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新王宮騎士団  作者: まめ
新しく王宮騎士団
4/19

新王宮騎士団4(ヒジリ城を抜け出す)

城からうまく抜け出したヒジリは、木陰に隠して置いた服に早速着替える。

それは、民間人と同じもの。

ただし、動きやすい服装であった。

腰には粗末な剣を下げる。

一応の時のため。

でも、実は素手が一番の武器になることを知っているヒジリだった。

まさか、王宮騎士団の制服を着て、町には下りられない。

下りたら、自分の居場所を教える様なものだ。

そのくらい目立つ。王宮騎士団の制服は真っ白で決められている。靴まで白、もちろん腰に指す剣の鞘の部分まで白い。徹底してる。なぜ白なのか聞いたことがある。そうしたら、市民に示すためのものらしい。王宮は何があろうと潔白何だと。しかし、王を守るとき剣を使うが、血が目立って仕方ないのではないかと、それが民を怖がらせることにならないかと聞いたら、民衆はよくやったと、褒め称えるであろう。と、返ってきた。俺は間違いなく退くと思うが分からない。

着替えを済ませたヒジリはなにやら悪寒を感じて、ジェイを宥めるためにある一つの作戦に取りかかる。

その名も《貢ぎ物大作戦》。

ジェイの好きなものは果物だったよな。小さい頃は干したのしか、食べたことがなかったらしく、大人になり、騎士団に入ってから果物とはあんなみずみずしい物だと初めて知ってからは、良く隠れて食べていた。どうやら、気に入ったようだ。でも、大の大人しかも、男が食べるもんじゃないと思っている節がジェイにはある。別に良いだろうと、ヒジリは思うのだが、ジェイには恥ずかしいと言う思いがあるらしい。ヒジリは可愛い奴だとクスリと笑う。

土産はフルーツ特に水分の多いヤツが好きだったよな。今の時期は苺かと思いフルーツ屋さんに行く。そして、手に取ると、店の主に渡す。

贈り物だと言って、包装も頼む。受け取ると、ヒジリのジェイへの貢ぎ物大作戦は終わった。

はっきりいって、ジェイがそんな物に誤魔化されるわけがない。

が、そこに考えが行かないぐらいヒジリもてんぱっていた。

通りをフラフラすること5周目。

ヒジリは突然足を早めた。

そして素早く視線を走らせる。

3周したときから、ついて回る視線。

相手の目的も分からず、ヒジリは思案にくれる。

(どうするべきか?)

つかず離れずで一定の距離を保っている。

訓練はされているが、まだ新人だろう。

尾行がぎこちない。

このままヒジリには連れて回る気はない。

ヒジリは角の手前でワザとダッシュする。

尾行をするなら、ターゲットから視線を外してはならない。

尾行のそれが鉄則だ。

案の定、相手は慌てたようにヒジリを追いかけてくる。

相手は角を曲がった瞬間、ギョっとする。

それもそうだろう。

角を曲がったところにヒジリがいたのだから。

「どうも~」

ヒジリがヒラヒラ手を振る。

彼の身に着けているものは彼が『帝国騎士団』の人間だと分かるものだった。王宮騎士団の制服が白なら、こちらは黒だ。どこまでも、対抗している。

凄く真面目な感じのする男の人だった。

髪もこの国では、一番ポピュラーな茶色だ。

その髪を短髪にして刈り上げている真面目を絵にしたような男だ。

この国には『王宮騎士団』と『帝国騎士団』が有る。

そもそも、全然、管轄が違う。

王宮騎士が言葉の通り王宮なら、帝国騎士は町中ということだ。2つは、同じ騎士だが全然違う。それは管轄だけではなく国民の扱いも。

王宮騎士団がエリートなら帝国騎士団はエリートと言うよりも、市民に密着しているものだ。

「で、何ですか?」

「同じとこをグルグルしているから、何か落としたのかと」

しどろもどろ言う。

「違うのか?」

そう聞かれ、逆にヒジリが困る。

どうしたものか?

