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嘘の告白  作者: かっきー
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十九話 ナンパと新たな恋

テスト返却を終え、現在は体育館で全生徒が集まり一学期の終業式が行われている。これさえ終われば夏休みが始まる。終業式後、部室にいつものメンツが集まり部活動を開始する。


「さて、文化祭まであと一ヶ月半だ・・・てなわけで一回storyを通してみよう」


早見のベースソロから始まりドラムが入り、ギターが入り・・・


そして、笠井の歌声・・・この期間でこの歌唱力。始めたばかりとは思えない歌声だ。だが、演奏できたのは前半パートは何とか通せたものの後半に入るにつれて練習が足りていないので、めちゃくちゃになった。各々が完璧にしないと合わせるのも難しい。


「やっぱまだ合わせるのは早いか・・・」


高山が今の演奏で完成には程遠くはないと感じた、初めての作った曲を実際感じて欠点が見えてきている。


「おい早見!!15小節目のリズムおかしかったぞ!」


「大西は俺とのハーモニーが完全にずれている。チューニングやり直せ!」


「前島!お前が崩れたらテンポがつかめなくなる!キープしろ!」


「笠井!喉絞めるな!」


各々が言われたことを譜面に書きだしていく。高山自身も演奏していく中間違っているところをしっかりと見つける音楽センスはいつ見てもすごい。その後はそれらを注意して個人練習を開始した。


そして、ある程度練習し休憩に入る。


「はぁ、夏休みだから遊びてぇ!海行こうぜ!そんで、そこでいい女をゲットする!」


前島の大きめな独り言が部室でこだまするが、全員が譜面に集中している。


「えぇみんな無反応?俺悲しいよ?泣いちゃうよ?」


半べそ状態になっているが、高山も譜面に目を向けるのをやめてドリンクを飲む。


「ま、休憩中だし、みんな譜面置いて」


その指示で全員譜面を置き、いつもの雰囲気に戻る。


「まぁ、前島のナンパ何ざ100パー無理だろ」


「俺は今年こそ彼女作る!俺は早見に次いで彼女イコール年齢を抜けさせてもらう」


「うっせ!彼女もちの早見君」


「じゃあ、明日試すか?」


「・・・はい?」






次の日、夏休みの休日なので今日は朝から夕方まで部活の予定だ。校門偶然前島と大西がばったり会い二人で部室に向かう。


「はぁ、夏休みなのに部活かー・・・」


「前島は夏休みは休みたい奴か?」


「いや、ノる日とノらない日ってあるじゃん。今日はノらない日」


そう思いながら部室に入る。すると突如クラッカーが鳴り響く。


「第一回!!ナンパ大会!!開催だ!!」


高山が司会者のごとくマイクを握り、エントリー表というものを前島と大西に渡す。なぜか審査員席も設けられておりそこに早見と笠井が座らされていた。


「なんすかこれ?」


「ナンパ対決」


「いや・・・理解できない」


「いいか、お前ら二人に足りないのは積極性だ!!早見と笠井のデートを思い出せ!!笠井の積極性を!!」


「・・・!!」


その審査員席では笠井早見が顔を赤らめている。


「アレはお宝映像だな。エロくないが・・・乙女の勇気出す瞬間!」


おそらくプリクラの一件のことだろう。


「本題に戻そう!!ナンパ大会だ!!ルールは・・・早くナンパしてデートに誘えたら勝ちな!!副賞は・・・映画のペアチケット。福引きで当たっちまってな・・・また・・・相手いないのに・・・」


