二十三話 合宿に行きたいか?
祭りを終えた翌日、今日は久しぶりに部活動に励んでいたが、急に高山の思い付きがまた始まった。
「合宿に行くぞ!!in海!!」
「あー、そう言えばそんな季節ですね」
このくらいの夏休みの時期になり、去年も同じように合宿を行ったので今回もまたやるようだ。
「それに真剣な問題。最近は練習に身が入ってないだろ。ま、遊ぶけど」
確かに、最近はデートやらナンパ大会やら昨日の祭りやら遊んでる。
「でも、仮ですけど・・・宿泊費、運賃、食費に、海となったら足りません」
電卓を取りだし計算した結果。簡単に計算できる部分だけでも部費のみでは足りない。個人負担になってしまうだろう。それはそれでいいのだが高山にはある提案があるらしい。
「昨日の祭りで稼いだ金がある!」
バンッ!!と机に封筒を置く。結構分厚い。
「うっわ、そんな余ってたならもっとくださいよ」
昨日一緒にやっていた二人、姿は見なかったが、祭り内で非常に好評だった。確かに味もうまかった。
「まぁ、いいじゃねぇか!!なら・・・面白いやつ聞かせてやるよ!!こっちこい!!」
笠井と早見を除くメンツで高山はレコーダーみたいなやつをポケットから取りだし・・・
「おぉ・・・やべぇな・・・」
そう言うと、こちらを見てきた。若干にやけてる・・・
「いや〜青春だな!!」
「私は・・・こんなこと言われなかった・・・」
大西と前島はなんかはしゃいでる。桜井は隅っこに行きしょげてる。笠井は頬を赤らめる。
「早見!お前は聞くな!!」
周りから思い切りくぎを刺されたのでその場から少し離れた場所で練習をしていた。その他の部員はほとんどそのレコーダー二集まっていて時間をほぼそれに費やした。
そして翌日。なぜか駅前に軽音楽部全員集合させられていた。
「さて・・・揃ったか!!」
「ありゃいきなりすぎないですか?」
「合宿については昨日聞きましたけど・・・」
「明日から合宿な!!って、無理がありますよ!!」
「と言いながら準備万端だな」
各々大荷物は準備している。特に前島はすでに浮き輪を膨らましている状態だ。
「そりゃ・・・FAXでなんかしおりが出てきたんでね」
一枚一枚をホチキス止めした冊子を見せる。なんか修学旅行みたいだな。そして、軽音楽部以外のメンツも今回特別参加だ。
「何で僕も・・・」
高木も来ていた。たまに部室には来ていたが合宿にまで連れてくるか?
「桜井の水着を見たくないの?」
「いや・・・合宿ですよね?遊びにいく訳じゃ・・・」
「しおりを見たか?二泊三日で初日は遊ぶ」
「初日は自由行動・・・二日目は練習しかしない・・・三日目は・・・午前中は練習して帰ると・・・」
一通り見て早見にしおりを返し。
「やっばり僕が行く理由がない」
「そんなこと言うなよ!!桜井がビキニ・・・」
「だめ!!」
前島がなんか言おうとしたが桜井が口を押さえる。
「ひとまず・・・電車来るから行くぞ!!」
部員たちは急いで電車に乗り込むことにした。
「結局ついていくのかよ?」
「ああ・・・(ビキニか・・・)」
珍しく高木が下心を出している。
何回か乗り換えをしたり駅弁とか食べたり電車内でトランプなどの遊びをしていて移動時間があまり苦ではない。
「なぁ?いつのまに桜井がビキニだって気づいた?」
「ああ、しおりに水着ってかいてあったから買ってこようと思って店にいったらいた」
そう言って昨日の出来事を話し出す。
デパートの水着コーナーで自分のを買い終えた前島は桜井の姿を見つけたので声を声をかけようとついて行くが女性ものの水着コーナーに入ると結構セクシーな水着をじっくり見ていた。
「・・・・・・・・・・・・ムムッ」
「よぉ!!お前も合宿のか?」
「え?なんで!?」
にらめっこしていたのは可愛らしい黄色のビキニだった。
「(あ〜勝負水着とか言うんだっけ?)」
「私にビキニは百億光年早い・・・」
「いや、いいと思うぞ。高木も美しいとか言っちまうんじゃねぇか?」
「かかかかか・・・買ってきましゅ!!」
高木の名前を出したらすぐさまそれを手に取り、ダッシュでレジに向かった。
「てなことがあってだな」
「女物の水着コーナーに行ったのか?」
「ああ、目の保養になった」
「・・・そうか」
少し憐れんだ目で見てやるが、逆に良く行けるなと感心してしまう。
こんなメンツで送る合宿を全員心を踊らせ到着を待っていた。
電車を降り、海の見える小さな駅を出て歩くこと五分。合宿宿・・・というか完全にファミリー層向けのホテルだった。フロントでチェックインを行う。昨日決まった割に、夏休みの繁忙期の中良く部屋が取れたものだ。
「ほい。鍵」
「三部屋っすか」
これなら二人ずつと一つだけ三人部屋という形になる。
「ほい。部屋割り」
そういって渡されたのはドアに貼る部屋がわかるようにする来客用の印の一枚の紙。
それぞれ、早見笠井 高木桜井 高山前島大西と記入されている。・・・ん?