「では、何をしてたんだ?」

「えっと~、お店のお金落としちゃって」

「じゃあ、一緒に探す。一緒に探した方が見つかる確率が高くなる」

そこまで考えていなかったヒジリは焦る。

で、思い立ったのが、

「良いですよ。もうすぐ開店時間になちゃうからお店できちんと理由いえば怒られないと思います」

「じゃあ、俺も一緒に謝ってやる」

「いいんですか?」

(困ったな。ここまでお人好しだとその内騙されるぞと思わず、ヒジリは心配してしまうのだった。さて、どうしようかと思うヒジリ。こんなときはあそこに連れていくか? まあ、丁度私もクロウドとの待ち合わせもあそこにしてあるし丁度良いか?)

そう思い、「こっちです」と言って、連れていく。

大通りから少し外れたとこにあるその一軒の店の前で止まる。

そこはネオンがいっぱい付いている場所だった。

ちょっと薄汚れた女の子が軍人さんにぶつかる。

「大丈夫か?」

軍人さんが心配そうに聞くと、その子は俯いたまま、頷くと走り去る。

うまいものだとヒジリは思う。

でも見たことない子。

いや、見たことがある子か。

分からない。

ヒジリが裏から足を洗ってから、そう言った情報が入りにくくなっている。まぁ、もうすぐ足を洗っから4年だ。入らなくって当然か。と、ヒジリは苦笑する。

「軍人さん。そんなノホホ~ンとしている場合じゃありませんよ。財布は大丈夫ですか?」

ヒジリに言われ、財布をいれたポケットを探るが、見つからない。

「ない」

制服のポケットを全部探るが、みつからない。

「無駄ですよ。さっき穫られましたから、いや、軍人さんにも、気づかれないとは、さすがなものです」

「あの子か?」

今にも走り出しそうな軍人の制服を引っ張り止める。

「追っかけても無駄ですよ。軍人さん、ここらの地理に詳しいですか?」

「君はバカにしてるのか? 私は騎士だぞ」

「騎士だから、知らないんじゃないか? 君達は裏を知らなさすぎる」

「そんなこと」

「じゃあ、知ってたかい? 裏で一番大きな店だ、ここは。知らないだろう? 裏に詳しい者なら、みんな知っている。そんなもんなんだよ、君達騎士は。残念ながらね。表を守って満足している。でも、実際町を支えているのは、裏の人間だよ。良く覚えておくことだ」

