょう?」

「ごもっとも」

ジェイの言い分にヒジリは何も言い返せなかった。

だから、セイガーに当たる。

「あいつ資料渡したなら渡したって言っておけよな」

「隊長がそう言うって、セイガー中将も分かってたんでしょうね。これ預かってきました。国一番の茶葉です。大分、奮発してくれましたね」

「う~ん、ご機嫌伺いなのが、目に見えるが。ま、いいか」

ホクホク顔のヒジリは、その茶葉を大事そうに抱える。

「入ってみますか。何も出ないと思いますが」

そういって、焼けている家の中へと入る。

「こりゃ、外からの放火だな。外より、中の方が綺麗だ」

入って見て、ヒジリは言う。

「ええ、もしかすると犯人は、家の中に遺体があること事態知らなかったかもしれませんね」

「そうだな。でも、知らなかったでは、何の言い訳にもならん」

きっぱり言い切るヒジリ。

「やったことの罪は自分の命で償ってもらわないとな」

ヒジリに情けはなかった。

ジェイは首を傾げる。彼らは、確かに火をつけた。でも、誰かの命を奪ったわけではない。だって、その前に何者かに、殺されていただろうと思われる。それでも、代償に命で支払わなければならないのだろうか?

「ジェイは納得したくないみたいだね。彼らは、今回は、確かに誰も死なせなかったよ。でも、そこに歩けない人、例えば赤ちゃんがいたら、弱ってる老人がいたら、病気や怪我で歩けない人がいたら、彼らは結果として殺してる。罪を犯すときには、自分できちんとその罪を確認してからにしないと駄目だ。知らなかったは、何の言い訳にもならないよ。まして、人を殺してたらね」

「そうかもしれませんが、現に彼らは誰にも手をかけていないじゃないですか?」

「それは後で、分かったことだ。手をかけなきゃ良いのかい? それは、違う。彼らも子供じゃない。自分たちのしたことを分かって、貰わなきゃ」

「隊長の言いたいことは、私も分かります」

ジェイは言葉を言い募る。

「でも、彼らはカーミネさんに手をかけた訳じゃない。命を持って償うのは殺人犯の方です」

「そちらはきっちり償って貰うさ。でも、彼らの罪は中を確かめなかったことだけじゃない。上からの指示に何の疑問を待たなかったことだ」

「?」

ジェイはヒジリが何を言いたいか分からず、首を傾げる?

「分からないかい? こう言う場合なんて言えばいいんだろうな、クロウド?」

クロウドに助け船を求めるように言うが、その前にヒジリはクロウドに笑って言ってみろと言うように言う。まるで、クロウドに問題を出すようにヒジリは言う。ヒジリには時たまあった。クロウドはやれやれと嘆息する。

「えっと、隊長が言いたいのは、つまり、誰かに指示され動くと言うことは、指示されなきゃ動けないと言うことなんですよね。それは、逆に言えば、何でも指示さえされれば、動くってことだよ。そこには善悪なんて一切関係ないんだから、一番厄介だ。彼らは自分で考えると言うことを止めてしまっている。ってことですよね。隊長」

「そうだ。それそれ」

ヒジリは、嬉しそうに頷く。ジェイは悔しそうに俯く。こう言う時は、クロウドに、自分は隊長の思いを代弁してもらわないと、分からない。こう言う時、自分が幼くなったようで、嫌だった。バカにされていると思ったジェイだった。だから、こう言う時、反対を言って、(ワザ)と変えさせようとしてしまう。それが、子供の証明なのかもしれない。こういう時、クロウドは、いつも仕方ないなと困った顔をする。それを、見るのもまた、ムカつくのだ。時折あった。ジェイと同い年のはずのクロウドが、凄く大人に見えることがある。今回もそうだ。

「でも、命で償う罪ではないんじゃありませんか? 隊長が言いたいことは、良く分かります。でも、命で償う必要はない」

ヒジリは笑い出す。

「ジェイはこういうとき頑固だね。分かった、君の願いを聞き届けよう。彼らは、私が助ける。寸前のところでね。ちょっとは、怖い思いして貰わなきゃ。自分たちのしたことが、どういうことか分からないよ」

「良かった」

ホッとしたようにジェイは言う。

「隊長も優しいですね」

クロウドが言う。

「大事なジェイに嫌われたくないからな。それに、ジェイに嫌われたら、私の仕事やる奴がいなくなる」

「やっぱりそこですか?」

苦笑いするクロウド。

だったら、代わりにお前がやるか?」

「ご遠慮いたします。何せ、デートに忙しいのでね」

「だろ?」

そういえばとジェイはそこで初めて、気づく。ヒジリはクロウドに仕事を押しつけたことは一度もない。初めて疑問に思ったジェイ。クロウドも優秀な奴だ。クロウドにヒジリ隊長でも、仕事が押し付けられないとか? そう考えて、ハッとする。そう考えれば、クロウドが大金を動かせた理由も説明が付く。