「じゃあ、後で海集合・・・」
「なんです過去の部屋割り!?」
なんでわざわざ、男女一緒にしてるんだ?しかも狙った組み合わせ。
「面白いだろ?」
「いや!面白くはないです」
「なんだ〜同じ部屋だと理性崩壊ってか?」
「・・・違うよ」
「なんだよ今の間」
なんか前島の台詞が図星だったみたいだ。やばい、無理。
「あぅ〜・・・」
笠井は・・・うん、アレは止めよう。照れてるな。いずれは燃える。
「じゃあ・・・高木と桜井が同じ部屋な、あとは俺たちで・・・」
「異議あり!!」
高木が裁判のように叫ぶ。
「なんだね?」
「僕とのペアはマズイ!!」
「理性崩壊?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「まぁ、問題を起こしたらやばいからな」
大西が真面目なことを言いやはり、女子は固めて男子はアミダくじにした。
結果は早見大西前島
高木と高山のペアになった。
「じゃあ!!ひとまず海集合な」
高山がそう言い部屋に向かった。部屋は同じ階で俺の部屋の右隣と左隣に各部屋があった。それぞれが部屋に入り荷物を置くと速攻海へ行く。
「「「「海だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」
ついた早々男たち(高木以外)が叫ぶ。海に向かって大声で叫ぶ。周りからは変な目で見られたり笑われたりした。各々散らばり海ではしゃぎ始める。
「さて・・・脱げ笠井」
「えっ・・・でも周りに人が・・・」
「いいじゃねぇか・・・見られる方が燃えるだろ?」
「そんなことない・・・です・・・」
「なら・・・」
早見は息を大きく吸い・・・
「パーカーをいつまで来ているんだ!!」
思いっきり叫ぶ。人目は気にしないといけないのだが、一向に脱ぐ気配がない
「無理難題です」
「桜井を見ろ!!あんなセクシーなやつなのにはしゃぎ回ってるぞ!!」
そう言って海で男たちとはしゃいでいる彼女はセクシーなビキニで走り回っている。正直目のやり場も若干困る。
「・・・わかりました。いきますよ!」
バッ!!
そう覚悟を決めて。を決めてパーカーを脱ぎ捨てる。そして彼女の念願の水着姿を拝める。早見の頭の中はどんなものなのだろうと妄想していたが、その姿を見て正直がっかりだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「スクール水着ってお前・・・」
いざ、海に来てスクール水着を見るのはなんか変な感じだ。いや、似合っていないわけではない・・・うん。
「脱げといって悪いが・・・着てくれ」
「はい・・・」
投げ捨てたパーカー渡し早見はせっせと着だす。かなり恥ずかしがっている。
「持ってなかったのか?」
「・・・・・・・・・はい」
「来い」
そう言って彼女の手を引いて、向かった先は海の家の水着レンタルコーナー。そこに無理矢理連れ込み選ばせる。
「気に入ったものあったらいってくれ、金は俺が出すから」
「いえ・・・悪いですよ・・・持ってない訳じゃないですし・・・」
「なら・・・着てくれ」
「えっ?」
「俺のためにかわいい水着を着てくれ!!」
自分でも恥ずかしいことを言っているのがわかる。でも彼女を喜ばせたい。そして、見てみたい。その気持ちを伝えた。
「わかりました・・・なら・・・早見くんが選んでください」
大胆な言葉が飛んできた。首を一周すれば全部見えてしまうくらいは数は少ない色々と見て回ってみる。
「(いま頼めば・・・こんなんも着るのか?)」
かなり露出があるやつを見ている。ヒモだ。
「それは・・・アウトです」
ダメみたいだ。だが、こんな格好も周りに見られたくないので
「せめて・・・これ!」
オレンジの柄の可愛らしいビキニ水着を指差す。
「わ、わかりました。これも結構露出・・・」
それを持ちすごい恥ずかしそうに更衣室で着替える。だが、なかなか出てこない。
「おーい。笠井」
「あの、もう少し・・・」
そう言ってカーテンを開ける。そこには天使がいた。少し目をそらしてしまう。初めて水着見たけど・・・スタイルいいし、可愛らしいし、肌を隠すポーズで恥じらっている姿とか悶絶ものだ。
「さて・・・」
とりあえず笠井の持っているパーカーを強奪し近くに設置されているロッカーにぶち込む。
「あぁー・・・」
いまだに肌を隠すようなポーズを取っている
「ほら、行くぞ」
そういって手を差し出すと彼女はその手を取り、海に出る。メンバーと合流しさっきとはちがい楽しそうだ。せっかくの海なのだから楽しまなければ損だ。各々、海で遊びに遊んで今度は砂場で高山があるものを買ってきた。
「今からスイカ割りやるぞ!」
砂浜に立派なスイカがひとつ転がってありじゃんけんで順番を決める。じゃんけんの結果早見が一番だ。
「目隠しは絶対にとるなよ」
目隠しの布と木刀をわたされる。
「よしっ・・・オッケーっす」
「スタート!!真っすぐだ!」
その掛け声とともに緊張感が走る。正直場所は覚えていないのでありがたい。
「そこで左だ!!」
左に曲がる。
「ジャンプ!!」
ジャンプする。・・・ん?なんで?