ヒジリに言われ、彼はシュンとする。

「落ち込むなよ、そんなに。あんたのおかげで、あの少女の運命が大きく動くかもしれない」

まだぎこちなさは残る。

でも、もう少し経験を積めば、あれで暮らしていけるぞ。

と思う一方女の子の素性が気になった。

もし、ヒジリの勘が外れていなければこのようなところにいる御仁ではない。

何があったのか。

それも、すぐわかるだろうと頭を切り替える。

「どういうことですか?」

「ここに入ったらやはり不味いですよね、やっぱり、軍人さんがこのような場所に出入りしたら」

「い、いや、男に二言はない。それより、君はこういった店で働くと言うことは、女の子とか?」

立ち直り、疑問を口にする男に、ヒジリは心の中で拍手を送る。

「女になった覚えはないな。かっこいいってみんなに言われるよ。俺のここでの役割は、買い出し兼用心棒ってとこかな」

「確かに、かっこいいな」

ヒジリはクスリと笑う。

店内に入ると、まだ開店前なのだろう小さな子たちや人気のない女の人が掃除をしていた。店の者もヒジリを知っているから特に何も言わない。

そのうちの一人に金を握らせ、店長を呼んでくるように頼む。

「軍人さん、こちらへどうぞ」

他の女の子がグラスを持ってこちらに来る。

ヒジリはその子にもこっそっり、金を渡す。

彼は戸惑ったように聞く。

「おまえも手伝わなくっていいのか?」

「いいんですよ。それぞれ持ち場が決まってる。下手に手を出したら、逆に行けないんです。私は買い物がかり兼用心棒だから、手を出さない。やり方も分からないですしね」

「そう言うものなのか?」

「ええ、下手に手を出せば逆に彼女たちを邪魔することになる。だから手を貸しません」

「そうか?」

「ええ」

ヒジリがちょうど頷いた時、ほとんど下着姿の女性がでてくる。

髪は腰ぐらいまである凄く綺麗な女の人。

そうすると男は惚けたように、サラを見る。

「ごめんなさい。サラお姉様、お金落としちゃった」

サラが何かいう前に、ヒジリが言う。

サラは、それで気づいたようだ。

軍人にそう言ってると、

「かまわないわよ。それよりあなたが遅くて心配したわ」

サラは話を合わせてくれる。

「この軍人さんも一緒に謝ってくれるって」

惚けていた男もそれで、思い出したのか、謝ってくれる。

「申し訳ありません。彼が必死に探したんですけど見つからなくって」

「いいえ、ありがとうございます。連れて帰ってきてくださって」

「いいえ。全然」

プルプル手を振る。

ヒジリはキルと言う酒3杯とミルク粥を頼む。

それを聞いたサラはギョットする。

どんな大酒飲みも、たちどころに一殺にすると言われてるぐらい度数の高い酒。

今では知ってる者は誰も頼まない代物だからだ。

「え~っと、サラお姉様。軍人さんが入るときに子供にぶつかられて、お財布穫られちゃったの? お財布を取り返したいわ。彼女のこと知っている?」

「まあ、それは災難でしたわね。お財布は必ず取り返しますわ」

それは、無言で、情報は渡さないと言っているのに等しかった。

それを聞いたヒジリの纏う気配が変わる。

「サラ、俺はその子に会いたいって言ってるんだよ。正直俺は財布などどうでも良い。俺は、ましてお前から、話を聞きたいわけじゃない。直接、その子から話を聞きたいんだ」

その瞬間、サラを取り巻く空気も変わる。

「会ってどうするの?」

「それは確認しなければ、いけないことかい? お前ごときが俺に聞けるのか? 立場を(ワキマ)えろ」

冷々(ヒエビエ)とした視線を向けられ、サラはそれから逃げるように、目を反らす。

これでは、店の使いをやっているこの子の方が偉そうだ。

「街の治安を維持しているのは裏の人間で、サラがその裏の人を束ねていることは俺も知っている。でも、彼女に会いたい。俺の思い違いでなければ、こちらで保護した方が彼女の身の安全が保証されるから、こちらで保護する方がいい。だから、渡してくれないか?」