司会進行の声が徐々に小さくなっていくが、今そんなことをしてくれる人がいるのだろうか?今は夏休みで部活中だ。いい迷惑になってしまうだろう。


「ほい、各々の部活の休憩時間。ほら、今だと吹奏楽部とか剣道部・・・ぐらいだな基本的に昼休憩だし」


高山はなぜか前部活の休憩時間をまとめた表を持っている。なぜ持っているかは不明だが、


「えー・・・まぁ、クラスメイトが何人かいますけど・・・」


「てなわけで出撃!!パンツァフォー!!」


「・・・はい」


「ファイヤァアア!!!」


大西は渋々吹奏楽の方に・・・前島は意気揚々と剣道部の方に向かった。


「早見、お前は前島を追ってくれ。俺は大西を追うから」


高山は大西の後を追い、早見は剣道場へ向かう。その前で前島が何か一人芝居をやっている。


「君の様な美女にもうメロメロさ・・・きゃ、うれしいわ・・・よし!!」


「(・・・これはフラれるな)」


彼のイメージトレーニングは想像以上にキモい。成功前提だしあと、鼻息が荒い。


「はい!!休憩!!」


「いた!!」


練習終了時に面を取ると可愛らしい美女がいた。その顔を見た瞬間急に道場の中に走り出し前島はその子のところに行く。早見は後ろから覗いき様子を伺う。


「・・・・・・・・・・・・・・ぁの」


「はい?」


「・・・メロメロ」


「・・・え?何?」


「・・・すみません」


辺りは凍りつく・・・白い目で見てくる・・・早見は抱腹絶倒で前島は顔面蒼白だ。さすがにこの空気がやばいので早見が笑いをこらえながら前島を回収する。走ってその場を立ち去った。


「ふっ・・・やってやったぜ」


「ああ・・・やらかしたな・・・」


哀れんだ目で見てやる。


剣道場に急に走りこんできては黙り込み、メロメロと呟き、何もしない。


「やべ、思い出してきた」


早見は思い出し笑いが止まらない。


「さっきのは何!」


急に怒った声をかけられるがその顔を見てハッとする


「突然・・・」


先ほどの剣道少女だ。少々お怒りなのは雰囲気からひしひしと伝わったてくる。


「好きです。付き合ってくださーい」


今度は何の前触れのなく本題をブッコんでくる。しかもやる気が全く感じられない。


「え?あ、ごめんなさい」


「だろうな。予想はしてたからいいや。じゃあな〜」


そう言って前島は何もなかったかのようにその場を去っていった。


「どうしたの?みこ?」


この子はみこと言うらしい


「告白されたらフラれた・・・」


「はぁ?」


確かに理解しがたいだろう。だが、実際にあった。




その頃もう一人の参加者の大西は吹奏楽部へ・・・乗り気ではないが高山に無理やり連れて行かれた。


「えっと・・・僕と君で二重奏を奏でないか?・・・うっわ、昔の少女漫画みたいな」


用意してくれたセリフを読み返すが正直センスがない。


「あ、ちなみにそれは笠井が考えた」


「マジですか?・・・」


しっかりとしているが、意外とそういったセンスはないのかもしれない。そして目をつけたの休憩時間になっても一人練習をしているフルート奏者を発見。


「これ言わないとダメですか?」


「ああ!面白い!」


思い切り楽しんでいる先輩は置いておいて、やらないと終わらないと察した大西は真剣な表情で練習しているフルート奏者の元へ近づく。


「君のフルートの音色と僕のギターの恋の二重奏をしないか?」


「(うわ、マジで言った)」


陰から見守り、しかもかませといった本人がひいてしまっている。


「・・・??」


フルート奏者は言葉も発さず、なにも見ていないかのように練習を続けだす。


「いや・・・その・・・じゃあな」


その気まずい雰囲気に耐え切れず大西はそう告げその場から立ち去る。


「大西・・・飲めよ。ブラックだ、大人の味だぜ」


戻ってきた大西に高山がブラックのコーヒーを投げ渡す。


「人はな・・・涙を流す度に強くなる・・・がんばれよ」


「何いい感じに閉めようとしてるんですか!?」


「捕まらんわ!」


そんなくだらない言い争いをして、高山は速足でその場を去った。おそらく部室に戻ったのだろう。あの人の思い付きに楽しいのだが、あきれる部分もある。


ガシャン!


