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嘘の告白  作者: かっきー
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二話 帰り

本日の昼休みからお付き合いした二人(嘘カップル)の駅までの帰路。笠井から質問が来た。


「早見くんは・・・軽音部ですよね」


「ああ、そうだよ。ちなみにベーシスト」


早見は背中にある毎日持ち帰っているベースを指差した。


「カッコいいですね」


そういって触ろうとしたが少し申し訳なさそうにして手を引っ込めた。彼女は羨ましそうに見てたので背中に担いでいるベースを取り出した。


「触るぐらいだったらいいよ」


「・・・わ」


恐る恐る触りだす。正直こんな外なのであまり出したくはないのだが、彼女の不思議そうに見ているのを見るとどうでもよくなった。だが、触らせていたベースをケースにしまうと笠井はものを取り上げられた子供のように寂しい表情をしていたのでフォローすることにした。


「機会があれば教える」


「はい!よろしくお願いします」


満面の笑みを浮かべる天真爛漫な彼女の横では一人悶々といていた。そんなことを考えていると、彼女の形態から着信が鳴る。それは早見も聞いたことのある音楽だった。


「あ、ごめんなさい」


そう言うとメールだったらしく、謝られることもないのだが、それを確認したが返信することもなく再び会話を始めようとする。しかし、早見は着信の音楽のほうが気になった。


「それって、スマカス?」


「え?あ、そうですけど・・・」


彼女が着信音にしていたのは「スマイルサーカス」という早見が中学生ごろに流行っていたバンド。文字通りポップな曲が多いサーカス団の様なバンドだった。そこの女性ボーカルの「ラフ・クラウン」・・・今は彼女がが亡くなってしまいバンドも解散してしまったが、早見が軽音楽に興味を持ったきっかけにもなったものだ。


「いい趣味してんじゃん!俺は・・・」


正直気まずさがあったのだが、お互いに好きなもの共通の話題が出来上がると会話が弾みだす。そう考えながらも別のことも頭がよぎる。


「(なんか・・・周りから見れば普通のカップルなのか・・・でもこれは・・・バツゲームなんだ!仕方がない。そう!仕方がない)」


そう考えているが笠井のほうは見ている限り楽しそうではある。こんなに笑う人だとは思ってなかった。そして、学校からの最寄り駅に到着する。


「俺はこっち方面だけど笠井は?」


「私は逆ですね・・・じゃあ、早見くんさよなら」


駅であっさりと別れて互いに帰る方向の改札口を振り返ると、笠井は小さく手を振りながらホームへ降りて行った。早見も電車が来ていることに気が付き、急ぎながらも振り返した。

駆け込み乗車並みに走りこんでしまったが間に合い、電車が発車されると開いている席に座り考え込んだ。


「(付き合ってるみたいになっちまったよ・・・嘘っていつ言えば良いんだ?)」


少し考え混んでいると、目の前に長い茶髪がブラーンと垂れているのを目にし、顔をあげてみると知っている顔があった。


「やっほ、ゆー君」


「梨子か、その呼び方やめてくれよ」


「小学校一年からこの呼び方だからね。今更変えらんないよ」


彼女は田崎梨子。早見とは同級生で家も近い、俗にいう幼馴染みだ。余談だが、父親はホテル経営しているので実家は金持ち。早見裕也でゆーくんと呼ぶのだが・・・当の本人は嫌がっている。


「ゆーくんは考え事でもしてたのかな?」


そう言って開いている隣の空席に座りだし、顔を覗き込むように質問してくる。


「別に・・・」


そうは言ったが相変わらず察しがいいやつだと思う。梨子は昔から読心術が使えるのか思うぐらい、人の考えが読めていた。彼女はそれを活かして人の悩みなどを聞いてくれるのだが、今回は内容が他に話してもいいものでもないので誤魔化すことにする。しかし、梨子はじーっと早見の目を見つめてくる。語尾用語に目を話すとフフンと鼻を鳴らす


「あるでしょ?というかあるね」


誤魔化そうとしたがそういうわけにもいかないみたいだ。しかしここはあえてもう少し引っ張ってみる。


「まぁな・・・実は文化祭に向けて頑張っているんだが、ボーカルがいなくてな」


幼馴染に、嘘告白しましたーなんて報告は自分の学校生活に関わってしまうことなのでブラフを張ることにした。だが、彼女は鋭かった。


「ふぅん。それだけ?」


「それだけだ!」


やや強めに言うが、彼女はクスリと笑みを浮かべた。


「相変わらず隠し事になると、すぐに怒りっぽくなるね」


「えっ、マジ?」


「マジマジ、ま、分かりやすいっていうものあるけど、付き合いも長いからね」


「よく見てるのな」


「ちょ、そう言うのやめてよ、私がストーカーみたいじゃん」


彼女の術中にはまってしまっていたと思うと少し悔しいが、梨子相手だと負けても仕方がないと思うようになってしまってきている。


「ま、ゆーくんが言いたくないなら良いよ。何かあったら梨子様に相談しなさい」


「はいはい・・・あっ、着いた」


誇らしげにお姉さんぶる彼女の話をしている間に家からの最寄り駅に着いて、二人でそろって降りる。そして、梨子は無理矢理早見の手を引っ張ったり早見と梨子は二人で話ながら帰り早見の家の前にて別れた。


