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嘘の告白  作者: かっきー
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八話 転校生

屋上でHRのチャイムが鳴り、笠井を教室へ送っていった。そして、メールで高山から部室に来るように言われたのでHRはサボって、軽音楽室の部室へ向かった。


「(あいつ・・・大丈夫か)」


正直、教室へ戻ったとき一瞬静まり返ったことを考えるとやはり彼女は場違い感を出させる。だが、大西と前島がフォローしてくれたので多少安心した。そんなことを考えているうちに、部室についた。


「よっ、早見悪いな」


そういって自分のギターの弦を張り替えている途中だが、早見の表情を見ると一旦手を止めた。


「どうしたんだ?」


「・・・・・・」


早見の表情から不安感が伝わってくる。確かに先ほどの件はあまりよろしくないものだ。だが、何も話さないので高山はまた自分の作業に戻ってしまう。


「よし、終わった・・・まぁ、言えないならいいんだけど。ンでコレな」


弦の張替え作業を終えた彼は紙を渡してきた。入部届けだ。そういえば歓迎会的なものはやったが正式に入部はしていなかった。


「これ、笠井ちゃんに渡しといて、俺アドレスとかしらねーから」


「はい、わかりました・・・」


「・・・なにか言いたげだな?」


「いや、特に」


「なんかあんだったら言えよ。後輩」


高山はそう言い残し、部室を出た。



そして、HRが終わる前に、教室に戻ってきた早見は教壇に立っている一人の女生徒に驚いた。それは記憶に新しい。今最も気になっている人物。


「桜井春香です。よろしくお願いします。」


「!?」


桜井春香・・・以前笠井の家に行ったとき、帰りに声をかけられ、意味深なことを言われてしまった。それ以降笠井玲奈について知るならば彼女・・・桜井春香を見つけようと思っていたが、まさか転校してくるとは思っていなかった。早見は彼女を見ているが、彼女の目線は笠井のほうをチラチラ見ていた。



「桜井さんは、あそこの席でお願いします」


「わかりました」


担任に言われた席の場所は偶然にも早見の左隣の席だった。桜井はこちらをチラッと見たが、黙ったまま席に座った。


そして、そのまま一時間目の前の休み時間。桜井春香と話をしたかったのだが、チャイムが鳴った瞬間担任の先生にどこか連れていかれたので話すことはできなく、そのまま一時間目の英語の授業が始まった。


「早見くん、今日来たばかりで、教科書がないの。見せてくれますか?」


早見とは面識がないかの様に振るまい、机を早見の方に持っていきくっ付けた。初日だし、無いのはしょうがないと思っていたが、彼女のカバンからはしっかり英語の教科書が見えていた。


「自分の教科書あるならそっち使えよ」


そういって持っているシャーペンで彼女のカバンを指すが、取り出すことはせず逆にカバンを閉めた。


「バレました?」


そう言われたので机を離そうとしたのだが、無理やり止められると今度はノートとシャーペンで何か書き始めた。


「(笠井さんとはどうなの?)」


「なんだよ?」


そういうと指でノートをトントンとつく。授業中ということもあるので、筆談をしたいようだ。


「(命は大切じゃないの?)」


「なっ!?」


筆談と決めたばかりだが、驚きのため授業中にしては注目を集めてしまう声量になってしまった。


「んっ?どうした早見?」


「い、いえ、何でもないです」


先生に注意されるが、とりあえず誤魔化し、桜井のほう見てみると真面目に授業を受けている風になっている。実際はさっきの筆談ノートに何か書き足している。



「(それで?貴方は玲奈のなんなの?)」


「(いや、むしろこっちが聞きたい。何を知っているんだ?)」


「(それは後に話す)」


「(じゃあ、こっちも後で話す・・・ってもしょうがないし交換条件だ)」


「(交換でいいですがこれを言ったあと、あなたはこれまで通りに笠井さんといられる?)」


「(どういう事だ!?)」


「(まぁ、昔ちょっと)」


「(お前は笠井のために転校してきたのか?)」


「(いいえ)」


「(じゃあなんで?)」


「(問の四番)」


「はぁ?」


「早見、問四の答えは?」


「え、っちょ!?」


筆談に熱中していたせいか、今、どこの問題を言われているのかわからず、とりあえず、教科書を眺めてみる。問の四番と言っていたので関係代名詞の四択の問題だ。そして先ほどの筆談ノートには②が書かれていた。


「に、二番!!」


「正解。ここはWhichを使う場面で・・・」


「ふぅ・・・さっきの話だが・・・」


安堵の息がもれ、先ほどの筆談をつづけようとしたのだが、桜井春香はそっとそのノートを閉じて、早見をちゃんと見てこういった。


「知りたいのなら放課後に屋上に来て」


「・・・わかった」


それからの授業はすべて自分の席で自分の教科書をちゃんと開き真面目に受けていた。



そして、何事もないまま昼休みに入り、いつも通りの早見、前島、大西三人組で昼食をとる。ちなみにこの学校は高校でありながら学食がない。なので基本皆弁当。一応惣菜パンの自動販売機があるぐらいなので、ほとんどの人は家から持ってくる。