その時、何か機械的なものが倒れる音がした。その方向に目を向けると一人の女生徒が車いすとともに倒れていた。


「大丈夫か?」


「あ」


倒れこんでいる彼女の車いすをまず起こし、その後、車いすに乗せようとしたのだが、触れることになってしまう。


「失礼・・・」


一応断りを入れ、彼女をお姫様抱っこのような形で抱え、慣れない手つきで車いすに乗せる。


「じゃあ、気をつけろよ」


「すみません!」


やることはやったのでその場から去ろうとしたのだが、車いす少女に呼び止められてしまう。


「このリモコンを拾ってもらえますか?」


彼女の足元にはリモコンが落ちている。先ほどのこけた拍子で落としてしまい大西もそれを見逃していた。


「ありがとうございます」


リモコンを操作すると車椅子が動く。電動車椅子だ。だが、あまりにも不恰好な動きが見てられなかった。


「心配だから付いてく」


後ろから押してやることにした。


「どこにいくんだ?」


「私の教室・・・C組に忘れ物を」


「C組だな、わかった」


「思ったんだが・・・どうやって上るんだ?」


車椅子で四階のこの階ににどうやってあがるのかを疑問に思う。


「エレベーターですよ。職員専用ですが私も使えるんですよ」


「へぇ〜そうだ、名前は?」


「小林奈央。一年です」


「よろしくな二年の大西だ」


他愛のない会話をしているといつの間にか目的の教室にたどり着いた。そして、自分の席であろう場所に奈央が向かいその机から忘れ物を取り出す。机から取り出したのは一冊のノートだった。


「宿題か?」


「・・・・・・・・・・・・」


そう聞くが恥ずかしそうになる。


「だ・・・誰にも言いませんか?」


「ああ・・・構わないが・・・」


「笑いませんか?」


「あー。モノによる。中二病ノートとかは爆笑する」


そう冗談をかますと、彼女は恥ずかしそうに俯く。もしかしてビンゴだったのか・・・


「じゃあいいです」


そう言って若干不機嫌になってしまったが、それを落としてしまい、ページがあらわになる。それが偶然目に入る。刻まれたのは文字だ。


「・・・小説?」


「か、返してください!!」


車いすを動かしながら必死になって取り返そうとする。


「へぇ、すごいな!」


「え?」


「こういうの、俺は向かないからな。書くだけでもすごいのに」


「いや・・・だって、ただの高校生が話を書くんですよ・・・自分勝手な・・・文章もなってない・・・」


「話を作るなんて凄いと思うぞ、今度読ませてくれよ」


「でっ、でも完成してからでも良いですか?まだ終わってないので・・・」


後ろのページはまだ空白だらけだ。


「ああ、待ってる」


「ありがとうございます」


その後奈央と別れ部室に戻る。扉を開けるとパンパンっとクラッカーが鳴り響く。


「この大会は・・・大西の勝ちだ!!」


そう言って、高山は携帯の写真フォルダから先ほどの写真を見せる。大西はそれを見て頬をポリポリと掻く。


「いや、ナンパとかじゃないですし、そもそも手伝っただけです」


「良いじゃないか、車椅子少女を助けてやったんだろ?」


「良い奴じゃんか!!」


周りからは祝福される。確かに写真を見ると意外と絵にはなっている。そんな盛り上がりの中突如ドアが開く。


ガラガラッ


「先輩。先ほどは助かりました」


「奈央。なんだよ、いきなり先輩呼ばわりして」


「だってそうじゃないですか。」


「まぁ、そうだけど・・・」


そんな二人の世界を目にして部員全員は遠くから眺め、聞こえないように話す。


「うわーもう名前で呼んでる」


「しかも大西もガチじゃね?」


「はい。普段あんな顔しませんよね?」


「うん。あ、これを機に玲奈も早見君から名前で呼んでもらえば?」


「そ。それは今関係ないじゃないですか!」


早見、前島、桜井、笠井の会話はさておき、高山がその二人の会話に入る。手に握られているのは映画のチケットだ。


「奈央さんだったか?ここに映画のチケットがある。大西と出かけてきてくれ」


「いえ、行くことが面倒なので・・・」


渡す前にあっさり断られてしまった。


「フラれたな・・・」


「・・・はい」


大西もあからさまにショックを受けていることがわかる。先ほどの表情から一転、どん底の表情だ。


「いえ!そう言うわけではなくて・・・これなので」


「確かに移動だけでも大変そうだ」


「はい・・・大西先輩にも迷惑をかけてしまいます」


自分の乗っている車椅子に手をそえる。確かにこれでどこかに出かけることは難しいだろう。それに人の目もある。当事者ではないのでどこまで理解できるかわからないが、難しいことは承知だ。