「海にはプテラノドンが飛んでいる~♪」
急に歌いだす前島。それは見たいな。嘘だろうけど・・・
「早見くん右です」
この声は笠井だな。安心感というか信頼感があるので素直に言われた通りに進む。
「早見、潜れ」
大西も無視無視・・・笠井の指示が一番信用できるからな。
「あれって・・・鮫ですよね」
あれ・・・いまの声って笠井だよな・・・
「ああ・・・そうだな」
その割りには冷静だな。
「もしかして・・・シャチの浮き輪のことをいってるのか?」
海・プールに行ったら確実と言ってもいいくらい一匹はいるあれだ。
「・・・バックだ」
もう場所がわからなくなってしまったので高山の指示だったが、聞くことにする。恐る恐る下がってみる。
「笠井ちょっと俺の前に来て」
ちょこちょこと駆け寄り前に立つと・・・前から早見が迫ってる。
「そりゃ!!」
「んっ?」
早見が笠井にに後ろから抱きつかれてる状態だ。周りはカメラを取りだし撮る。
「いいなーあすなろ抱き。完全に美味しいイベントじゃん」
「ちょっと!!消してくだい!!」
すぐに早見から離れてカメラを取ろうとするが、もてあそばれている。
「早見!!満足したから終わりだ!!」
「いや、一回も割ってないですよ?」
そう言いながらも目隠しを取り、スイカはもう包丁を使って普通に切り分けていた。それを各々に配り、海を眺めながら並んで食べる。
「にしても・・・やってる途中でなんかが背中に乗ったんだよな〜なんでした?」
「あ〜それは・・・」
高山が笠井を指差そうとするるが、それにかぶせるように言い訳を始めた。
「ぺ、ペリカンですよ!!ペリカンが乗ったんです」
「へー、ペリカン・・・笠井が言うならそうなんだろうな・・・ペリカンいい感触だった」
そう言うと笠井は少々恥ずかしそうに顔を伏せてスイカを口にした。
その後、笠井は少し休見た目ビーチで待機。他のメンバーは海へ遊びに行っている。
「ういー、かさーい。オレンジジュースいかが?」
「あ、前島君」
その中で一人前島が戻ってきたようだった。どうやらジュースを買ってきてくれたらしい。
「ありがとうございます」
「気にすんなって。そういや。こうやって一対一で話すのって、初か?」
「そう、かもしれませんね」
少し困ったかのように笑う彼女だったが、それならばと言わんばかりにムードメーカーの前島が本領発揮する。
「まぁ、それにしても良く笑うようになったよな!」
「そ、そうです?」
「ああ、最初は根暗ですます系おとなしい女子って感じだったけど、いまじゃ、恋する乙女ですます系女子にジョブチェンジだからな」
「そうでしたね」
あっさりと認めているということは自覚はあるようだった。確かに軽音楽部に入る前の彼女はこんなにも笑わなかっただろう。しかし、早見という相手が出来てから笑うようになりスゲー可愛らし尾いやつだって気がついたし、ノリも悪くないし・・・
「・・・まさかな」
前島はそう自分に言い聞かせる。これは一瞬の気の迷いだ。
「じゃあ、笠井!泳ぐぞ!早見が待ってるぞ!」
そう言って彼女の手を取り海へ走り出した。




