新王宮騎士団13(ヒジリ、リンを引き取る)
一軒の家の前で、ヒジリは足を止める。それは白くって、リンにはまるで夢のような家だった。リンは驚いたように、その家を見る。
「綺麗」
その家を見上げる。
「そんな見上げていると、転ぶぞ。でも、そんな気に入ってくれて、良かった。俺もまだ2度ほどしか、帰ってないんだ。ほとんどが騎士団の部屋で過ごすからな」
「そんな忙しいの?」
そうだったら、申し訳なくリンは思うが、なぜか、ヒジリはそれに顔をしかめる。
「違う。見ても笑うなよ」
「笑うって、何が?」
「入れば分かる」
先に念を押され、リンは不安になった。
だが、リンを待っていたのは、忙しくて帰れないとかではなかった。そこにあるのは、ゴミ屋敷そのものだったからだ。
「ねぇ、ヒジリ今まで、何回帰ったって言ったっけ?」
引き吊りながら、リンは笑って聞く。
「えっと、2回だなぁ」
「それで、何でこんなに汚れるの?」
「しょうがないだろ。俺は片付けるの、下手何だよ」
「下手ってレベルかな?」
「俺には、レベルだ」
「でも、騎士団の机綺麗だったよね」
「あれはジェイが片付けているからな。何せ、あいつは俺の机を初め見たとき、それはそれは怒ったぞ。それ以降はあいつの仕事になっている。あいつは怒りながら片付けてたほどだから、無類の綺麗好きと見たね。ジェイに任せとけば間違いない」
と、勝ち誇ったようにヒジリは言う。リンは思わずジェイさんに同情したが、何も言えなかった。別段、ジェイさんは、綺麗好きでも、何でもないと思うぞ。ただたんに、放っておいたら、ダメだと解ったんだよね、ジェイさん。
「こうなったら、今から大掃除をします」
「えー、今日は家具買いに行こうよ。掃除は明日にでも」
「私の家具がどれくらい置けるかまるで分かんないじゃない」
「あっ、それは大丈夫。2階は買ったときのまま綺麗だから、何せ上まで行く気力なくって、行ったことないから」
「私は、同じベッドで寝れるかもって思ってたのに、ヒジリは違うベッドに寝るつもりだったの」
目をウルウルさせて聞いて来る。
「クソ~」
ヒジリはそう言って、髪をかき揚げる。
「同じベッドで寝る予定だよ」
「あ~、良かった。じゃあ、二人で寝る部屋作ろうね」
と、リンは何かに目覚めてしまったようで、二人はそれから掃除に追われた。
ヒジリはいるものと、いらないものに分けるように言われ、全部いると答えたところリンはニッコリ笑って、そういらないんだと、ゴミ袋にまとめだした。
さすがに、それにはヒジリも待ったをかける。
「これで、分かったでしょう? ふざけたことを言うと、私は全部捨てるって」
ヒジリは、コクコクとそれに頷く。