五十三話 違う誰か
学校へ向かっているが…なにやら、良からぬ空気が漂う。
学校に着き校門の前に妙な張り紙がはってあった。そこには…
「早見を入院させたくそ女。笠井玲奈」
「………」
だが、笠井はそこまで驚かなかったみたいだ、だって、事実だから。
教室に入るや否や何かしらの罵声を浴びせられる。だが、耳を傾けたりなどはしない。
「おい!!やめろよ!!」
声をあげてその場を静めたのは前島だ。
「だいたい、実は早見にも責任があってだな。アイツはひでーやつでな。それがな…」
「嘘の告白をした…だろ?」
視線は別の方に向かれる。そこにいたのは大西だ。
「確かに…したな」
「そうだろ?だったら何やったって…」
「お前…本当に堕落したな。クズ」
その台詞にプチんと来たのか…
「あのな…テメェ」
「吠えたきゃ吠えてろ…クズ」
「こんにゃろおぉぉ!!」
殴りかかってくるが…
そのパンチを軽々避けると
「歯ぁ食いしばれ!!」
「ウボフッ」
簡単にカウンターを決められてその場にうずくまる。
「笠井…ちょっと来い」
「えっ?」
笠井の手を無理矢理つかみ教室から消えていった。
来た場所は屋上だ。そこでようやく手を放してくれた。
「あの…」
なにか声をかけようしたとき、大西の口が開いた。
「お前…今でもアイツが好きか?」
「はい。もちろん」
当たり前かのようにそう言って見せると
「そうか…なぁ、この張り紙はみたよな」
そこには今朝校門でみたやつだった。
「実はだな…嘘の告白の言い出しっぺは俺…なんだよ」
「えっ?」
「対戦ゲームをやっていて、それの最下位のやつが告白をする。そんなことやってたよ。だが…その結果、こんなことになっちまった」
「だから、スマン」
そう言って土下座をした。
「その構いません。そんなことは…それよりも前島くんって…」
「アイツは…お前が好きすぎてヤバイ状況だ」
「そうですか…」
「そこまで驚かないんだな」
「実はこの前の会話を聞いていましたので」
「それとこのビラだが…また成宮だろう。なんか、あいつも終わっている」
「またビラ回収か…」
「前回は授業サボってまでやってたから…どのくらいかかるか…」
そんなことを話ながら廊下の壁に張ってある。ものをとっておく。
その作業をしていると、
「成宮…」
なにかごみ袋らしきものを二つ持っていた。
「またこんなことしやがって…」
すると、ごみ袋の中身を見せる。
「一階と二階はもうない。やるんだったら、三階だ。」
そこには今朝のチラシが入っていた。
「いっておくけど、今回は僕じゃない。違う誰かだ。」
そう言うとスタスタと歩いていった。
「違う誰かだと?」
呼び止めようとしたが成宮は答えずに階段を上っていった。