二十五話 二日目
翌朝朝食を食べ終え、会場前で待ち合わせをしている。昨日夜ふかしした三人以外はもう集合していて、ようやくその三人もやっと来た。
「ういっす」
「お・・・おぅ・・・」
「なんだお前ら?だらしねぇな」
グロッキーな状態の三人を見る。枕投げに夢中になったのだろう。そして筋肉痛もセット、しかも朝食のバイキングでは調子に乗って朝っぱらから大食い対決などをしたせいだろう。一日中練習なのだが大丈夫なのだろうか。
「にしても・・・練習って言ったってどこでやるんですか?」
各々楽器を持ってきたが、場所はどうするのだろう。ここ一帯は海だ。さすがにゲリラライブということはないだろうが、やれそうな場所はそこくらいしか見当たらない。
「ま、付いてこい」
高山に言われるがままについて行く、歩いて数分のところでボロボロで見た目は呪われたみたいな感じになっている。
「お〜い!!いるんだろ!?」
そんなところの入り口のドアをバンバンと叩きだす。看板をよく見るとここはスタジオのようだが、まだ開店していない様だ。しかし、無理矢理ドアを開ける。
「まだ空いてない・・・って高山か」
奥の方から一人の男性が眠たそうにあくびをしながら出てきた。
「久しいなキャノン」
「キャノン?」
「本名は森本夏音な。とりあえず、5人は使うが2人は見学だ」
どうやら知り合いらしい。前回の合宿でもここを使えばよかったのではないかと思う。
「普通、見学はアウトだからな」
仕方がない、といいたげな感じで部屋に案内した。
「じゃあ、後はご自由に俺は寝るわ、まだ開店時間じゃないし」
あくびをかきながら部屋を出ていく。まだ開いていないのに申し訳ない。
「キャノンさんとはどういった関係ですか?」
「親しい知り合いの弟・・・だな」
懐かしい感じに思い出す。そう言うと高山はポケットに入っているリンゴの絵が入ったピックを無意識にいじってしまった。
「さて!!そんなことはおいといて練習だ!!」
そう言って借りた部屋で各々楽器のセッティングチューニングを始めにstoryを演奏する。笠井の歌は聞けば聞くたび不思議な気持ちになるよな・・・そんなことを思いながらも練習を続けた。
そして、店は開店し徐々に客の姿が見えるようになった。そしていつの間にか昼をまわっていた。結構な時間ぶっ続けで練習していて無意識のうちに時間がすぎていったようだ。
「はぁ、腹減った・・・・」
「どこ行くんすか?」
「近くに有名な牛丼屋。牛丼次郎がある」
システムは食券で大きさは大小。ニンニク入れますか?というオーダーに対して、ニンニク、牛、ツユ ねぎの量とその他トッピングについて聞かれる。店に着くと空いていたのですぐに席に座れた。
食券は男が大。女が小を頼み店主の方から先に男性陣からニンニク入れますか?という質問をされる。
「ニンニクウシマシ」
「ニンニクウシネギマシ」
「ニンニクネギマシマシ」
「ウシネギマシツユオオメ」
「!!?!?!?!?」
男性は高木以外はこのお店を知っているのでオーダーがなれているが一人だけわからなかったので、
「・・・オーソドックスなもので」
一方女性陣、笠井もわかっていないようなので桜井が先にオーダー。
「ネギマシツユオオメ」
「!?!??!!!?」
慣れている。来たことがあったのか・・・笠井何か言わなければならないと考えたのか
「ネギネギネギネ・・・オオメ・・・」
謎の注文をし、それぞれに牛丼が到着する。
一番悲惨なのは笠井のものだ。
「笠井ネギ丼じゃん」
「・・・はい」
面白いことに、ご飯の上に牛肉があるとその上にご飯と同じくらいの量のネギがドカッと置かれていた。
下の肉やご飯が見えない。
「い、いただきます・・・あ、美味しいですね」
そう口にするがすぐさま桜井が制止する。
「玲奈・・・次郎中波会話NG」
各々食べ始めるが会話がないのはそれがルールらしい。なので無口に各々が牛丼を掻き込む。
そして男性陣が完食し桜も完食。一人笠井が店内に残っていた。
「・・・あいつ大丈夫か?」
「さぁな・・・早かったか次郎は」
そう言って高山は近くで買ってきた黒烏龍茶を人数分渡し待っている
「そういや練習中二人は暇だろ?」
二人というのは桜井と高木のことだ。ずっと練習している間2人は話したり見ていたりしているだけだった。
「なら・・・この近くには遊園地がある。こっから少し遠いが、楽しいぞ」
そう言ってケータイでホームページをメールに添付して送る。
「行きたい?」
高木は桜井の方を見る。
「はい!!行きたいです!!」
「わかったよ」
そう言うとせっせと食べ終えた。2人は先に店を出て遊園地に向かった。
「いいんすか?」
「まぁ、高木は桜井のために来たんだからな。それより俺たちは練習だ!!」
残り五人も食べ終えスタジオに戻ることにした。
長々と練習をして・・・
「そろそろ止めにしてくれよ」
夏音が入ってくる。領収書を見せると・・・
「七万・・・と言いたいところだが、七千で構わない」
「太っ腹だな」
「だから、たまには来てくれよ」
少し寂しそうな気がしたが気にしないことにした。
「そうだ・・・2人に連絡しないとな」
高山が携帯を取りだし
「もしもし高木か?俺たちはホテルに戻ってるからな」
「わかったよ・・・タイミングが悪いな」
「なんかあったか?」
「いや・・・察してくれよ」
電話越しではアワアワと桜井が言っている。
「ほ〜、後でたっぷり尋問してやる」
「答えられる範囲で」
そう言うと切られた。
「夜が楽しみだなぁ!!」
帰り道に子供のように叫んで帰った。