なんで、そもそも、クロウドはこの隊に入ったんだろうか? そう言えば、聞いたこともなかった。

「カーミネの遺体は?」

ヒジリの質問に、ジェイの思考は現実に戻される。

「荼毘に、もう伏されているようです」

「お~、手際の良いことで。いつもこうだといいな。司法解剖にも、どうせ回さなかったんだろう?」

「ええ」

「掘り返してみますか?」

クロウドが言う。それに対し、ヒジリは、首を振る。

「掘り返したところで、もう日にちが経ちすぎてる上、火事にまかれてるし、無意味だろう」

「そうですね」

「いつも、こういう仕事は家に押しつけているのに、ずいぶん手際が良いじゃないか? 何番隊がやった?」

「えっと、そこが、不明ですね」

「ふ~ん、自分達でやったってことか、ずいぶん手際のよろしいことで」

パチパチとバカにしたようにヒジリは手を叩く。

「ですね」

ジェイも肯く。

「いつも、こうだといいな」

「絶対、無理無理。自分の罪を隠すことには、精一杯動きますけどね」

「だよな。って、ことは何もないか」

「ええ、たぶん証拠になりそうなものは根こそぎ、もう持って行ってくれてますよ」

「何もなさそうですね?」

クロウドが言う。

「それに、火事で、だいたい燃えていますから」

炭だらけの部屋を一瞥し、ヒジリは嘆息する。

「だよな」

その時、ヒジリが険しい顔をして何かを拾う。

「何かありましたか?」

「イヤただのゴミみたいだ」

と言った後、床をおもいっきり叩く。

「クソ」

何事かとジェイは、ヒジリを見る。

「俺が、気付かずに、すまない。お前は、悲鳴を上げていたのに、こんなことになって、初めて気付いた。遅いよな。許せ」

ジェイからは、何か分からなかった。

それは、金の鎖で、とても、ちゃっちかった。炎に撒かれたと言うより、火災の後に置かれたと言うぐらい綺麗だった。よく火災の中、無事だったものだと思わせるものだった。そのぐらい、ちゃっちかった。

だけど、ヒジリには分かった。彼女の望みが。自分のいたらなさに反吐が出そうになる。彼女は、悲鳴をあげていたのに。ジェイが心配そうに聞く。

「隊長、どうしました?」

「いや、何でもない」

ヒジリはこっそり拾ったものを大事そうに、ポケットにしまう。表情も先ほどまでが、ジェイの気のせいだったように、もう元に戻っている。なにかが、その時、キラリと光った。

「あれ、これなんだ?」

そう言って、ジェイが拾ったのは、昔の金貨だった。それもまた、炎に撒かれていない。どうやら、それも火事の後に置かれたものらしい。だが、ジェイは気付かなかった。ヒジリが難しい顔をしていると、ジェイが聞く。

「どうしたんですか?」

「いや、なんでもない」

すぐ、顔色は、戻りジェイは気のせいだったかと思う。

「もう何もないな。お前が拾った奴も証拠品じゃなさそうだし、戻るか」

「そうなんですか?」

「ああ、カーミネの遺品だ。あの人は昔の硬貨とか好きだったからな。キラに渡そう。お爺さんの遺品が手元にあるのとないのじゃ、だいぶ違うだろう?」

「そうですね。お願いします」

そういって、それは、ヒジリの手に渡った。ヒジリは、大切そうに、それを握りしめる。それを見たクロウドは、天を仰ぐ。それは、クロウドにとって、終わりを告げるものだった。今まで、彼のおかげで自由にできた。感謝をしてもしたりないぐらい。彼が自分のために負ったものは、とてつもなく大きなものだ。その彼が、もうギブアップだと悲鳴をあげている。楽になりたいと。

楽にしてあげるのは、ヒジリじゃない。自分の役目だ。それが、俺があいつにできる唯一のことだろう。クロウドの顔を見て、ヒジリは苦笑いする。

「お前が辛いなら、俺がやるぞ」

「いいえ。これだけは私がやらなければ、今までがんばってくれたあいつに、返せる唯一のものですから」

何かを決めたようにクロウドは言う。それに、ヒジリは自分を責める。あの時は、これが一番の道だと思った。だが、それは不幸な人間を作り出しただけではないかと思う。

「そうだな」

ヒジリも肯く。クロウドは、話を元に戻す。

「そうなると残りはごろつきの依頼主ですね」

「だな」

「接触を待つしかありませんね」

クロウドは言う。

「ああ、こうなったら、あいつらに、ぜひとも役に立って貰うか」

ニヤリと笑うヒジリ。

「役に立てる所があって、あいつ等もさぞかし嬉しいだろう」

「悪どいですね」

クロウドはクスリと笑う。

「何を言う?」

「彼らを囮に使うおつもりでしょう?」

「他にあいつ等を使える場所あるか?」

「ないですけど、私は、欲張りですから、1000人よりも1001人の方が良いとだけ言っておきます」

クロウドの言葉に、「了解、結局お前も優しいな。ジェイにも嫌われたくないし、助けるよ。ギリギリの所でな」

と、言って、ヒジリは笑みを浮かべる。ジェイは何のことか分からず、頭を捻る。

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