四十九話 怒り?
「ここが…」
私は今、早見くんの言っていた、バーに来ている。ここに…あの人がいるのだろうか…
怪しい雰囲気、お客さんは誰もいない。お店の人だけだ。
「いらっしゃい…高校生とは…また、あいつに関わることか?」
「永岡堅太…ですよね…」
「お嬢の名前は?」
「笠井…玲奈…」
「………」
お店の人は黙ったまま私の顔を見てきた。驚きを隠せない表情…知っているのだろうか。私のこと…
「八時くらいにもう一回来な、そしたら会える。だから、今は帰ってくれ」
そう言われて、私はバーを出ていった。
私は学校に戻ることにした。どんな扱いをされるかわからないけど覚悟して行った。
時刻はまだ昼休みになったところだ。教室にいく途中には春香のときみたいな張り紙はなかった。
ガラッ
教室に入る。教室にいるおそらく全員がこちらを見た。だがそんなことは気にせず机に座る。
すると…
「よぉ、笠井!飯はまだか?」
突然声をかけられた。その人は…前島くんだ。
朝のことがあったせいか気まずい…
「チャンスだと思ったんだよ!!二人を引き離すにはあのタイミングしかないと…!!」
この言葉が脳裏によみがえる。なんだろう…不安?…違う…恐怖?…違う…怒り?
「イヤー昨日はあんなこといってごめんな!!そんなわけで飯食いにいこう」
勝手にあのときのことを謝られ、無理矢理連れていかれた。場所は部室だ。
「イヤー、早見のやつがいないってのも寂しいな…」
落ち込むように言う。実際思っているのか、そういった方がいいと思っていってるのか分からなかった。朝の大西くんとの会話を聞いていなかったら、どうとっていたのだろうか…
「そうですね…」
とりあえずそう返事を返しておく。
「やっぱりショックか?そういや、今日の午前中どこいってたんだ?」
「えっと…」
とりあえず話せることは話した。早見くんの記憶喪失、(私以外…まだ詳しくは知らないけど)当たり前だが、朝のことは話してない。あと、バーの事も
「そっか…記憶喪失ね…なんか実際にあるんだな」
彼は実際にそう思ってるのか…分からなかった。ラッキーとか思ってるんだろうか。分からない。心を読むことが出来るはずがない。
「なら、俺と一緒にいくか!!早見のところ」
「すみません今日は…別の用事があります…」
「そっか、しょうがねーか」
「今日の部活は休みます。すみません」
申し訳なそうに言うと、まさかの言葉だった。
「あれ…知らないのか?何ヵ月か休部になった…」
「えっ!?」
なんで…私のせい…なんで…私…いや、誰のせい?
「すみません。失礼します」
そう言って駆け足でその場を去った。
「おい!!…ったく、うまくいかないな…」
頭を掻きながら窓の外を見た。
「はぁ…どうすりゃいいんだ…俺の…クズ」
自虐的になりながら教室に戻った。




