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嘘の告白  作者: かっきー
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三話 現状

早見の部屋に突然朝日が目に入る。誰かが明けたらしいがそれを無視してもう一度寝入ろうとするが、そういうわけにはいかないらしい。


「起きろ!!」


掛け布団を妹に盗られた。もう学校の制服にまで着替えているバリバリ朝型の妹はで朝が苦手な俺を起こしてくる。ありがたい半分荒い。雑。


「だから、俺は7時30分に家を出れば間に合うんだよ」


早見は強引に掛け布団を盗み返し被った。しかしさっきとは別の手がまた引っぺがしてきた。


「おっす〜ゆーくん!!」


「(何で梨子も・・・)」


「私が呼んだの!兄さんが我が儘ばかり言って・・・」


腕を組みながらあきれている様子で早見を見下ろしている。まだ布団にいようとするが今度は敷布団も片づけられた。



「わかったよ・・・起きるよ・・・」


早見はゾンビのようにもそもそと起き上がり、頭掻きながら洗面所に向かった。


「ふぁ~」


大あくびをして顔を洗っていると、ふと昨日の事を思い出した。


「(笠井玲奈か・・・ホントどうしよう)」


バツゲームとして付き合ってしまったとはいえ、俺の本心ではないし・・・なんか、今更嘘なんて言えない。


「いじめか・・・」


早見にとってはこれが一番の難点だった。そして、何故なのかも理由もわかっていない。


「(思いきって聞いてみるか・・・でも、そういうのってデリカシーないとか言われるんだよな・・・)」


そんなことを思っているとリビングのほうから朝食ができているらしくコーヒーは自分で淹れろといわれたので淹れることにする。



「じゃあ、私は生徒会あるからいってきま〜す」


「いってらっしゃい」


ちなみに花は生徒会の書記だ。ぶっちゃけ似合わない。そして、あった朝食をモソモソと食べている間梨子はソファーで寝っ転がっていた。少々目がそっちに行ってしまう・・・あと少しで見えそうなのだが・・・くそ、ずるい。とりあえず、手早く朝食を食べ終わり簡単に洗って戸締りの確認をして学校へ向かう準備をした。


「よし、梨子。そろそろ行くか」


「オッケー」


梨子と並んで軽い世間話をしながらなので早く駅につき電車に乗り込む。


「そうだ!ゆーくんは昨日のことで私に相談はあるかな?」


そういえば、昨日のことから梨子には何か怪しまれているので少し白状することにし、早見は昨晩のメールの一部分の内容を聞いてみた。


「梨子は友達がいないってどう思う?」


梨子は何やら心配そうにこっちを見た。


「ゆーくんいないの?」


「そうじゃねーよ。友達がいないってのはどんな感じなんだろうなって思っただけだ」


「私は・・・」


梨子はそうさみしそうに言うが、こういうことは理解ができないのだろう。友達はいつの間にか何となくできているイメージがあるし、自分から声をかけるかかけられるかで始まって、そこから交友関係が続けばそれなりの関係になることはできる。だが、彼女はそれがないらしい。


「やっぱ、さみしい・・・悲しい・・・辛い・・・それに・・・」


「それに?」


「笑うってことも難しくなるかな・・・」


梨子が必死に絞り出したのは、確かに事実だ。だが、理解ができていないので百パー正解かといわれればそうではないだろう。


「でも・・・救いの手を差し伸べたら笑ってくれる」


梨子は少し笑った顔をした。それと同時にあることを思い出す。初めて早見と出会ったときのこと。





「返して!」


「やーだよー」


小学校の放課後の教室。二人の女子生徒が残っており、良くないことが行われている。


「なんで・・・なんでみんな梨子をいじめるの?」


「えー、だって梨子ちゃん私の大好きなミー君に告白されたじゃん。だから、ムカつく」


ミー君とはクラスで一番かっこいい男子、足も速くて優しい。その人に告白をされたことに対しての報復らしい。そして、自分のお気に入りのウサギのぬいぐるみストラップを取られてしまった。


「でも、それ、ママが作ってくれたのだから!かえぢてよぉ」


「うっわなきだしちゃったよ」


そうバカにするよう笑うが、教室の外から一人の男子生徒が飛び出してくる。


「かえしてやれよ!ひきょうもの!」


そういうと、彼はストラップを掴み取り替えそうとしてくれたが相手も離さない。そして、引っ張りあいになっているので、糸がブチブチっと音を立てて顔と胴体がちぎれてしまった。


