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新王宮騎士団  作者: まめ
新しく王宮騎士団
18/19

王宮騎士団18(リンが次の被害者になる)

リンが襲われたのは、事件の話をしてから、ちょうど一週間後のことだった。そろそろ、事件が起こる時期だと、思い警戒はしていた。でも、まさかリンが被害者になるとは思わなかった。

ジェイが、駆けつけ、それを、伝えた。

「大変です。ヒジリ隊長、リンちゃんが、次の通り魔の被害者になりました」

「えっ?」

言われた瞬間、時間が止まったようにヒジリには感じられた。

「でも、まだ亡くなってません。発見が早かったから、今緊急手術中です。って、聞いていますか?」

「駄目だな。聞いてないよ」

セイガーはヒジリの目の前で手を振り笑うと、足に一発蹴りをいれる。

「聞こえてますか? ヒジリ、良かったな。まだ、亡くなってないってさ。生きてるって。運が良かったな」

「許さん。やったことを後悔させてやる」

メラメラと燃えるヒジリに、セイガーが聞く。

「お前は病院に行くか、それとも現場に来るかどちらにする。ただし、平常心を保てない奴は迷惑だ」

セイガーのその言葉に、きっぱりヒジリは言った。セイガーの言葉で、ヒジリは頭を切り替える。

「分かってる。だからこそ、俺は現場に行く。どうせ、病院に行っても、俺が出来ることは何もない。祈ることだけと考えると、現場に参加していた方がまだ役に立つだろう?」

取りあえず、ヒジリはリンの容態も気になるが、今は現場へと向かう。

現場には、帝国騎士団員の人間がワラワラいた。その中にカミューとザキがいた。それを見つけたヒジリはカミューに聞く。

「カミュー君、何かわかったか?」

カミューは突然、声を掛けられ、慌てて振り返り、それがヒジリだと分かると、沈痛な顔になる。

「また駄目です。逃げられました」

カミューが答える。

「今回は何で、すぐ発見されたんだ? あんなに、下調べをしている犯人が?」

「5番隊がちょうど巡回中のときで、発見されました」

カミューが言う。

「まあ~、何てバカなことを。この犯人に限って、巡回の時間を知らなかったなんてことないだろうに。だんだん、調子に乗り始めたな。これは、好都合」

「どういうことでしょうか?」

カミューが聞く。

「犯人は、自分の犯罪が見つからないことによって、悦に入り、だんだんと、行動がエスカレートしていくんだ。でも、その高揚感は私がへし折ってやる」

「へし折るだけに、しとけよ。俺たちじゃあ、お前を止められないからな」

と、セイガーが言う。

「アイ・分かったとだけ言っておこう。本当は、分かりたくないがな。半殺しぐらいならいいか?」

「辞めておけ。王宮騎士団が悪く言われる」

「何、陰でやれば」

「人の噂はどこからかわく。辞めておけ」

セイガーの言葉にヒジリは納得する。

「そうだな」

などと言う。

だから、このとき、そこにいたセイガーとカミュー、ザキは気づかなかった。ヒジリの怒りのほどを。

それが分かったのは、もう少し先のことである。

捜査に乗り出した、ヒジリたち。

「俺が囮役をやる」

そう言って、女郎屋に行き、服を借りる。それに、着替えると、カミューは言う。

「綺麗ですね。ねぇ、そう思いますよね? ザキさん」

ザキに聞く。

「ああ。驚いたな」

「ありがとう。でも、ヒラヒラして動きにくいな。女性は、よくこんな動きにくい格好できるよな。さぁ、我々も行くぞ」

「えっ、でも次どこに現れるか分かりませんよね?」

カミューが言う。

「いや、分かる。それは、帝国騎士の巡回する場所だ。次はどこだい?」

「えっと、カーミラル教会のある南地区です」

「お~、罰当たりなことこの上ない」

「まあ、人を殺している時点で、この犯人には、もう、関係ないか」

ヒジリ達は南地区に行く。

「さて、問題です。私は、どうすれば良いでしょうか?」

「人気のない場所とかですか?」

「それじゃあ、犯人の欲求は満たされないね」

「えっ、じゃあどこですか?」

「たぶん彼は、神に変わって粛正しているつもりになっているだろうから、帝国騎士の巡回する場所だ」

「なぜそんなこと?」

カミューは疑問系で聞くが、ザキはハッと顔を上げる。

「そういうことか?」

「えっ?」

「ザキは分かったようだね」

「ああ。全部、犯行直後に帝国騎士団が巡回しているところで、被害者は、発見されている」

「そう、犯人は自分の犯行を見せつけたいんだ」

「そうか、だから次巡回するところに一人でいればいいってことですね」

カミューは、尊敬したように、ザキを見る。。

「そういうこと。じゃあ、そろそろ時間だな。お前ら隠れてろ邪魔だ」

セイガーは、苦笑いしながら、

「はいはい、じゃあ、気をつけろよ」

「おうよ」

そう言って、セイガーとカミュー、ザキは離れる。

「こんなところに、女性が一人でどうしました?」

声をかけてきたのは30前の男だ。

ヒジリは、困ったように言う。

「道に迷ってしまって。私、田舎から出てきたばかりですから、道が分からなくって、大通りに戻るには、どういったら、いいのですか?」

「ああ、それなら、案内しますよ」

「まぁ、親切なお方」

「道に迷っている人を案内するのは、人として当然のこと。大通りより、もっと幸せな国に案内してあげるよ。僕が、とっておきの場所に」

その言葉を聞いた瞬間、ヒジリから発せられるオラーが変わった。

それに、セイガーは気付き飛び出す。

ヒジリから発せられるオーラは殺気だっていた。セイガーは、ヒジリが隠し持っていた小刀を抜く前に、体が動いた。犯人に小刀が届く前に、セイガーがヒジリの手首を掴んで止めた。