命令口調は相変わらず変わらないが優しい瞳をする。

それに、サラは文句言わない。

料理と酒が運ばれてくる。

「お前の信頼は裏切らないよ。まぁ、その言葉も信頼出来たものじゃないがな」

そう言ってヒジリは笑う。

そうしたら、サラも笑う。

「あなたは、一度も私と街を裏切ったことはないわ」

その時、料理が運ばれてくる。

その料理を隣の席に運ばせる。

酒はヒジリ達の座る席に、置かれる。

男は最初にきたグラスを煽り噎せる。

「水かと思った」

涙目になりながら言う。

「こういう店で水なんか出るかよ。酒に決まっているだろ。少し考えれば、わかりそうなものを」

呆れたように、ヒジリは男を見る。

「で、軍人さんのお名前は?」

サラが聞く。

そう聞くと、ヒジリも思い出して聞く。

「私も聞きたいな?」

「呆れた。名前も聞かずに送ってもらったの?」

「面目ない」

「あの、宜しければ、お名前をお聞かせ願いませんか?」

サラが男を虜にするような笑みを浮かべて言うと。

男は急に立ち上がり、敬礼すると大きな声で言った。

「申し訳ありません。私は帝国騎士団第三部隊所属カミュー・トルガナーと申します。以後お見知り置きを」

店内にいた者は、皆一様に目を丸くする。

しかし、サラはすぐに立ち直ると、

「ご丁寧な挨拶いたみいります。私は十和田サラと申します。今後ご贔屓にして下さいね。第三部隊と言うことはザキ様と一緒ですわね」

「えっ、ザキですか?」

驚いたように言う。

ここでザキの名が出てくると思わなかった。

カミューより一回り上だけど、組織に属しながら集団行動を嫌い、単独行動ばかり取り、組織からは爪弾きにされている。

いつまでも、平隊士で、出世する見込みもない。

そのせいで第三部隊からは、誰もが軽蔑し、かくゆうカミューも態度には出さないものの、心の奥底ではバカにしていた。

そんな奴の名がなぜ、ここで聞かれるのか。

そう思っていたカミューの謎をサラが解いてくれる。

「ここに住む者にとっては、ザキ様だけが見捨てず目をかけて下さる。忙しいでしょうに、3日と開けずに必ず来て下さいます。私たちにとっては、神にも等しい」

その言葉を聞きカミューは、なぜだか恥ずかしくなる。

「これが、町の声だ。聞いたことなかったろう?」

「はい」

「下りなきゃ聞けないこともある。だが、逆にお前達にしか見えないこともある」

「えっ?」

「だろ? あいつは人にかしずくのを良しとしないから、集団行動自体とれない奴だよ。たぶん、だから、部隊でも爪弾きにされているはずだ。あいつのそれが、致命的欠陥だ。それが、わからない限りあいつは、ここまでだな」

「ザキ様を終わりみたいな言い方しないで。あの方は良い方よ」

「まぁ、軍人としてはましな方だな」

と言い、ヒジリはキルと言った酒が入っているグラスの酒を一気に飲む。まるで、水のように。

「ましなんて言い方、失礼よ。ザキ様だけよ。どんなくだらないよたばなしや小さなもめ事にも愚痴にも付き合ってくれるの」

その言葉に弾かれたようにサラを見るカミュー。

「そうだな。それが、ただ酒目的のためであってもな」

茶化すように、言うヒジリを、サラは軽く睨む。

「でも、確かに彼だけだろうな。民衆のために働いているのは」

「ザキがね~」

カミューは、落ち込む。

「落ち込むな。落ち込むな。現役、隊員にそんな無駄な時間はない。落ち込みたいなら、隠居してからにしろ」

はっきり言いきるヒジリに、サラが止めるよう「ヒジリ」というとそれをカミューが止める。

「良いんです。間違ってませんから」

「そう知らないことは知ればいい。間違っていることは正せばいい。君は大事なことを一つ知った。自分が知らないと言うことを。これで一歩前進だ。ザキも前進してくれればいいんだが」