「あっ・・・」


「わ、わたしはこわしてないからね!」


そう全ての責任をその男子生徒に押し付け逃げるように教室を出ていった。


「グスっ・・・うわぁあん!」


「・・・ごめん」


彼が謝る必要なんてない。でもそれ返答できないくらいわたしは壊されたことが悲しかった。


翌日、もう学校なんて行きたくなかった。家に引きこもる。悪いこととはわかっているがサボろうと思っていた。ベッドでくるまっていると母親が声をかける。


「梨子ちゃん、学校のお友達が謝りたいって・・・」


そういって母親が案内したのは女子生徒・・・ではなく、あの男子生徒だった。


「その、下手くそで、ごめん」


そう言うと昨日壊されたはずのストラップ、首と胴体が繋がった状態でが戻ってきた。しかし、縫い目はチグハグで不器用で不気味に仕上がっている。


「・・・あっ」


そして、彼の手が絆創膏だらけであったのに気がつく。お世辞にも上手と言えない出来だ、彼も苦労しながらこれを直してくれたのだろう。


「ありがとぅ・・・ありがとう」


「なぁ、せっかくだから一緒に学校行こうぜ!俺は早見裕也」


「うん、じゃあ、ゆーくんだ」






「ふふ、懐かしい・・・」


「どうした?急に笑いだして・・・」


「別に、そういうことで悩むのってゆーくんらしいって思っただけ、それで、ゆーくんは手を差しのべるのかな?」


別にヒーローになりたいわけでもないが、とりあえず話してみるって言うのはしてみたいと思っているので救いの手を差し伸べるという大げさではないが、少し早見から近づいてみることにした。


「サンキュー梨子。ちょっとがんばってみる」


そして、電車は高校の最寄り駅に到着したので扉が開いたと同時にテンションが上がったのか走り出した、


「え、ちょ、待って!」


梨子も後を追うように走り出した。


「(本当の恋人にはなれないけど!本当の友達なら・・・!)」


早見は決心した。友達がいないなら、俺がなってやると、嘘ってことも言うけど、友達になる。


「梨子!!急げよ」


振り返り、追いかけてくる梨子に手を振った。昔から彼女はやはり、頼りになる人だった。


ダッシュしていて疲れながら学校へ着いた。梨子とは違うクラスなので早見の教室前で別れた。そして、教室に入ると男女問わず、数グループになって世間話をしてた。


「おっす〜早見」


早見の席の後ろでうつ伏せになりながらだらしなさそうに前島が挨拶してきた。


「お~う、前島・・・アイツは?」


「んっ?大西か?」


「いや、笠井」


その瞬間、教室は急に静かになった。そんなにそのワードを言ってはいけないのか、空気が急にシーンとなってしまい少し恐怖を感じた。


「たぶん屋上じゃないか?いつもみたいに・・・」


寝ぼけていたが、その言葉のせいで少し表情が強張っていた。


「わかった。サンキュー」


全員に見られている気がしている中早見は教室を出た。



そして、屋上の入口前に着き扉を開けようとしたとき大きい態度で品のない歩き方をする女子学生が通った。


「全く、あの女は何なんだか・・・いつもは何もせずに渡すのに」


「彼氏出来たって?調子のってさ〜」


「マジキモいんですけど〜・・・昔はあんなことしてたのにね〜・・・たぶん、父親の・・・」


三人組のよくいるギャル。確か、学校でも悪いほうで有名だったらしい・・・まぁ、一目見た印象は話しかけたくないという感情だった。それはさておき、屋上の扉を開けると、笠井玲奈はまた、いつものベンチに座っていた。


「よっ、笠井」


「あっ早見くん・・・おはようございます」


普通に挨拶をしてきたが、少しうつむき加減で何かぼそぼそとしゃべっているが、その俯いた瞬間に違いに気がついた。


「・・・悪い」


少し濡れている。そのせいで、夏服のため下着が透けてしまっている。そして、すんすんと匂いを嗅ぐといちごミルクのようだ。彼女の状況から察するに頭からかけられたのだろう。さらに彼女の両目が少し充血していた。泣いていたのか、いや、こんなことをされたら誰だって泣きたくなる。


「ほら、ひとまずこれで肌隠せ」


そういって来ていたシャツをかのじょにわたす。早見は肌着になってしまうが、今は彼女が優先だ。笠井の隣に座って声をかけるが彼女は泣きそうな声で返事をした。


「私は・・・私は・・・もう、生きているのが…怖いんです。だから・・・私にはあなたしかいないんです。だから・・・」


そういって彼女は静かに泣き出す。昨日、知り合ったばかりなのにここまで依存しているような言動に少し驚くが、決心したので話は聞く。


「なんかあったら俺のところに来い。普段は教室にいるし、放課後は軽音楽部の部室にいるから・・・俺は見捨てないさ。俺はお前の・・・」


友達・・・といいたいが、そういう雰囲気でもないし、彼女の期待を裏切ってしまう。逃げ場を自分から失うが今はこう答えるのが一番だろう。


「恋人だからな」


「ありが・・・とう・・・ございます」


お礼を言っているのだが、途中で涙など鳴き声でよくわからなくなった。


キーンコーンカーンコーン


「さて、教室に戻ろうか」


なかなか立ち上がろうとしないので早見は笠井の手を取り教室に向かった。その時、彼女の顔照れながらも微笑んでいた。

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