北海道
その年は流氷が思いのほか多く、実はプレートに乗っかっているだけの北海道は流氷の度重なる衝突により、ざざざと大平洋に流れ出てしまった。
当然領海やら領空の絡みがあるから、他国から「侵犯問題だ」と批判され、スクランブルした戦闘機がわんさか寄ってきた。しかし、北海道の言い分によると「舵が取れない! 大変だ!」という状況なので引き返すこともできない。折しも当時、「自衛軍」と呼称が変わり完全に「軍」となってしまった旧自衛隊が大集結して北海道で演習をしていたので、スクランブル機の威嚇射撃に「つい」反撃してしまった。
こうなってしまっては各国も北海道の流出を「侵略行為」とみなさざるを得ない。もちろん、北海道も国土と不幸な自然災害に見舞われた国民を守らないわけにはいかない。「都市型決戦艦・北海道」と呼称を改め、旧日本海軍が誇る「大和」を意識し四十六センチ超級の砲台を海岸線に並べ戦闘に備えた。大艦巨砲主義の復活である。ここに一大海戦の火ぶたが切って落とされた。
まず、血祭りに上げられたのがハワイ諸島。大戦時とは違い奇襲ではないので米軍も大戦力を集結し抵抗する。が、戦闘序盤に流れミサイルが「ハワイの爆弾庫」キラウェア火山に着弾し噴火。ハワイ陣営は戦闘どころではなくなってしまい、歴史的な大敗を喫する。北海道大本営はこの圧倒的な勝利を「土地としての資質の差」と大々的に発表。便乗するかのように、いかに北海道が「観光地」として優れているかをアピールした。
しかし、その大きさから土地全土は守りきれない。米海軍に徐々に押されはじめる。
ここで、「北海道を見捨ててはならぬ」と日本の各島が立ち上がった。北方領土はすでに流氷で沈んだが、「日本の足跡」対馬、「双胴の麗艦」佐渡島、「キョンは本当にいるのか?」八丈島、「神の御座船」厳島などが駆逐艦・護衛艦として参戦。ちなみに、大戦力かつ本家「基地の島」沖縄は立場上静観の構えを見せる。
大小の島多数が馳せ参じたことで、北海道を旗艦に見事な艦隊陣営が組まれた。以前より小回りが利くようになり、米海軍の木っ端艦隊など大質量で蹴散らした。航空兵力も南雲艦爆サーカスもかくやの活躍で制空権を確保。超長距離からの弾道ミサイルも叩き落とす。潮流に乗って太平洋を一周するうち、アメリカ西海岸にも多大なダメージを与える。「やっぱり観光地は北海道! 北海道最強」と大本営は得意に喧伝した。「面白くない」と艦隊を離れる島があり、苦境に陥ることもあったが、北海道は何とか元の位置に戻って上手いことプレートに乗ることができた。ここに、内外ともに遺恨だけ残して大戦は集結を見るのだった。
ただし、あれだけ「観光地的に優れた点」をアピールし、大戦果を見せた北海道の評判は今一つ上がらない。旧大本営は「戦争効果」をプラスアルファとして期待したのだが、もともとの観光資源が戦闘と急激な気温変化で失われてしまったのが痛恨だった。あまりにも北海道のイメージが変わってしまったのだ。
それでも、道産子は「北海道は北海道」と、変わらず、もとのさやにおさまったふるさとを愛している。
おしまい
ふらっと、瀨川です。
深夜真世名義で他サイトに発表したことのある旧作品です。
太平洋の海流は時計回りだよなぁと思いつつも、まずはハワイ、んでもってアメリカ西海岸なのです。




