四十八話 あれ?
ひとまず、目の前には早見くんの病室で、隣には生活指導の先生。
入ると…
「…あれ?」
子供たちに囲まれてトランプをしていた。
「ん?お見舞いに来てくれたのか?」
「おにーちゃんの番だよ!!」
「ハイハイ、っとババ引いた!」
なんか…昨日よりテンションが非常に高い。いつもの早見くんだ。
病院にいる子供たちの面倒を見ているのか…
「ねー、この女の人誰?」
「俺の彼女だ」
「フーーン」
一人の女の子がトランプを置いて、こっちに近づき、ジーっと顔を見られる。
「かわいい…」
そう呟く。
すると、背にあるドアが開いて…
「早見さん、朝食の時間です」
昨日の男の看護師が朝食を持ってきた。
「お…昨日の彼女だ」
「はい…」
「ほらほら、みんなも朝食の時間ですよ。自分の部屋に戻って下さい」
パンパンっと手を叩き指示をする。
すると、子供たちは各部屋に戻っていった。
「よし…彼女が食べさせるのがこの場合フツーだな」
と言ってお盆を渡される。
「えっ?」
「じゃ、俺、別の仕事あるから」
そう言うと、部屋を出ていった。
「昨日とはテンションが違いますね」
「ああ、花に俺はもっとこうこうでこうとか言われたからな」
「確かに、もとの早見くんみたいです」
「そうか…だがすまないが、お前の事は思い出せないでいるんだ…すまない」
「大丈夫です。徐々に思い出していきましょう」
私はにっこりと笑いかけた。すると、後ろから…
「忘れないでくれ…」
生活指導の先生が寂しそうにこちらに声をかける。
「昨日のこと…覚えてるか?」
「昨日は…あれ?文化祭」
「そうだ、君は何をした?」
「なんか…怒っていた。後、すまない気持ちで一杯だ」
「そうか…君は文化祭の後何をした?」
「…なんかしたんだよ…でも…わかんない」
「そうか…わかった。今は治療に専念するように」
そう言うと、生活指導の先生が出ていった。
「私も…学校が…」
笠井が去ろうとすると…
「待ってくれ…そばにいてくれないか?」
「えっ?」
早見からとても恥ずかしい言葉が飛んできた。
「学校は休んでさ、飯食べた後…なんか…その、俺が文化祭に何をして、お前に何をしたのかを教えてほしい」
「………」
私は答えられずにいた、なんか…いっていいのか…いってしまったら、また暴れだして苦しむかも…
「頼む。教えてくれ…」
「実は…私と早見くんの出会いは嘘の告白から始まってしまったんです」
全部話した。言えることは全部さらけ出した。犯罪者の娘のこと、軽音楽部のこと、文化祭でのこと、飛び降りたのを助けてくれたこと。
「いろんなことがあったな」
「はい…」
「まぁ、頑張っていくしかないだろ」
なんか気楽に考えているが
「こんな時には親に相談だろ」
「でも私には…」
「学校の近くのバーにいる。それは覚えてる」
一呼吸置いて
「行ってみたらどうだ?」
「………」
私は黙ったままでいた。怖かった。会うのが…
「なんか…わかるかもしんないぞ?」
「わかりました…行ってきます」
覚悟をして、向かった。