二十二話 祭り当日
そして翌日、祭り当日は近所の少し大きい神社でのお祭り。入り口の鳥居で笠井と約束してる。普段は男どもで盛り上がっているが今回は花がある。いつもとは違う感じの祭りを楽しめそうだ。楽しみだったので約束の時間よりも少し早くついてしまった。
「お待たせしました」
「おぉ・・・」
カタカタと音を立て、近づいてくる彼女に思わず呟いてしまった。日本人には和服が良い。いつもとは違う魅力がある。紺にピンクの桜の柄に包まれた女性。俺から見たら大和撫子だな。
「じゃあ行きましょう!!」
普段の笠井だったら「おかしくないですか?」とか聞いてくるはずだけどよっぽど自信があるみたいだな・・・まぁ、実際マジでいいけど。
別の場所では・・・
「お待たせ〜」
「浴衣を着るなんて気合いが入ってるね」
高木と桜井のペア。二人はまた別の場所で待ち合わせた。
「どうですかね?似合ってますか?」
「ああ、似合ってるよ。さて、行こうか」
「・・・」
「どうしたの?」
「いえ・・・(なんか普段からあんな感じだから、新鮮味はないな・・・)」
そんなことを思っているが、高木の内心は正直ドキドキしている。
「(これが、ギャップ萌えってやつか・・・普段違う格好してるだけでこんなにも違う魅力というものが出るものなのか?・・・うん。いい!!)」
ギャップ萌えとは違う気もするが、お互いにすれ違っている。
その頃、早見と笠井はどの出店に行くかを迷っていた。食べ物なら、定番の焼きそばたこ焼き、リンゴアメなど。遊びなら、くじ引きやヨーヨー釣り、金魚すくいがある。
「なら・・・あれなんてどうだ?」
早見が指差した先にあったのは射的だ。三発二百円で飾ってある景品を倒したり、棚から落としたらそれが貰えるみたいだ。
「よし!!まずは俺から」
店の人に金を払い。弾が入った銃を渡される。それなりの構えかたをする。
「(スナイパーみたいだな・・・カッコいい・・・)」
など、変な自画自賛をする割には狙いは一番手前の駄菓子類。
パァン!!
スカッ・・・
パァン!!
スカッ・・・
「・・・取れない」
おそらくこの屋台では一番イージー。乳幼児用用レベル。それをかっこつけてまるで当たらない。本当にセンスがないのだろう。
「私がやっても良いですか?」
「ああ、いいぞ」
銃を渡し構えた刹那、笠井の目付きが変わった。パァン!!っと射たれた球は一番獲るのが難しいであろうデカイぬいぐるみに当たり倒れた。
「おめでとうお嬢さん!!一等賞だ!!」
店の人が大声で叫ぶ。周りの人たちがこちらを見ていて拍手を受けている。一番大きなぬいぐるみを担ぎまた別の店へ向かった。
「UFOキャッチャーとかも上手かったからな」
「いえ、射的だってしたことないですよ」
「・・・なんかアミューズメント系の才能があるのか?」
すると、都合のいいことに近くに金魚すくいがあった。
「じゃあ、次あれな!!」
笠井の手を引っ張り金魚すくいの屋台にむかう。
その頃、高木桜井ペア
「オーソドックスに焼きそば食べようか」
「はい!」
実は昼を食べていない高木は少し腹ごしらえをしてから祭りを楽しむことにする。なのでどこか安くて量多い場所を探している。探していると見知った顔があった。
「お?高木じゃん」
「長谷川!」
「・・・あ」
桜井は黙って高木の背に隠れる。この前の犯罪者の茨木洋平に拐われた妹について尋問をされたことがあった。
「桜井春香・・・すまなかった。いろいろ・・・言い過ぎた。なんつーか、ごめんな」
「ヒーローが何を言っている?バトルレンジャー?」
「えっ?」
怯えていた桜井が思わず表にでる。この秘密を知っているのはこの二人だけ、というかあの騒動はやはり高木が一枚かんでいたようだ。
「やめろ。あんなかっこうしたんだ・・・・てか!なんか正義じゃなくて陰湿ヒーローって呼ばれるんだよ?」
「バトルレンジャー?」
「まぁ・・・あの手紙通りだ。なんかあったら言ってくれ。高木・・・ちょっと・・・」
その場から少し離れたところに連れていく。
「いつのまにかいい感じになってるんだよ?」
羨ましさを見せながら聞いてみる。
「察してくれ。デートinフェスティバルだ」
「いや、わかるよ!!見りゃわかるよ!!」
「なら・・・僕たちはそろそろ行くよ。バトルレンジャー」
そう言うと桜井のところに戻っていった。
その頃早見笠井ペア
「・・・・・・・・・・・・」
「あの?元気出してください」
「ああ・・・」
金魚すくい、くじ引き、・・・アミューズメント系は全部負けた。金魚すくいとか、水槽からいなくなった。ポイが破れないんだよな。なんでだろう?くじ引きとか五回やったら笠井は一番いいA賞を五回引くし・・・俺なんか全部残念賞だった。もらった景品は持っていてもまわるのが邪魔になってしまうので預かり所にに預けた
「よぉ、早見に笠井!!・・・何しょげてんだ?」
そんなあからさまに落ち込む早見に後ろから声がする。
「高山先輩・・・」
「アホか。こういう場所は楽しんだもん勝ちだ!はい、そして!浴衣の彼女を見てなにか一言!!」
手をマイクのようにして口元に置く。
「・・・・・・いいと思います」
「どこが?」
「いや・・・新鮮で良いなと」
必死に隠せていない照れを隠しながら言う。
「勇気を出した早見くんには・・・ほれ、焼きそば二人前」
焼きそばのパックが2つあるビニール袋をもらう。
「俺らが作る焼きそば人気でさ、大西と前島が今は頑張ってくれてるから、俺も戻るな。じゃあな!!お似合いのカップルさん!!」
そう茶化しながら去っていった。
「さて、どっかで座って食べないか?人も多いし」
「そうしましょうか」
もらった焼きそばを手に2人が向かったのは近くにあった広場のベンチに座る。花火に集中している時間なせいか誰もいない。
「ほれ」
「ありがとうございます」
パックに入った焼きそばを渡し、二人で食べ始める。
「ウマイ。先輩たちスゲーな」
「はい、美味しいですね」
そんな他愛のない会話をしていると遠くの空がボンという音とともに光る。
「花火か・・・」
ここから出も結構綺麗に見える。皆もっと近く迫力のある場所に集まっているだろうが、ここでも十分だ。様々な色の打ち上げ花火が空を明るく照らす美しい光景だ。
「綺麗・・・」
そう呟く横顔を眺めているとうっすらと涙を流している。何かあったのか慌てた様子で聞いてみる。
「嬉しいです・・・私にもこんな幸せな時間が過ごせるなんて・・・」
犯罪者の娘という言葉に縛られ周りに人があまりいなかった彼女にとっては最高だろう。
「そんなこと言うな。俺がずっとそばにいる・・・」
自分でも恥ずかしいことを言っているのが分かる。だが・・・その言葉が浮かんだのだ。
「ありがとう・・・ございます」
嬉し涙を流す、彼女はまた空を見上げ花火をみる。
「(ありがとうはこっちだ。一緒にいてくれて・・・)」
そんなことを思いながら焼きそばを口にしながら花火を見た。