新王宮騎士団11(サラの苦しみ)
その後彼らとも別れ、ヒジリは路地裏に行く。
「やはり君なら、ここだと思ったよ、サラ」
そこはヒジリとサラが初めて出会った思い出の場所。
「すまなかった。君は俺に何度も助けてと送っていたのに、気付くのが遅すぎた。命一杯、お前は傷ついてる。やってるとき辛かったんだろ。だから、カーミネもお前の刃を自ら受けたんだ。カーミネは剣の達人だ。作るだけじゃなくな。カーミネが普通殺られるわけないんだ。火事の現場にワザとこれを置いたのも、俺に気づいて欲しかったからだろう? もう、どうしようもないとこまで来てるんだな?」
確認するようにそう言って、ヒジリは金の鎖を出す。
「こんなおもちゃまだお前は持ってたんだな?」
サラはプーッと頬を膨らませる。
そして、サラは鎖を大切そうに、ヒジリから取り返すと、大事に持った。
「失礼ね。私の宝物よ。それをヒジリでも悪くなんて、言わせない」
それを聞き、ヒジリは苦笑いする。
「それは、失礼した。でも、もっと良いものを上げれば良かったな」
「ううん。これが良いの。だって、あの頃の私達には十分相応だったでしょう? すごい背伸びしたもの」
「そうだな」
ヒジリは笑う。
あの頃のサラの生活を鑑みると、そうかもしれない。でも、ヒジリは裏家業でずいぶんあの当時にも稼いでいた。だが、サラに合わせた。
それほどあの頃は、サラは貧しかった。そこから、サラは努力して、自分の力だけで乗し上がった。乗し上がるのと、平行して、ヒジリも自分の仕事を話して言った。そうしたら、サラはヒジリを手伝いたいと言い、気付けば町の自警団を結成し、ボスにまでなっていた。
「情けないわよね。こうなって見て初めて自分が全く動けなくなることに気付いたわ。でも、私どうしたら良いのか、もう本当に分からなくなっちゃった。どうすれば、良かったのかな? どう思うヒジリは?」
サラは首を傾げる。
「俺に遠慮などせずに、泣き付けば良かったんだ?」
「それは無理だよ」
「どうして、無理なんだ」
「だって、ヒジリ普段から忙しそうだもん。ジェイ君にだけ、仕事を割り振っていないでしょ。その前に事前に確認をヒジリはしているでしょう。ジェイ君に危険が及ばないように」
「こりゃ参ったな」
ヒジリは頭を掻く。
「これでも、この国の自警団を結成している者よ」
「だから、お前は使われたんだ。だってお前なら、町の住人を人質に取りさえすれば、逆らえないからな? 足元を見られたな」
「何か。バレバレか? でも、どうしてそれを」
サラは驚く。
「お前がやるとしたら、そう言う状況に追い込まれたときだけだからな。今回は問答無用に、やらざる負えない状況に持っていかれたな。お前は、何度も私にSOSを発信していたのに、全然気付かなかった。これは、俺の落ち度だ、こんなことをさせて、すまない」
「うんうん。ヒジリは忙しい人だもん、仕方ないよ。カーミネさんも理由に気付いて自ら、私の剣を受けてくれた。キラちゃんに、ごめんなさいと伝えて」
「ああ、自分で伝えろ」
「えっ?」
「そのぐらいの時間は十分にある。なんせ、お前は死んだことにするだけだからな。王宮で匿ってやるよ」
ヒジリはニヤリと笑う。それにサラはビックリする。
「えっ? 王宮で」
「ああ。凄くリッチな生活ができるぞ。それで、今回のことが、チャラになるとは、思わないがな。って言うのは、建前で王宮騎士としては、お前を野放しには出来ないんだ。またいつ、使われるか分かんないんだからな。だからお前の身柄をこちらで預からせてもらう。つまりは拘束だな。お前には、不自由を掛けるがな」
「うんうん。私がもう傷つかないように、ヒジリは考えてくれたんだね。拘束何て言葉を使って優しいね」
「お前は本当は、俺に止めて欲しかったんだろ。お前にこのような仕事をさせた人間を俺は、絶対許さない。お前の敵は絶対とってやる」
ヒジリは闘志を燃やしながら、言う。言う。