「お前の怒りは、分かる。でも、殺しちゃあ駄目だ。償わせるんだ」

「離せ、私が黄泉に送ってやる」

セイガーはヒジリの腕を引っ張ると、その口を塞ぐ。そして、抱きしめる。で、耳元で囁くように言う。

「お前の怒りは分かる。でも、お前が手を下せば、たぶんリンちゃんがお前に、申し訳なく思うぞ。さらに、お前が捕まれば、リンちゃんは今度こそ、施設行きだぞ。そんなことさせるな。お前はリンちゃんを余計傷付けたいのか? あの子は小さい頃に親を流行り病で亡くし、この前、引き取ったじい様が殺された。さらに、引き取ったお前が収監されたら、グレるんじゃないか?」

ヒジリの手から力が抜ける。それが分かると、セイガーはヒジリのお腹に拳を入れた。ヒジリは崩れる。

「良かったよ。こいつがスカートにまだ慣れてなくって、おかげで、俺でも、止められた。本来なら、俺程度じゃ、止められない」

カミューは驚く。

「王宮騎士団の中でも、セイガー隊長の腕は一番だって帝国騎士団の中でも言われているのに」

「こいつが、本気になったら、まず勝てる奴は、いねぇよ。ヒジリさんは、もう次元が違うって思うもんな。勝ちたいとか思えねぇもん」

「そんなすごいんですね。すごいな」

ヒジリに尊敬の眼差しを向ける。

「分かったか、頭の足りない信奉者さんよ。これが、家族や大切な者を殺された者達の恨み。お前は悦に入って、喜んでいたみたいだけどな」

ザキが冷めた表情で、腰が抜けている犯人に言う。

「私は神の命に従っただけだ。これは神が俺にやれっていったんだ。その命に従っただけだ。俺が悪いんじゃない」

「神などいない。もしいたとしたら、お前が最初に粛正されている。それは己がそう思いたいと自分が思っているからだ」

彼は、ガックリ肩を落として、連行される。そのときカミューに耳打ちする者がいた。

「本当ですか?」

カミューは大喜びで言う。

「リンちゃん、命を取り留めた、そうです」

「よかった。これで死んでたら、本当に恨まれそうだもんな」

セイガーは笑いながら言う。

「でも、ヒジリさんに、キスなんてよくできましたね? まぁ、あの格好していれば、見た目はそこらの女より可愛いですけど、中身はあれですよ」

ザキが言う。

「そうなんだよな」

ポリポリ頭を掻きながら、セイガーは言う。

「でも、殺されるのは目に見えているが、あいつに、どうして、止めるのかを納得させる必要があった。そう言うときには、この手が一番有効だとは、思わないか、セイガー君?」

「まぁ、確かに。でも、起きたときが、怖いですね」

「そうなんだよな」

そう苦笑いしながら、言って、王宮騎士団にヒジリを連れて帰り、自分のベッドに寝かせる。

「怖いな。1発ですめば良いが」

セイガーは苦笑いで言う。

「3発だな」

ヒジリがそれに、答えた。

驚いたように、セイガーはヒジリを見る。

目覚めると、直ぐにヒジリはセイガーに怒った。

「何で、止めた? あんな奴、私が殺したかったのに」

セイガーの胸を叩く。セイガーは黙って、それを受け止める。泣き出すヒジリを優しく抱きしめる。

「リンちゃん、助かったぞ」

その言葉に、ヒジリは、セイガーの胸にもたれ掛かる。

「止めてくれてサンキュー。リンにこれ以上、辛い思いをさせたくない。でも、あの手はどうなんだ、あの手は?」

「別にカマトトぶるなよ。今まで、たくさん経験しただろう?」

「俺は口は許していない」

ブスッとして言う。

「じゃあ、大切にしてたのか。それは悪かったな」

「そうだぞ」

「でも、そんなに大切にしてたなら責任とらないとな。もらってやるよ、お前を。それも楽しそうだし」

「何か、違う」

ヒジリが叫ぶように言う。

セイガーは、優しく抱きしめる。

「お前の怒りはもっともだ。でも、お前の怒りを見て犯人はたぶん改心したと思うぞ」

「そうかぁ?」

「ああ、でも、リンちゃん助かって良かったな」

「ああ」

ヒジリも笑って言った。

「リンちゃんの見舞いに行くか?」 

「行く。でも、お前、リンと勝負でも、するのか?」

「う~ん、リンちゃんには、俺も幸せになって欲しいから、取れないな」

「何だ、もう負けを認めるのか?」

「そうかもな」

そう言って、セイガーは笑う。

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