「ただいま」


「おかえりなさい!」


「花、晩飯は?」


「今日はオムライスだよ!!もう出来てるよ〜」


トコトコと駆け足でエプロン姿の少女が出迎えてくれた。早見の妹の早見花。両親が共働きなので、家事全般は花に任せている。頼りになる中学二年だ。


「わかった、部屋に荷物置いたら行く」


早見は二階にある自分の部屋に入った。荷物を勉強机の横に置き、晩飯を食べにリビングに行こうとしたらピリリと携帯電話が鳴ったので取り出してみるとメール通知だ。


「笠井からだ・・・何だ?」


ーーー

早見くん、こんばんは!私は今まで彼氏どころか友達もいないので、メールをしたことないから、少し緊張しています。アドレス交換なんてしたのは生まれて初めてです。


それではまた明日。

ーーー


「そうだ!今このタイミングで嘘って言えば・・・」


そう思ったが、メールの内容を読み返すと少し申し訳なってきた。


「友達もいないのでメールしたことなくて」


「アドレス交換なんてしたのは生まれて初めてです」


「(そっか、いじめられているのは知ってたけど・・・友達もいないのか・・・)」


彼女は自分とは違う。自分には大西や前島とはとても仲が良い・・・クラスでも友達ぐらい何人かいる。しかし、いじめられてるとはいえ、友達もいないのはかなり厳しい状況にいるのだと思う。相談も出来なく、何より、いじめて何をしてもいいと周りは思っているのだ。暇つぶしの道具として・・・そして、それを今日自分も似たようなことをしてしまったのだ。改めて罪悪感を感じる。


「でも、やっぱり何が原因だ?でも、あいつは休み時間になったら屋上にいるからそんなとこ見たこともないし・・・でもそういう噂事も聞くし・・・」


早見がそう考えて彼女の行動パターンを知らないながらもとりあえず考えてみたりケータイを見たりしているが特に思い浮かばなかった。


「兄ちゃん!!晩飯冷めちゃうよ!!早く来て!!」


「悪い悪い、今行く」


先ほどから夕飯のお呼びがかかっているのに来ないことで様子を花が見に来た。これ以上待たせると流石に妹もキレそうなので手短に笠井に返信をした。


ーーー

また明日な。別に敬語じゃなくてもいいんだぞ。最近のJKらしくしろ(笑)


ーーー


質素ではあるが手短に返信を確認すると携帯をベッドに放り投げてリビングで晩飯を食べに下の階降りた。


テーブルで向かい合って座り、目の間にあるオムライスにケチャップをかけていただいている途中でテレビに目を向けると少し怖いニュースが流れていた。


「あっ」


テーブルで向かい合って座り、目の間にあるオムライスにケチャップをかけていただいている途中でテレビに目を向けると少し怖いニュースが流れていた。それを見ている花がボソッとつぶやいた。


「どうした?花?」


「ほら、あったじゃん、連続誘拐事件・・・あの犯人の映像がコンビニの監視カメラに映ったって」


「犯人の茨木洋平45歳は二年間逃走をし、今もなお、逃走を続けています」


当初、凄まじく恐ろしい事件があったらしい。幼い女の子のみを誘拐している男性が開いたという。しかし、ほとんどの誘拐された女の子は戻ってきたが、まだ見つかってない子もいるらしい。とりあえず、自分に被害はなさそうだが心配な奴が一人目の前に


「兄さん!いつか私があの人に誘拐されちゃうかもしれないよ」


花は・・・まぁ、行ってしまえば中学生だが、非常に幼児体系といっても過言ではないくらい小さい。そして、色気もなく、お子様だ。


「ああ・・・」


憐れんだ目で花をちらっと見てまた食事に戻ろうとするが、バシッと止められる。


「私は成長期なんだよ!だからきっと大きくなるよ!」


何も言ってないが、察せられたようだ。


「へぇーへぇーがんばーっと、ごちそうさま」


妹の事は適当に返し、食べ終わったので、自室に向かった。


「文化祭のことやら・・・笠井のことやらで頭痛い」


ベッドに放ってた携帯を取り出してまたなんとなくメールの画面を開き先ほどの内容を見返した。早見はまだ彼女のことが気になっているようだ。


「(友達がいないか・・・考えたこともなかったな・・・もう難しく考えるのは止めて寝よう・・・)」


少し早いが携帯を充電器に刺し、電気を消して就寝した。


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