「じゃあ、部室行くか。あそこなら駄弁れるし」


普段この三人で食べるとしたら教室か部室のニ択になる。


「そうだ・・・せっかくだから笠井も呼んでいいか?」


「かまわないぞ・・・つかそんなこといちいち聞かなくてもいいだろ?もう部活仲間だし」


「それもそうだなー実際、俺あの子のことあんま知らねーし、好感度アップさせる機会は欲しい」


「・・・ありがとな。じゃあ俺呼んでくる」


せっかく新しく軽音楽部に入ったのだ。なので彼女を誘ってみたい気持ちがあったのだが、二人が承諾してくれるかは不安であったが、そんな心配は要らないようだった。


「笠井!大西と前島と一緒に飯食わないか?」


屋上へ向かう途中の笠井を呼び止める。だが、彼女の隣には先客がいた。


「・・・早見君、後で連れて行くから少し待ってて」


「早見君・・・後で伺います」


そう言い、桜井に引っ張られる形で屋上のほうへ連れて行かれた。桜井曰く、後で連れてきてもらえることなので部室へ向かった。



「ん?いなかったのか?」


「後で来るって」


「へぇ~じゃあ先に食おうぜ」


そして、話題は転校生桜井春香のことだ。


「大西さんよ〜転校生の娘はなかなかかわいらしいんじゃない?」


「結構かわいい系だよな。早見はどうだ?結構ありな感じだよな?」


「あ、ああ、そうだな」


正直、今の笠井や放課後のことが気になって昼食が上手く喉を通らない。そればかり考えているせいか二人の話があまり入ってこない。


「そういや、笠井さん遅くないか?」


確かにもう昼休みの三分の二あたりの時間になってしまっているが、彼女が来る気配は一向になかったが、大切なことを忘れていた。


「・・・場所伝えてない」


あの時は、桜井が勝手に連れて行ってそれを言い忘れていたので早見が呼びに行く。たぶん屋上で話が終わっていたのなら教室にいるのだろう。とりあえず屋上へ向かってみる。そして屋上の扉の前で一人の男性の姿があった。



「おや、早見くん」


「・・・高木」


高木は一度屋上で会った彼は、何を考えているかわからないやつだ。それに笠井を調べようとしているので何をするかわかったものじゃない。


「どうしたんだい?」


「笠井を探しているだけさ」


「屋上にいるよ。入るには勇気がいると思うけど」


「どう言うことだ?」


「見ればわかるよ」


そういって高木と覗き込みながら扉を開け、早見もそれに続く。笠井玲奈と桜井春香がで対峙しているように見える。


「玲奈、さっきと同じ質問するけど・・・学校で何かやられてるの?」


「・・・・・・」


「だんまりじゃわからない・・・昔のこと?」


「・・・・・・」



桜井が質問しているが笠井は俯いたまま何もしゃべっていない。ただ、良い雰囲気ではないことは目に見えている。


「過ぎたことは仕方がないし・・・私はずっとあなたを心配して・・・」


「止めてください」


「心配?・・・何を言っているのですか?」


笠井玲奈がようやく口を開いたと思ったが、


「昔から、あなたは私を助けてるのが自己満足だったんでしょ」


今まで聞いたことのない声。彼女の静かな怒り声を初めて聞いた。遠くから聞いていたが、驚きを隠せない。普段の彼女から考えられないことも含めてだ。


「違・・・」


「違わないでしょ!!毎回毎回・・・私が何かあったら助けてとも頼んでないのに!!」


「ちょっと玲奈・・・落ち着い・・・」


「黙って!この・・・偽善者!」


「えっ?」


その瞬間桜井の表情が一気に強張る。だが、笠井はそれを気にせず言いたいことをぶちまける。そして次の瞬間衝撃的なことを口にした。







「私の父親が犯罪者のことを知ったときから私にまとわりついて!!」


「そんな・・・そんなつもりないのに!!」


強張った表情は次第に泣きそうになっていく。お互いに冷静になっていないのか、どうしようもない状況だ。


「私はもう早見君しか信じられない!!」


「・・・もういい!!」


そう吐き捨ててダッシュで屋上を出てきたが、その瞬間彼女の涙を拭く動作が見えた。確かに、彼女は相当ショックだったのだろう。そして、一つの衝撃的な発言。


「父親が犯罪者ね・・・だって、早見君」


高木にそう言われるが、情報量が多すぎて制御しきれてなくその質問には答えられずにいた。


「それで、君はどうするんだ?彼女は君しか信じられないようだけど、確かに、いまの場を見て平然とはいられないよね」


「とりあえず・・・行くか。なぁ、高木・・・お前はなんで笠井を調べてるんだ?」


「前にも言ったけど・・・興味深いからさ」


そう言うと、階段を降りていた。そして早見はどうしよう考えていたが、ひとまず笠井に今来たかの様に振る舞い、近づく。


「笠井、さっき、場所いい忘れてたから・・・」


「いつ頃からそこに・・・」


「いやっ・・・さっき来たばかりだ」


「そう、ですか・・・」


父親が犯罪者ということ笠井のいじめの原因、また、成宮に脅されているのはこれのことが関係してるのだろう。そして、桜井、あいつのと関係性を知りたかった。


キーンコーンカーンコーン


「チャイムなっちゃったか」


「お腹空きました・・・」


「あとで食べればいいか、教室に戻ろうぜ」


「・・・はい」


満面の笑みで返してきたが、この笑顔には何かいつもとは具体的に言えないが違う感じがした。

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