新王宮騎士団1(騎士は大変なのね)
まことしやかに流れる噂。
それが嘘なのか真なのかは、誰にも分からない。
でも、その噂は消えることはなくずっと語り継がれていた。
【体の一部に逆星の模様のアザを持つ者
その者、その存在を神にも見放され
故に、黄泉への国の旅立ちも許されず
現世をさ迷うこととなる】
何故、そんな痣を持つ者がいるのか?
それは、許されざる罪を犯した代償。
どんな理由があろうとも、神には関係ない。でも、その罪を犯した者には、国を守りたいと確固たる理由があった。
だから、後悔はないだろう。
その痣を持つ者が『王宮騎団』内部にいるとまことしやかに流れる噂があった。
ここで、王宮騎士団の仕事を簡単に説明しよう。
仕事は多岐に渡り、王の身辺警護はもちろんのこと、遠征にも行ったり、使者として他国を巡ったり、その国の情勢を知るべく時には隠密活動や密偵に勤しんだりと、つまりは程の良い、雑用係だと、ヒジリは思っている。
ヒジリとは、王宮騎士団に最年少(?)で合格した子だ。
普通は二十歳の人がなる。その中、ヒジリは十五(?)でなり、騎士として、動いてる。
その子の髪は任務に支障をきたさぬ程度に長い髪だ。
みんなが短く刈揃えている中、ある意味異様だった。
長いといっても、ヒジリも顎にかかるくらいの長さに伸ばし、前髪も横と同じくらいにしているだけだ。
髪はオーソドックスな黒だ。
顔は綺麗な顔立ちをしていた。が時たま見せる鋭い目には、怖いものがあった。
でも、多分、黙って立っていることさえ出来れば、食うに困らないだろう。
だが、残念、ヒジリは黙って立っていることができなかった。
ある意味正直なのだ。だから、初対面で平気で他人を批評しちゃうし、オブラートに包むと言うことを知らない。
だから、ヒジリの居場所は、この国では王宮騎士団しかないと言えた。他で働こうものなら、忽ち追い出されたことだろう。
が、華々しいのは名ばかり、その活動は名とはうって変わって、地味である。
ものすごく地味だ。
でも、国の中枢に関わる大事な仕事、故に彼らに求められる基準は、果てしなく高かった。
年齢や性別、人種といったそういうものは求められない。
その代わり求められるのは、実力、知力に口の硬さである。
特に口の硬さは一番試験でもためされる、3日3晩拷問が続きそれでも吐かないか試される。
はっきり言って、きつい。
あれは、ヒジリの場合何度、その時に手が出そうになったことか? 分からない。
手を出さなかった己を褒めてやりたい。
そのぐらい重要事項に携わっているということだ。
同じ騎士団同士でも情報のやり取りは、堅く禁じられている。
どんな状況に陥っても、情報は吐露してはならない。
それらを審査するため、試験は2ヶ月もの長きにも及ぶ。
その時、試験官をしていた者に、『何度殺意をヒジリから感じたかわからない。怖かった』と言っていた(笑)。
それを聞き、ヒジリは『別に本当に殺すわけないでしょう。試験なのに』と言ったら、『そうは言うが、本当に怖かったぞ。まるで、俺が試験受けてるみたいだった』と言われヒジリは思わず、笑ってしまった(笑)
試験はとにかく、長い月日が必要な為、毎年は開かれることはない。
なのに、抜き打ちのように開かれるのにも関わらず、試験が行われるとなったときには、どうやって知ったのか受験者数が1万人を越えた。つまり、子の受験の開催こそが、もう試験は始まっていると言える。そう試験会場に着くことこそが、第一次試験と言える。ここで過半数が落ちる。受験者数に対し、合格者数が100人にも満たないことを思えば、いかに狭き門かわかると言うもの。
つまりは、この国で王宮騎士と言えば、エリート中のエリートと言えた。
でも、名に騙されては、行けない。
地味だがどれも、国の中枢に関わる、重要なもの。