「なので・・・」


「いや、行こう」


「え?」


「嫌ならいいけど・・・迷惑がかかるかもって理由なら。少し考えてほしい。それに・・・」


周りを遠ざけ彼女の耳元に近づく。


「小説の勉強にもなるかもしれないだろ」


そう聞いた瞬間。彼女はハッとした表情になる。しかしまだ遠慮しているようだ。


「でも私となんかより、そちらの女性のほうが・・・」


そう言って指さす方向には笠井と桜井の姿があった。確かに二人とも魅力的ではあるが根本的なところがある。


「あー、二人ともリア充・・・とにかく、奈央がよければ・・・その・・・」


話しているうちに恥ずかしくなってきたのか大西は頭をかく。


「・・・照れてます?」


「・・・からかうなよ」


また二人の世界が出来上がった。そうして映画のチケットを渡すと、喜んで彼女は受け取ってくれた。


「ああ〜大西もブルースプリングを楽しむのか・・・」


「(青春って英語そうだっけ?)」


前島は妬ましい表情をしているが、良い雰囲気なので邪魔はさせないで億。


「じゃあ、明日・・・一人で帰れるか?」


「はい、迎えが来てくれます。では、また明日」


今度こそ帰ろうとするが、早見達によって出口をふさがれる。


「おいおい!!女の子が1人で帰しちゃって良いのか?」


「大西くん!!送ってあげなさ〜い!!」


なんかこのやり取りを聞いたことがある。


「わかったよ・・・いくぞ、奈央」


後ろから押して部室を出ていく。この後も部活があるので校門までにした。


「楽しそうですね軽音楽部」


「ああ。バカの集まりだけど」


「はい。先輩もそのバカですもんね」


「たまに毒を吐くよな」


そんな他愛もなく壁も全く感じない今日あったはずなのだが、お互いを信頼しているような関係になった。そして、目的地である校門へ到着。


そのには一台の高級車が止まっていた。黒の豪華な車に屈強で礼儀正しい人たちが多数。


「お迎えに上がりました。お嬢様」


「ご苦労です。楽にしてください」


「・・・お嬢様!?」


「驚きました?」


「・・・ああ。こういうボディガードみたいな人初めて見た」


いかにも屈強で映画でよく見る黒服が大量に護衛している。


「では明日・・・楽しみにしてます」


そう言ってボディガードが車の扉を開け、奈央は座席に車いすは荷台におく。それを確認し部活へ戻ろうとするが一人の男性に呼び止められる。とても顔の整ったイケメンだ。


「明日。お嬢様と何かあるのか?執事として見逃すわけにもいかない」


どうやら彼は執事らしい。高級そうな手帳を取り出し、まるで事情聴取の様な圧迫感がある。


「友達だ、明日遊びにいく」


「なりません」


「本人と約束した」


「なりません。明日は許婚殿とお食事があります」


「・・・許婚?」


お嬢様はそういうものがつきものなのだろうか・・・この年で結婚相手が決められている。自分には考えられないことだ。


「はい。ですので、貴方はお嬢様にとって邪魔な・・・」


「やめなさい」


車のほうからひどく冷たい声。扉を開け、奈央がその冷たい声放った。その佇まいはお嬢様らしく気品あふれている。


「主の交友関係を崩すつもりですか?」


「・・・ですが明日は成宮様のご子息とのお食事の予定でございます。両家の御両親もお見えになるものです」


「成宮?それってこの学校の理事長の息子の!?」


「下がりなさい。桐生」


「・・・かしこまりました」


奈央の一声により。桐生と呼ばれた執事は下がった。


「先輩。不快な思いをさせたならすみませんでした・・・明日は楽しみにしています」


そう言って彼女を乗せた車は去っていった。

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