そうこうしていると、大柄な男が子供を抱えて入ってくる。

バタバタ暴れている子から急に手を離し、その場にグシャっと潰れる。

「勝手なこと言うな」

不機嫌そうにザキが言う。

「君は変わらないね。私に対する態度が変わらないのもいい」

「フン。お前にどんな態度をとれと。俺は俺の道を生きる」

「それでいい」

「このガキが人の財布穫ろうとしやがった」

「穫られた人もいるけどね」

ヒジリはカミューを見て、クスクス笑う。

「お前の財布か?」

ポーンっと財布を投げる。

「中身の保証はしねぇけどな」

そう言われ、カミューはすぐ確認する。

「大丈夫みたいです」

「サラ、その子と隣の席へ」

「分かったわ」

その子を、起こすと隣の席へと連れていく。

「お粥、いいぐわいに冷めていると思うわ」と言って、毒味するかの用に一口食べる。

ある意味、少女に毒味をして見せて安心させる。

「丁度良いわよ」

そう言って、お粥を勧める。

その子は、初めのうちは食べようとしなかったが、その匂いにつられて、空腹に勝てなかったのか、ガツガツ食べる。

「変な組み合わせだな?」

「私を心配して送って下さったんだ。今時、仕事熱心な若者だよ」

「おまえの命運もつきたな。こいつに憑かれたら、骨の髄までしゃぶられるぞ。悪いことは言わん、さっさと立ち去れ」

ヒジリが思った通りの言葉をカミューにザキは口にする。

それに、ヒジリは笑う。

「ザキに言われたくないよ。ザキと一緒に酒飲んだと分かれば、上から睨まれること間違いなしだ。更に仲間たちからは爪弾きの目に遭う。うわ~、お先真っ暗」

楽しそうに、ヒジリは言う。

「やはり貴様が、俺は嫌いだ」

「とても好きってことだね」

「どうしてそうなる?」

「だって、昔から君はこう言う時、反対のことをいうからね」

(どう見ても、ザキよりも子供なのに、そのザキの子供時代をこの子が知っているなんて、あるのだろうか? もしかしたら、この子の、実年齢は僕が思っているより上なのか? まさか、そんなこと聞けない)

と、カミューは思う。ヒジリはおかしそうに笑いながら聞いてくる。

「何か? 聞きたいことでもあるかい?」

そう言われたが、カミューは聞けなかった。

「ところで、君は軍人は何のために、あると思う?」

「えっ?」

急に聞かれカミューは驚く。

「たぶん、そこに住む民のためではないでしょうか?」

「う~ん、それだと50点かな?」

「では、何だと?」

逆に質問してくるカミューにヒジリは、あっさり言う。

「国のためというのはどうかな?」

「それは、ひいては民のためになるのでは?」

「ええ、確かに。でも国か民を選べと言われたら、軍は間違いなく国を選ぶでしょうね?」

「なぜですか?」

「国は民を求めますが、民は国など自然に出来るものと思い国を求めていません。だけど、民はルールを決め、それを取り締まる軍を求めます。軍は国なくしては、その存在意義を失う。国なくして徒党を組めば、それはただのゴロツキです。だから、国を第一に考える。まるで上手く循環してますよね」

「お前の考えは極論だ」

「これだけは昔から、君は納得しないね」

「当たり前だ」

「でも、もう一つ私が出す問いには君はきちんと答えを出すね」

「もう一つって何ですか?」

興味深そうにカミューが聞く。

「軍人にとって欲しい物は? っていうバカバカしい問題だ」

面倒くさそうにザキが言う。

「欲しい物って?」

「君はなんだと思う。名誉か勲章、はたまた名声か? 金かい? 君ならどれだと思いますか?」

「そうですね。僕も軍人である以上、どれも欲しいですね」

軍人とて、当たり前の事を口にする。

「その中でも、君だったら何が一番欲しい?」

そうヒジリが聞けば、カミューは考え込むように言う。

「そうですね。どんなときも、真実を追求する心を僕は持っていたい」

その答えに、ヒジリは笑う。

「正解だよ。君もザキと同じような答えだ。ザキ、君は何て言ったっけ」

「俺か? 確か、俺はどんなときも権力何かに負けずに真実を追求する探求心だったと思ったけどよ」

と、ザキは面倒くさそうに言う。

「君はその時、馬鹿にしたよね、権力を。今もそれは変わらないかい?」

「変わるかよ」

「そう、それは良かった。だって、人はいろいろな物に縛られ、それが出来なくなっていくからね。悲しいけどね。それが時に真実を覆い隠してしまうことに繋がる」

「そうかもしれませんね」

カミューは納得したように頷く。

「君もこっちには納得したね」

「はい。でも僕も最初の方は納得できません。やはり、そこに住む民の為にあるのだと思います。国のためっていうのも、(アナガ)ち間違ってはいないのかもしれませんが、つまりは王を一番に考えるってことでしょう?」

「そうだね。納得いかないかい?」

「はい。だって、民をなくしては王とは言えないでしょう?」

素直に頷く。

「そうだね。王にとってはそうだ。私にも本当の答えは未だに分からん」

「そう言うところ、相変わらずいい加減だよな?」

と、ザキは言う。

「出ない答えだから、面白いんだろう」

そう言って、ヒジリは笑う。

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