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新王宮騎士団  作者: まめ
新しく王宮騎士団
7/19

新王宮騎士団7(リンにジェイ作法を教える)

二人が飲んでいるものに、気付きヒジリは悲鳴を上げた。

「あ~、俺の茶葉」

「これが、嫌ならこれからは会議に出て下さい」

「あれ意味ないから、時間の無駄。と言う訳でこれからも出ません」

ジェイがセイガーを見ると、仕方ないと言うように肩を竦めていた。

「お前も、そう思うだろう?」

「だが、意見の交換は、重要なことだろう?」

「確かにな。そこに、有益な情報があればな。大抵、自分で情報は取って来れる。さ、この話はこれで、おしまい」

「じゃあ、茶葉のことも良いですよね」

「それは、全然良くない」

そう言って、ヒジリは茶葉の入った袋を大事そうに、抱き締める。

それを見て、セイガーは言う。

「私が飲んだんだ。だから、茶葉を買って返すよ。あまり、ジェイ君を怒らないで上げて欲しいな」

ヒジリはセイガーの言葉に満面の笑みを浮かべて言う。

「サンキュー」

遠慮しないとこが、ヒジリらしい。

そして、ヒジリ達がこんな話をしているときに、ジェイはリンに気付く。

そして、ジェイは、リンを見るなり。こう言った。

「風呂ぐらい人の前に出るなら、入って来なさい。そのぐらい常識でしょう。仮にもあなたは女性何ですから。恥ずかしくないんですか?」

「無理だろ。彼女は今まで浮浪児の生活を送ってきたんだから」

そう言われ、ジェイは黙る。

「それに、守ってくれる存在を亡くしては、身嗜(ミダシナ)みなどに、気を使ってられないだろう。たぶん、生きることに精一杯で気にしてられないと思うぞ」

「確かにそうかも知れませんね。それでも、やはり身嗜みを整えるのは常識です」

それでも言うジェイにヒジリは笑う。

そう、ジェイに言われ、リンは恥ずかしそうに俯く。

ヒジリは、飽きれたように言う。

「でも、そう言ってしまえるお前も、男としてどうなんだって、俺は思うのですが? 男性が女性を辱める行為も同じくらい恥ずかしい行為ではないのですか?」

「身嗜みは、男だろうと女だろうと変わりありません。しかも、初対面なら、尚更ですよ。それで、持たれる印象が変わってしまうんですから、あなたはお風呂に入ってきなさい」

そう言われ、リンは、恥ずかしそうに風呂場の場所を聞くと、走って行く。ジェイはそう言いながらも、彼女の着替えをきちんと用意する。

「相変らず容赦無いけど、お前は相変わらず面倒見は良いよな」

ヒジリは苦笑いする。

「お褒めに預り光栄ですよ。隊長はどうお考えですか? 僕の考えは古いのでしょうか?」

「んにゃ、俺もお前の意見に1票だな。リンは可哀想だが、同情ばかりされているとそのうち、それに甘え、自分で立てなくなる。同情は何も悪くないんだが、これから、頑張ろうとしている奴には無用なものだ。それよりも、するなら応援が良いだろう。って、応援も重く感じることもあるから、一番良いのは、何も言わずに見守ってくれる方が良いだろうな。俺はそう言う奴を、たくさん見てきたからな」

それに、ジェイは頷く。

「彼女は、これから一人で生きていかなければなりません。それなのに、易しく慰めて、どうします。強くなるしかないんです」

「そうだな」

「最初っから己の立場を教えて行った方が良いんです。私も幼い頃に両親を亡くしているから、分かるんです。私は施設で育ちました。施設では、皆、何かと足の引っ張り合いですよ」

「そうなのか? 初めて知ったぞ」

「言うべきことでもないでしょう。私はそのときの経験から、見出しなみを整えることは、大事だと学びました」

「そうか。でも、試験はどうやって受けられたんだ? 施設の者だと、まず無理だろう?」

「ええ、そうでしょうね。でも、私の場合、運が良かった。丁度その時、私の後見人になりたいと、名乗り出た物好きな人物がいたんです。良かったですよ」

「誰だ?」

「隊長も知っている人です。身近な人です」

「誰だ?」

「クロウドですよ」

思わぬ言葉にヒジリはビックリする。

まさか、ここで出てくるとは思わなかったのだ。ジェイは静かに語る。

「彼の条件は一つだけ、自分と同じ年に王宮騎士団を受けて、その試験に1番で合格する事。私はそれを受けました」

「で、約束通り1番で入ったわけだ」

(そりゃ、凄い。クロウドの見る目もすごいが、言われて、本当に一番で入ってしまうジェイも凄い。そんな繋がりがあったとは。何か思うところがあってやったことだろう。あいつは意味なく援助なんかしない。どう言う、意図が合ってこんな事を。それより、言っておけよな。と言ったところで、言わねぇな。あいつは)

クスリとヒジリは笑う。

(そう言うとこ、あいつは頑固だよな。でも、良いかとも思う。彼が我が儘言えるのも、今だけだ)

「でも不思議何です?」

「何がだ?」

「私と同い年のあいつがそんなにお金を動かせる立場にいた上、私の立場で試験を受けさせることがクロウドが出来たことにですよ。彼は何者ですか?」

「さぁな。私の口からは言えないよ。だって、あいつはお前に見つけてもらいたいとたぶん、思っているからな。でも、お前はもう分かっているんじゃないか?」

と笑ってヒジリが言うと、不満そうにジェイは言う。

「これかもって思うのはありますけど?」

「どういう?」

「もう少しはっきりしたら言います」

そう言って、その場は終わったのだった。

腕をジェイはう~んと伸ばすと、クロウドが聞いてくる。

「どうしたよ? そんなに仕事、溜まってたのかよ?」

「溜まってるな」

そう言って、眼鏡をあげ、仕事に戻る。クロウドは、そんなジェイを見て首を傾げるが、それ以上は追求はしなかった。

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