六十話 覚悟
私は…その場に居られなかった。前島君の言ってることは認めたくないが正解だ。側にいる資格…確かに考えてみればない…甘えすぎた。全て、私が悪かった。何故、こうなったのか、屋上から飛び降りようとしたことが…早見くんに大怪我と記憶喪失になり軽音楽部はなくなった。
「ほんと…私は…なにやってるんだろ…」
下を向いたまま病院を出る。そこで見知った顔に出会った。
「あれ?彼女さんじゃん、どうした?早見のところ行かないのか?」
「あっ…看護師の…」
「オッス。オラ看護師!」
何でサイヤヂン?
「んで…なにやられたんだ?お目目真っ赤っかだぞ~」
初めてあったときもそうだが、この人はやたら子供扱いしてくる。
「いや、その…」
言おうかどうか迷っていたら声が聞こえた。そこにいたのは
「っと、何やってんだ?」
「おっと!彼氏さんのご登場か、ちぇ、口説こうとしたのに」
看護師さんはわざとらしく振る舞う。
「そんなことしたら許しませんよ」
「ハイハイ、んじゃ、俺は仕事に戻るわ」
チャラチャラとした態度で彼は去っていった。
「あの…」
二人になった瞬間気まずい空気が流れた。前島くんにあんなことを言われた直後だからか…
「あのなー、見舞いに来たならもうちょいゆっくりしてってくれよ。病院暇なんだぞー」
相変わらず変わらない態度で接してくれている。本当に優しい人だ。今更だがこの人が彼氏って思うととても幸せだ。だけど、私は早見くんの何もかもを奪った女。部活も記憶も…
「あの…早見くん…」
そう…私は決心した。私は早見くんにとって邪魔物でしかない。前島くんに言われた通りだ。そばにいる資格は…ない。
「別れましょう」