二十一話 祭り準備
夏休みになってからもう半分が過ぎた頃。今日は部活も休みで速見は家でゴロゴロとして漫画を読んでいると急に携帯が鳴る。表示を見ると笠井のようだ。
「もしもし・・」
「あの!!早見くん!!」
「はい!?なんでしょうか!?」
電話越しに大声が鳴り響く。思わず敬語になってしまった。
「あ、明日のお祭りに一緒に行きませんか!?」
「祭り?」
そう言えばチラシが来てたことを思い出しリビングに行く。そこに会ったチラシを見るとどうやら明日のようだ。だが、その時間は特に予定はない。
「あぁ、いいぞ」
「本当ですか!?やったぁぁぁ!!」
「おおぅ・・・じゃあ明日な」
電話越しで大声をあげる。そんなにうれしかったのかと思うと、少し照れくさい。
「(祭りか・・・高校入ってから行ってないな・・・)」
そうやってチラシを見ているとまた携帯が鳴りだす。今度は高山からだ。
「もしもし?」
「早見!!祭りで出店やろうぜ!!」
「すみません。先約がありますんで」
「そうだよな・・・裏切者!!」
「先輩だって行こうと思えばより取り見取りじゃないですか?」
「理想だよ!!いないんだよ!!楽しんでこいこの野郎!!」
ブチっと電話が切れた。もしかしたらまた偵察とかされるかもしれない。・・・不安だ。
桜井の家では二人の女子が、勇気を出してお互いの気になっている人を祭りに誘う途中だった。
「春香!!誘えたよ!!」
「うん。よし。浴衣・・・」
「その前に・・・高木くんは?」
「うぅ・・・」
「私もやったんだから」
2人は思いを寄せる相手を祭りに誘いたかったが・・・なかなか勇気が出ないらしく。どちらかが誘えたら誘うというルールを決めていた。
「わかった。いくよ!!」
高木に電話をかける。緊張してきた。何から話すべきか・・・
「もしもし?」
「もももももしもし!!」
「そっちから電話したくせになに驚いてるんだ?」
「祭り!!」
「はっ?」
「行きませんか!?」
「かまわないけど・・・」
「わかりました!!」
勝手に電源を切られた。
「祭りか・・・楽しそうだ」
ピリリリリッ
表示はまたも高山だ。
「もしもし?」
「高木!!祭りで出店やろうぜ!!」
「先約があるので」
「リア充め!!」
バキッと壊れた音がした。たぶんケータイを投げたのだろう。
「私も誘えた!!」
「やった!!」
柄にもなく二人ではしゃぐ。
「まずは・・・浴衣!!」
「浴衣・・・」
ピリリリリッ
笠井の電話がなった。またも高山からだ。
「祭りで出店やろうぜ!!」
「すみません・・・先約が・・・」
申し訳なさそうに言う。
「・・・早見か?」
「はう・・・」
恥ずかしがっている。高山もわかってたのなら笠井に電話するか?
「よし!!祭りデートを手伝ってやる!!駅前に集合だ!!」
そして、駅前に集合することになったのですぐさま集まった。
「来たか!!番号!!1!!」
「に?」
「さん・・・ってなんですかこれは?」
「いつものメンツじゃないが新鮮でいいものだな」
駅前に高山、笠井、桜井と珍しい組み合わせで集まる。目的は近くのデパートにある浴衣レンタル店に向かう。
「金は俺が出す。普段から頑張っている後輩への感謝だ」
「浴衣を奢ってもらうなんて・・・申し訳ないですよ」
「そうですよ。私たちもお金なら・・・」
「良いから、先輩が後輩にいろいろしてやるのは当たり前のことだ!!」
珍しく先輩っぽいことを言っているが、浴衣はレンタルでも万はいくものだ。それを高校生が払うというものは痛手だろう。
「じゃねぇと・・・後悔があるからな・・・」
周りには聞こえないように呟いた。
「ま、金は心配するな。ほら、好きなの選べ!」
そう言って、各々好みの浴衣を見つけようと店内を回り、各々が話し合って自分にベストの浴衣を選ぼうとする。女子同士の会話に入るのは失礼の様な気もしたので店の隅にあるベンチに座って待ってている。
この二人は仲よく祭りデートに行く。
「お前と・・・行きたかったな・・・」
ポケットからリンゴの絵が描いてあるピックを取りだし、それを見つめる。
「あいつのおかげで俺は・・・」
思い出す、彼女との記憶をまだ、俺が人間としてバカだった時、叱ってくれた人。見てくれた人。そんな彼女を超える人などいるのだろうか?いや、いないだろう。
「あの・・・高山先輩?」
「・・・え?」
知らぬ間に涙を流してしまっていた。それを慌てて拭いて、ポケットから目薬を取り出して、垂らす。泣いていたことはこれで誤魔化せただろう。
「目薬外した」
そして、二人が選んだ浴衣を見て、着ている姿、そして、二人が幸せそうにだ地名人と楽しんでいる姿を想像する。
「ほら、買って来い」
明日の祭りには俺が付いていってやろうかなと思ったりもしたが、出店やって、寄ってくれたら安くしてやるか。そう思いながら大西と前島に電話をした。
「出店やろうぜ!!・・・行けるよな?」
最高の祭りを見届けたい。




